「海」(詩)
海を前にすると
私は海につくりかえられる
波は私を過ぎ
白い波の花は遠く背中の月に
耳から入っていたはずの音を
私が広げる側に立つ
透明さは血を残し
私を漂う夕陽にする
あなた
それなのに
たったその三文字だけが
私から海を拝する 一瞬で
つれない恋人に視連の爪を掛けるように
たった三文字が
重たい私を浜に立たせる
戻った血で頬を赤くして
惜しがるのは私も同じなのだよと
それでもこの腹に帰るにはまだ早すぎる
あなた
せめて海と呼び合いながら
影が出来た私は足あとと共に
去る方向を向く
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