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左向きは幸運のサイン

こんにちは。秋田県由利本荘市でごてんまりを作っています〈ゆりてまり〉です。

突然ですが、皆さんは「イタヤ馬」をご存じですか。
秋田県の伝統工芸のひとつ、「イタヤ細工」で作られた馬のことで、なんとも素朴で可愛らしい魅力があるんです。
おもに仙北市角館で作られています。
「左馬」といって、飾る時は頭を左側にするのが縁起が良いとされています。

イタヤ馬に限らず、日本の伝統的な文化は左向きが「順行」を示し、縁起が良いこととされています。
ふだん生活ではあまり意識することはないですが、今でもたとえば漫画やアニメの中に「左向き=順行」のルールが保持されています。
先日、映画『すずめの戸締まり』を見て来たのですが、やはりこのルールが適用されていました。

※もしかすると『すずめの戸締まり』のネタバレと感じる人がいるかもしれないので、未鑑賞の方はこれ以上読まないことをおすすめします。




映画中盤、とある「旅」の始まりでは、車は左向きに進んでいました。
しかしある時点で突然、進行方向が右に変わります。
左向きが「順行」の意味だとすれば、その反対の右向きは当然「逆行」を意味します。
「これはなんか嫌なことが起きる予感…」と思っていたら、案の定とんでもないことが起こり、物語屈指の鬱展開が待っていました。
なんとかかんとかしてその危機を乗り越え、旅が再開するのですが、なぜか主人公達はまた右へ向かって進み出します。
おそろしく「繰り返し」の多い新海監督のこと、「えっ、もしかしてまだ続くのか、鬱展開?!」とハラハラしました。
重たい展開はもうこれ以上耐えられそうにない、目をつぶっておこうかなぁと考えていたところ、カメラはグンと角度を下げて、キャラクターの影を映し出します。
影であれば当然左右が反対になりますから、少なくとも影の中では進行方向は左になります。
全然噛み合っていないように見えるこの人達ですけれど、大丈夫、足元を見れば、ちゃあんと行くべき方向へ進んでいるんですよ――。
という、なんともオシャレな演出でした。

こんなふうに、今でも日本の文化に通底している「左向き=順行」のルールですが、では手まりはどうなのかというと、

手まりは進行方向が右です。

えっ、手まりって日本の伝統文化じゃないの!?
と思った方、わたしも最初知ったとき衝撃でした。
手まりは確かに日本の伝統文化ですが、右に向かって進行するので洋裁の分野に入るそうです。(先生がそうおっしゃってました)

西洋の文化では、日本と反対で「右向き=順行」を意味します。
進行方向が右の手まりは、日本の伝統文化の中では異色の文化ですが、そういうときは「だって、ラプンツェル以外のディズニープリンセスはみんな右に向かって進むもん!」と都合良く考えることにしています。
魔法の絨毯で空を飛ぶときのジャスミンも、伝説の島を目指してだだっ広い海を進むモアナも、みんな右に向かって進みますからね。
『アナの雪の女王』の王宮を出てきたばかりで、まだ少し後ろ髪をひかれるエルサは山を左に向かって進みますが、変身が終わって「ありの~ままの~」と歌うときには、自信たっぷりの様子で、微妙に右を向きながらこちらに向かって歩いてきます。

右と左、どちらが幸運に結びついているかなんて、文化によって違います。
結局自分が「こっち!」と強く思えば、それが幸運のサインになるのかもしれません。

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