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小さな集落の小正月行事。 ~秋田県大仙市・田ノ尻集落~


田ノ尻集落の小正月行事

秋田県大仙市の旧太田町に位置する小神成(こがなり)地域。その中の一つ、田ノ尻集落には、38世帯が暮らしています。この小さな集落で「天筆(てんぴつ)」「雪中田植え」「紙風船あげ」といった小正月行事が、2月下旬に行われています。

時代の変化とともに、伝統行事の継承が難しくなっている地域もありますが、田ノ尻集落では、どのように行事を続けているのでしょうか?

お話を聞かせてくれた田ノ尻集落の水谷会長(左)と、小神成集落会の高橋会長(右)。
集落会館は住民の集合写真や花壇コンクールの受賞歴でにぎやかだ。

田ノ尻集落の住民にとって、小正月行事は冬の一大イベント。家にこもりがちな冬、人と顔を合わせる機会も減る中で、昔から楽しみにされてきた行事です。しかし、これらの準備は1~2ヶ月でできるものではありません。

「天筆」の材料となる稲わらの収穫や、6m近くある紙風船づくり。

行事に必要な稲わらは、トラックの荷台からあふれるほど。秋に天日干しし、冬の行事本番まで集落で保管します。(最近はねずみが稲わらをかじってしまうので、ねずみ対策も欠かせないとか)
紙風船の制作は、1月に入ってから4~5日かけて行います。その年の干支や、制作に関わった子供たちの名前を記すのが恒例♪ 一見、大変な作業に見えますが、水谷会長は「難儀だと感じたことがない。できることをやってるだけ。面白いよ」と、話がつきることがありません。

平成13年に田ノ尻集落で作られた紙風船の設計図。
昭和53年の設計図(左)。さらに前は新聞紙や障子紙で作っていた時代もあったという。

田ノ尻集落では、地域の長老から雪中田植えの聞き取りをして「覚書」を作るなど、後世に行事を伝える取組も行ってきました。
でも「『伝えよう』と肩ひじを張ってしまっては行事は伝わっていかない。まずは、自分たちが楽しまないと」と考えています。

雪中田植えのしめ縄づくりの様子

これからの世代には「行事をなんとなく見せて、関わってもらい、少しずつ覚えていくのがいいのでは」と話します。水谷会長も、最初は地域の先輩たちから誘われ、紙風船の色塗りの手伝いから始まったそうです。

1月の紙風船づくり。最近は地元の小学校でも行事の参加を促してくれるため、
田ノ尻集落以外の児童、生徒も参加してくれる。
2023年2月25日の天筆づくり。

田ノ尻集落では、行事のルールは特に設けていません。
面白いのは「特に指示をしなくても、それぞれが動いてくれること」。ずっとこの行事を見てきたから、次に何が必要か、住民の方はわかっているのだそうだ。

「もっと大きい地域だとこうはいかない。小さい集落だから、このやり方でできるんだと思う」

唯一心がけていることは、「人の悪口を言わない」ことです。行事は途中参加でもOK。参加しなかった人を悪く言わない。誰でも参加しやすいように『入口』を広くすることを心がけています。

ここ数年、コロナ禍で規模を縮小していますが、下の世代は「自分たちの代で行事をやめたくない」とも話しています。
「俺たちの役割は、下の世代が、ちょっと迷ったりしてたら『やらないか?』『俺たち手伝うから』と声をかけて後押しすること」と話していました。

2023年2月25日に行われた「雪中田植え」。
2023年2月25日の紙風船あげ
行事の最後は「天筆和合楽焼き」。天筆の火で、願いごとを描いた短冊を焼き、
それぞれの願いを天まで届けるという。


自分たちが楽しむことが、何よりも大事。伝統を継承しながら、自分たちで楽しみを作ってきた積み重ねが、伝統として田ノ集落に受け継がれているようです。 

【関連リンク】秋田県のがんばる集落応援サイト
大仙市・小神成地域 紹介ページ
産地直送ブログ 田ノ尻集落で小正月行事(2023年掲載)

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