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運動神経を向上するために

常識としての「コーディネーション・トレーニング」

小学生におけるスポーツ指導において「コーディネーション」は必須のキーワードです。正確には「コーディネーション・トレーニング」と呼びます。
昭和時代にスポーツを習った僕ら達は、そんなことを聞いたことがないのです。1970年代にオリンピックでメダルをたくさん取っていた東ドイツで、研究されていた理論です。最近のスポーツ指導では、バスケだけでなく、サッカーでもテニスでも、当たり前に導入されているトレーニングです。特に、小学生の発達期には必須のトレーニングだと思います。スポーツを始めていない未就学児にも有効なトレーニングで、運動で有名な幼稚園では導入されているようです。

日本バスケットボール協会(JBA)のコーチ・ライセンスの講習会でも、スポーツ少年団の講習会でもできます。コーチ講習会の教科書である「バスケットボール指導教本」上巻でも触れられています。

コーディネーション・トレーニングとは?

以前に投稿した記事「<年齢別>小学校バスケで教えてあげたいこと」で「運動神経」について触れました。運動神経とは「状況に合わせながら、複雑な動きを、適切に実施することです。」として、①状況を知覚する。②どう動くべきかを判断、③身体を動かす。として説明しました。これらは脳神経で処理されて実行されるのですが、コーディネーションは、脳神経の信号のやり取りをスムーズにしたり、正確にしたりできるようにするためのトレーニングです。分かりやすく言うと「コーディネーション・トレーニングをすると運動神経が上がる」ということです。

後述しますが、コーディネーション・トレーニングは、脳神経を刺激する動きを切り出して行います。そのため、バスケの動きに直接関係ないトレーニングをしているように見えることが多いです。特に、低学年には、楽しく行うために、遊びのように見えるトレーニグを多く入れて設計することが多いです。例えば「後出しジャンケン」は、2に一組で行い、片方が遅れて出すジャンケンです。完全に、遊んでいる様に見えます。しかし、視覚情報から情報を処理する神経を刺激します。片方と同じものを出す、勝つ手を出す。負ける手を出す。両手で出す、右手は勝ち、左手は負けで出す。足でジャンケンするなど。
この時、コーチとして困るのが、バスケ経験者の父母から「バスケを教えて下さい!」とクレームされることです。ちゃんと説明しますが、本人は昭和でバスケを指導されたので、コーディネーション・トレーニングを知らず、運動について調べたり学習をしたりしている訳ではないので「あのコーチは、バスケ素人だから分かってない」と絡んでこられます。(絡まないでください。お願いします。)

コーディネーションの必要性

よく言われることですが、公園に行くと、昔と比べて、鬼ごっこや隠れんぼをしている子は少ないです。女子だと、ゴム飛びやお手玉をしている子も見かけません。最近は、早くして塾に行くので余り外で遊ばない子もいるでしょうし、公園で集まってカードゲームをしたり、ゲーム機で遊んでいるを持ってきている子も見かけます。もちろん走り回っている子もいますが、全体でみると、運動していない子が増えた印象なのでは?と思います。
運動神経とは違いますが、運動能力について、親世代と比較して子供の体力が落ちているという報告論文はたくさんあり、スマホとの関連性などが言われています。文科省の運動能力調査結果をみると、ソフトボール投げの距離は下がり続けていますね。
お子さんの運動会に行くと、我が子が頑張っている姿を必死でみると思いますが、運動をやってきたお父さんお母さんは、ふと「足が速い遅いというよりも、走り方がおかしい子が多いのでは?」と思うのでは?と思います。まぁ。昔もいたのかもしれませんが、いずれにしろ、大きな差があることに気づくと思います。
コーディネーションは、スポーツに関わることだけではありません。運動に関わる脳神経のトレーニングですから、階段を転ばずに登る。ぶつからずに進む。踏切がなったら走る。他人と協力して荷物を運ぶなどといった日常の運動に関わります。それぐらいできる!と思いますが、運転免許試験で落ちたりする人も結構いるようです。

コーディネーションで鍛える7つの能力

7つの能力があります。各種サイトと、前述のJBAのバスケットボール指導教本から自作しました。

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1)Orientation 定位能力
他人と自分の位置関係を知るという意味では、味方へのパス、ディフェンスを抜く時の距離、ゴールとの位置関係ではシュートなどでも使われる能力です。モノとの位置関係はシュート練習で十分ですが、人との位置関係はトレーニングが必要です。低学年では「シッポ取り」などを取り入れています。

2)Balance バランス能力
重心を知って転ばぬように調整する能力です。ボディバランスと同じです。体幹という筋肉系よりも、バランスが崩れてから立て直す力だと思ってください。バスケだと1対1のディフェンスで、バランス能力が活かされます。チームでの代表的な練習では「バック走」と呼ぶ後ろに走る練習や「フィットナンバー」と言って片足立ちして、片方の足で数字を書いて、ぐらつきを調整するトレーニングを入れています。

3)Reaction 反応能力
合図を素早く反応する能力です。試合では、味方の声を聞いて、適切にパスを出したりする際に現れます。Adaptabilityとの区別が難しいですが、止まっている敵が急に動き出すセットプレーに反応するのは、Reaction能力といえます。チームでは、2人1組で、片方が落とすボールを片方がキャッチする「リアクション・キャッチ」や、寝転んでいる状態から、笛の合図で起き上がり、ダッシュするトレーニングを取り入れています。

4)Differencing 識別能力
ボールなどの道具を操作する能力で、自分の手足と一体化できるほどまで目指します。バスケでいうと、ボールハンドリングやドリブルで活用されます。これは、そのまま、ボールハンドリング練習や、ドリブル練習でまかなえると思います。ボールに回転を掛けたりできるように指先まで訓練させます。低学年では、2人一組での「ボール運び」などで競争させたりしています。

5)Adaptability 適応力
状況に合わせて素早く動きを切り替える能力です。バスケいうと、オフェンスの動きに合わせて、ディフェンスが反応して抜かせせないようにする能力です。「ミラーリング」といった2人1組で、相手の動きに対して鏡のように真似するトレーニングを入れています。先に、紹介した「後出しジャンケン」も状況に合わせて適応するトレーニングです。

6)Coupling 連結力
左右や手足と異なり動きをしながらも滑らかに身体を動かすの能力です。バスケでいうと、レイアップシュートで、足はステップを踏みながら、手はボールを持ってゴールにいれます。足では右にステップして進むフリをするフェントもあります。低学年では「マリオネット」という手は二拍子、足は三拍子で動かすトレーニングを入れています。

7)Rythem リズム感
リズムに合わせて身体を動かしたり、あえてリズムをずらしたりする能力です。スキップができない人は、この能力が弱いから難しいのです。同じ様に、初心者は、レイアップのステップなど「1・2・ジャンプ」などのリズムも難しく感じます。上級生では、ユーロ・ステップギャロップ・ステップも使いたいので、低学年では、声を出して、ステップの練習をします。

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自宅でもコーディネーションをやりましょう

スポーツ指導ということで「コーディネーション・トレーニグ」についてご紹介しました。コーチに限らず、父母の方も覚えておいたほうが良いでし、反復練習が重要なので、練習のない日に親子で実施してみてください。
また、まだスポーツを習っていない、未就学児の頃から親子で行うと効果的だと思います。以下のYouTuberが、子供とできる運動をたくさん紹介されていましたので、オススメします。


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