やさしき自裁


揺籃は雑音にかしぐ
光が綾をなして周囲あたりを包んでは
いくえにも温もりを巡らせ自足するのを
雲がしずかに地上へ振り落とす

揺籃は無音を裂く
落下のただなかに
すべての温もりを忘却して
運動方程式を連綿と履行する
固有の質量になり果てる

赤子はフリーフォールを眠りながら
上空一万フィート
零下四五度の大気圏を
すみれの花叢に思いなす

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