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BBC Proms 21 Gaming Prom (1 August 2022) 10/25追記

2週間ほど前、角野隼斗さんが出演(7月28日には朝日新聞夕刊の記事でBBC Prom Japan 2022のリーディング・ナビゲーター)と知ったProm 4(11月4日;オーチャードホール)のテーマはGame & Cinema Prom(ヘッダーはロイヤル・アルバート・ホール、2016年7月に鑑賞したBBC Promsで撮影)。

角野さんのFCサイト該当ページには以下記載があり、曲目も楽器構成も気になるところ。ピアノ協奏曲は、遂に本邦初披露となるのか。

角野は東京での第4夜に開催される Prom4「Game & Cinema Prom」に企画段階から携わっており日本人の作曲家によるゲーム・映画・アニメ音楽を、オーケストラの楽曲やピアノ協奏曲として再構築した楽曲が演奏されます。
FCサイトより

また、既出朝日新聞夕刊の「指定席」(記事名)では、角野さんが「本家イギリスのBBC Promsでも今年初めてゲーム音楽が取り上げられています(以下省略)」と話しており、そのプログラムの内容が気になり調べたら、見つかった!8月1日、Gaming Prom: From 8-Bit to Infinity and Beyond(拙訳: ゲーム・プロム: 8ビットから無限大、さらにその先へ)があった!

本noteでは本場のゲーム・プロムにつき簡単に紹介する。BBC Promsの公式HPによれば(120年の歴史の中で)ゲーム音楽のみに特化したプログラムは初めてだったらしく、公演前後、現地メディアでもかなり話題になっていた。

興味があって時間が許す方には、BBC Radio 3(日本からも無料で視聴できたが、10月上旬で配信終了)で8月1日のコンサートを聴いて欲しいので、あまりご存知のない方向けにBBC Promsやゲーム音楽の公演について簡単に纏めた。

まず、私がBBC Promsを見始めたきっかけや時期について少しだけ触れたい。私は世界中の国の中でも英国とそこに集まる知(人も音楽も博物館も歴史的建造物も田園風景も天気も食も何もかも)をこよなく愛しており、英国で毎年開催されている世界最大級のクラシック音楽の祭典、BBC Proms(詳しくはONTOMOの記事を参照;日本版BBC Promsにも言及)には、2000年頃からほぼ毎夏通い、大学院留学中には勉強・修論執筆の気分転換に学校から徒歩圏内にあったロイヤル・アルバート・ホール(Royal Albert Hall: RAH)に足繁く通い、さまざまなジャンルの音楽を楽しんできた。学校からの距離やチケットの安さがコンサートに行く敷居を下げてくれ、懐の深い英国に感謝している。

ロイヤル・アルバート・ホール

BBC Promsのプログラムはクラシック音楽が中心だが、ミュージカル、映画、ジャズ、ポップス、民族音楽などのジャンルも含まれ、世界からさまざまなミュージシャンが集結し、7月半ばから9月上旬まで約2ヶ月間、毎日コンサートが開催されている。若者含む幅広い年齢層にリーチする趣向を凝らしたプログラムが魅力的で、家族連れや学生でも通いやすいチケット料金の設定もあり、英国内外から人気のある夏の祭典となっている。

本題のGaming Prom: From 8-Bit to Infinity and Beyond(拙訳: ゲーム・プロム: 8ビットから無限大、さらにその先へ)のプログラムに話を戻そう。本プログラムは、指揮がイギリス人のRobert Ames(略歴はこちら、1985年生)、オケがイギリスで名高いロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団により演奏された。Ames氏の略歴をざっと読むと、クラシックな伝統と現代音楽を繋ぐポジションにあり、キュレーター、作曲家としても活躍しているようだ。日本人だと、水野蒼生さんみたいな立ち位置にいるような印象を持った。

公演に先立ち、プログラムの一部である4つの曲について詳述されているページがあり、ゼルダの伝説ファイナルファンタジーXIIIJourney(プレステ3)Battlefield 2042が取り上げられている。選曲は1980年代から2021年発表の曲まで年代を広くカバーしている。

以下はBBC PromsのTwitterがUPしていたコンサート直後のホールの模様。初のゲームPromsは観客から熱狂的に歓迎されたようだ。

当日プログラム(リンクはこちら)はこちらで見やすいようにBBC Radio 3のアプリのスクショ版を掲載しておく。

8/1: BBC Proms 21のプログラム

9曲中、5曲(ゼルダの伝説、1990年代のポケモンをオマージュした曲、ファイナル・ファンタジーXIIIの「Liberi Fatali」、ワンダと巨像(プレステ2)、キングダムハーツ)が日本人の作曲家らの原曲が選ばれ、多くは欧州サイドで編曲、オーケストレーションされているようで、なかには他の曲と融合されたりしているようだ。

ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(RPO)のHP(当日の模様が沢山の写真とともにレポートされているので、仮に英語にアレルギーがあったとしても写真だけ観てほしい)によると、編曲に関わった作曲家たちが6名(Jessica Curry、Austin Wintory、CHAINES、Matt Rogers、Hildur GuðnadóttirとSam Slater)も観客席で、自分たちが編曲した音楽がRAHでどのようなサウンドで誕生するのかを見守ったとのこと。同ホールは天井が非常に高く、空間も大きいため、デジタルサウンドのデザインをする必要があり、サウンドチームの力量も大いに試された場だったに違いない。

3曲目のポケモンをオマージュした曲は、シンセサイザーを模倣したパーカッションと木管楽器のハーモニーが絶妙で、ラジオで聴いても立体感のあるサウンドを楽しめた。

【追記 8/24】4曲目は植松伸夫(FFの誕生秘話等を語るインタビュー記事はこちら(2017.3.13))のファイナル・ファンタジー(FF)XIII。幻想的な仕上がり!(なおFF9とFFXについては小沼純一さん、高橋愛さんと一緒に角野さんがゲームさんぽ@TGS2020で対談している動画(2020.10.5公開;前編後編)もある)。

6曲目のキングダムハーツ、下村陽子さんオリジナルの曲。オケ版の音の立体感にも感動。なお、下村さんとは、メゾンスミノで2020年11月11日にO.A.された対談がYouTubeに上がっているから、改めて聴き直すと新たな気づきがある。

7曲目のJourneyはRPOのプリンシパル・チェリスト、Richard Harwoodが冒頭で素晴らしいソロの旋律を奏でたが、電子音的なチューニングがなされ、生音のチェロとは違う迫力と深みのある音が素晴らしかった。

8曲目のBattlefield 2042はこれまでの既成概念を取っ払った楽器構成に思えた。パーカッション、管、弦の不協和音によるなんとも不気味みな音の重なり、オケではあまり見ない、生活の場で使われるような素材を含む多様な楽器も登場した。荒廃した世界での戦闘の様子を表しているようでもあった。あくまでもゲームの仮想空間の話だが。

以下は、プログラム9曲目の'Dear Esther/So Let Us Melt – I Have Begun My Ascent; The Leaving' by Jessica Curryから。打って変わって、包み込んでくれるような美しいハーモニーに癒された。

私の拙い感想では何も伝わらないと思うので、ぜひ8月1日のゲーム音楽のプログラム(以下をクリック)、仕事や家事などのBGMに流して、本場のBBC Promsを肌で感じてみて下さい!

なお、BBC Radioには9曲のゲーム音楽の後にCDのボーナストラック的にクラシック3曲が追加で楽しめる特典付き。 

Radio のTrack List のスクショ

iPhoneならBBC SoundsというアプリをDLし、Search(検索)でProms 21と打てば、該当番組に辿り着ける。【追記 8/11】BBC PromsのHPだと放送日から1年間アーカイブが残ると記載あり。

なお、以下は8/5にBBC PromsのTwitterからUPされたProms 21コンサート直後の観衆への突撃インタビューのダイジェスト。これをみると、BBC Promsが老若男女問わず人気が高く、彼らの一部には馴染みがなかったかもしれないゲーム音楽から新たな刺激を受けられ、楽しめた様子が伝わってきた。

インスタでは、ファイナルファンタジーはXIIにして欲しかった、マリオが入ってなくて残念だったという声もあった(笑)。それなら、これを聴いてよ!と横から口出したくなったが、代わりにここにおいておく。

私がBBC Radioで聴いただけでも、オーケストレーションされたゲーム音楽は、電子音のそれとは異なる音の重なりにワクワク感を抱いた。日本版PromsのGame & Cinema Promでは、かてぃんさんが、さまざまな日本人の作編曲家の方々とどのようなコラボをし、プログラムを作っていくのか、演奏のみならず、ソロコンサートとは一味違う、かてぃんさんのプログラム・プロデューサーの手腕にも大いに期待して待ちたい。

既出朝日新聞の記事に「ピアノコンチェルトは人生で一番楽しいですね」という角野さんの発言がある。ゲーム音楽、映画、アニメ・・・どの曲でピアノコンチェルトが出てくるのか、本当に楽しみだ。【追記 8/11】角野さんが音ゲーについて解説しているONTOMO記事(スマホで遊べる音ゲー3選! ゲーマーなピアニスト角野隼斗さんがオススメ, 2020年5月16日)を思い出し、読み返しながら、個人的に、beatmaniaIIDXという音ゲーに収録された蠍火、DEEMOのMagnolia、かねこちはるのSDVXのFLügeL《Λrp:ΣggyØ》を弾いて欲しくなった。音ゲーメドレーコーナーとがないかな?

【追記 8/8】ぴあにBBC Proms Japanにかける思いとともに、音ゲーやピアノコンチェルトに関する話もインタビュー形式で詳しい記事になっている。

【追記 8/11】ロンドン滞在中のかてぃんさんからツイートがあり、BBC Promsを取材/見学している模様。11/4は日本の"映像"音楽を扱うと。詳細の発表が待たれる。

【追記 8/17】英国滞在中の角野さんから興奮ツイートが!RAHに通い詰めたオタクが見るに、これは真正面のボックスシートからみた光景に違いない。さすがBBC Proms Japan 2022のリーディング・ナビゲーターだけあり特等席(招待席)からの鑑賞(兼取材)か。ステージも観客席も全て見渡せる圧巻の眺め!!ここは良すぎる。

【追記 8/24】角野さんから11/4のプログラムが発表され、選曲にワクワクしている。

まだかてぃんさんを知らない方、フジロックで衝撃を受けて(実は私は聞き逃しており、9月24日のテレビ放映を待つ身・・・)生演奏を聴きたくなっている皆さんなどに、かてぃんさんの最新最高の音楽が届きますように。

ロイヤル・アルバートホールの3階席から撮影(BBC Proms以外のコンサートではアリーナに椅子があります)

【追記 10/25 22:00】
nacoさんの厳選クラシックチャンネルで、かてぃんさんが、8月にロンドンで行ったBBC Promsのディレクターのデイビッド・ピッカードとBBC交響楽団のコンマスのイゴール・ユゼフォヴィッチへのインタビュー動画(nacoさんの翻訳入り、ほぼノーカット)の内容がとてもよかったので、必見!とても共感した。nacoさんの企画編集力も素晴らしかった。

【追記 10/25 22:10】ラストナイトの思い出
2010年9月、ロンドンの大学院に留学中、な、なんと、超超超人気なラストナイトに行ける幸運に恵まれた。ロンドン本場のラストナイトはイギリスのみならず欧州中心に大変人気があり、私がいた当時は抽選でのみ、チケットが入手できる仕組みで、倍率はものすごく高いと聞いたことがある。

当時、滞在していた寮(故エリザベス女王が数年に1回訪問されたり、ロイヤルファミリーとの関係もある寮)が、ロイヤルアルバートホールにBoxシート(8席)を所持しており、寮の抽選に応募したら大変運良く当選した(寮の中でも50倍位の倍率だったらしい)。

ラストナイトはとりわけ素晴らしい音楽の祭典で、イギリスの友人に言わせると、この時が一番イギリス人でよかったと愛国心が芽生えるらしい。もちろん、私のような外国人も多く、国を越え、年齢も関係なく、皆が音楽を楽しむ夜。この日の模様はハイドパークに設置された大スクリーンにも流され、芝生の上でピクニックしながら音楽を楽しむ人たちもいる。

最後ホールにいる皆も、ハイドパークにいる皆も肩を組みながら、オケに合わせて威風堂々を歌う場面は本当に感動的で、ロイヤルアルバートホールの隣の大学院に留学してよかった!、生きていて良かった!と強く思った。

このラストナイトは、12年経った今でも、私の人生において、ベストと思える日の一つである。その時の写真はTwitterのプロフィールのバックに載せているが、こちらにも載せておきたい。Boxシートから撮影した(大学院のプレスクールの写真コンテストで優勝した写真でもあり、私の中で最も良く撮れた写真である)。

2011年9月ラストナイトで威風堂々を歌っているシーン

(終わり)

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