夢日記と胡蝶の夢

こんにちは、秋乃アキです。
今回は今まで見てきた夢の話について。

寝ているときに見る夢ですが、あれって目覚めた瞬間にグラデーションのようにどんな夢だったか忘れていきますよね。こんな場所で、あの人と、そんなことがあって。と大体は覚えているけど数秒後には全く消えてしまうという。これは人に話しても大抵は信じてもらえないのですが、実は私、今まで見てきた夢を全て覚えているんです。正確には「覚えていた」ですが。

始まりは高校三年生の春。特に深い考えもなく「夢で見た内容をなんとなくでもいいから日記に書こう」と思ったのがきっかけ。夢日記を書き始めて最初に見た夢は「近所を一周するごとに景色がどんどん変わっていく」というもの。一周目は見慣れた普通の景色だけど、二周目からは床屋のあのグルグル回ってるポールの色が橙と緑に変わっていたり、コンビニの店舗が変わっていたり。三周目、電柱が道路のど真ん中に立っていたり、家が更地になっていたり。四周目、夜。近所の人達がその場で飛んだり跳ねたりを繰り返していたり、道路がうねったりと街の形相が次々に変わっていき、五周目六周目七周目。八周目、異形と化した街で一生を過ごすのかと発狂。そこで夢から覚めます。

なんとも不思議な夢(夢はほとんど不思議ですが)を日記に書き込んでから、私の脳に異変が起き始めました。それから毎日のように夢を見ますが、ふと、日記を読み返さなくても今まで見た夢の内容を全て覚えているぞ、と。もちろん「○月×日に見た夢は?」と聞かれて「これこれこうの夢だった」と答えられるわけではありません。けれど「何月何日に見た夢かはわからないけど、演劇公演の本番なのに全く台詞を覚えていない夢だった」と思い出せるようになったのです。

この場所でこんな夢を見た→そういえばこの人が出てきた夢があったな→そこで違う設定の夢を見た。と連鎖して思い出していくようになります。ゲームの中に入り込む夢。夜の学校に巨人が現れる夢。街が水槽の中に閉じ込められる夢。その全てを細かく書いて、その全てを連鎖的に思い出していく。たまに日記を読み返すとその情報の正確さに驚きます。

しかしここで「あれ?」と思います。夢日記を読み返していると、絶対に現実だと思っていたことが夢で、夢だと思っていたことが現実で境界線があやふやになっていきます。ネットで調べたところ「夢日記を書くと精神がおかしくなる」や「夢と現実の区別がつかなくなる」といった話を見かけます。まさにその通りでした。

今ここにいる現実は本当に現実なのか。本当は夢なんじゃないか。夢だと思っている場所こそが現実なんじゃないか。私の中で確かに息づいていた境界線があやふやになっていき、こわくなって夢日記は処分することにします。それから今まで見てきた夢は少しずつ忘れていきますが、現実にあったことは現実とはっきり意識することができました。と、今この記事を書いている現実が、もしかしたら本当は胡蝶の見る夢なんじゃないかって。そんなことないって、どうしても言い切ることができません。

ということで、今回はこの辺で。
お読みいただきありがとうございました!

この記事は有料ですが全編公開になっています。私の活動を応援してくださる方がいましたら投げ銭してくれると嬉しいです。また、サポートやスキのチェック。フォローをしてくださると喜びます。

ここから先は

0字

¥ 300

改めまして、秋助です。主にnoteでは小説、脚本、ツイノベ、短歌、エッセイを記事にしています。同人音声やフリーゲームのシナリオ、オリジナル小説や脚本の執筆依頼はこちらでお願いします→https://profile.coconala.com/users/1646652