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0→1の基礎を誰も知り合いのいないミラノで築いた話

前回、ミラノに交換留学が決まるまでのお話を書きました。
ご参考:成績下位の私がミラノに5ヶ月間交換留学できたワケ

ありがたいことに「ミラノの時の話はどうなってんの?」というお声を頂いています。

自分を成長させることについてご興味をお持ちの方がかなりいらっしゃるので、本日は、ミラノで0→1の基礎を作ったお話をしようと思います。

結論からお伝えすると、
0→1の鍵は「足で稼ぐ」です。

初っ端から期待が裏切られる

時は2016年夏。
イタリアの難民危機を研究テーマとすることにしたので、留学する前、私は2015年のミラノ駅舎の写真を見ていました。

あの、ムッソリーニが建設させたという豪華絢爛な駅の中には、アフリカ系、アラブ系の人人人でごった返していて、疲れ切った人たちは床に座り、または布を敷いて横たわっています。
そんな人たちをイタリア人らしき人が、迷惑そうな顔をして通り過ぎる…

「よし!ミラノ駅に聞けば、間違いなく発見があるだろう」

そう高をくくって、いざミラノ駅に行くと…


えっ!マジで誰もいないんですけど〜((((;゚Д゚)))))))

写真の中では、あんなにいたアフリカ系、アラブ系の庇護申請者らしき人が全く見当たらないのです。
その代わりにたくさんの警察が駅舎内をパトロールしていました。

よく考えると当然ですが、1年も同じ状況が続くわけもありません。
治安維持のためです。

どこに行ったのか、駅のスタッフに聞いても警察に聞いても「知らない」との返答。

「難民危機の何が問題なのかすら、見えない…」
初っ端から出鼻をくじかれました。

出会いは芋づる式に

実は、私はイタリアの生活に慣れるために、新学期が始まる1ヶ月前に渡航し、ミラノ郊外にある日本人の奥さん(郁子さん)とエクアドル人の旦那さんの家にホームステイさせてもらっていました。

郁子さんが
「隣町はKという女性の町長で、かなり庇護申請者の受け入れを熱心にやっているから何かヒントがあるかも」
と言って、人口3,500人の隣町の町役場まで連れて行ってくれました。

受付の人に自分の研究のこと、この町の取り組みについて知りたいことを伝えると、

なんと!

町長自ら出てきて、後日インタビューを快諾頂けたのです!
町役場に来て、たったの15分の出来事でした。

彼女自身、庇護申請者に対する市民からの圧力を問題視しており、町長をしながら博士課程でも研究を進めているという背景もあったことで、私はこの時、自分の研究テーマの具体的なアイディアまでおりてきたのです。

『イタリア市民と庇護申請者の統合プログラムとその問題』

人のツテをフル活用して、足で稼いだ成果の一つです。

突然やって来た大きな流れ

そして彼女はインタビュー後、ミラノ郊外一体の庇護申請者の統合プログラムのコーディネーターMさんにもつないでくれたのです!

後日、Mを訪ねて電車で30分。
彼のオフィスの敷地内には教会があり、庇護申請者にイタリア語のレベル別でカリキュラムを組んで、先生と市民ボランティアの協力を得て、語学学校が開校されていました。

このイタリア語学校のことをもう少し詳しく知りたい、とMにお願いしたところ、この学校の代表を紹介してくれました。

この人こそ、私の研究0→1の基礎を作ってくれた人、クリスティーナです。

クリスティーナは語学学校の代表をしながら、庇護申請者の「難民」申請が通るよう(イタリア で公的ビザが持てるよう)、毎回弁護士と申請者の面談に立ち会うほど、とても熱い心を持った人でした。

逆にこの人がいなければ、ユニークな研究として仕上げることはできなかったでしょう。

それから私は毎週2回、庇護申請者と時間を共にしようと、クリスティーナの学校に通い、彼らと一緒にイタリア語の授業を受けました。
(そのおかげで、日常生活の一部はイタリア語でやりとりもできるようになりました。)

その時の写真が、冒頭の写真です。
ほぼ男性だけなのは、理由があるので、それはまた別の機会に!

まじめに通い続けること2ヶ月。
「あきよが通ってきてくれることがうれしい」
と言って、クリスティーナがイタリア語の通訳となって、状況の異なる3名の庇護申請者のインタビューを快諾してくれました。

1.Mの団体で職業訓練を受けている19歳のマリ人
2.難民として公式ビザがおりそうな18歳のバングラデシュ人
3.地中海を命からがら渡った後に、南イタリアのトマト農園で労働搾取され、命からがら抜け出した25歳のマリ人

耳を疑うような、残酷な映画のような話ばかりでした(つД`)

しかし、このインタビューがあったおかげで
「この現状を広く伝えなければいけない」
という使命感がメラメラと湧いてきたので、修士論文を書き上げることができた、と言っても過言ではありません。

この論文は、後日、外部の学術ジャーナルにも、掲載が叶いました(^_^)v

コロナ後の「足で稼ぐ」

こうやって回顧してみると、クリスティーナとの出会いは偶然の賜物です。
自分の足で動いて、情報や出会いを掴むことの重要性を改めて感じています。

誌面の関係上、省略せざるを得ませんが、実は他にも様々な場所に出入りしており、没案になったものの方が多いのです。

「いやいや、もう2020年以降は、人との出会い方は変わったんですよ。」
そういう声が聞こえてきます。

おっしゃる通りです。
オンラインが主流になった今、オフラインで出会う価値は希少であり、ますます重要度が高まります。
だからこそ(もちろん、徹底的に対策をした上で)足で稼ぐことが意味を持ちます。

だから「ここぞ」という時は「足で稼ぐ」戦術カードも持っておいてほしいのです。


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