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ドヴォルジャーク生誕180周年記念公演を聴いて

11月2日は名古屋の熱田文化小劇場「ドヴォルジャーク生誕180周年記念コンサート」に赴きました。
榊原祐子さんのピアノ、寺田史人さんのヴァイオリン、本橋裕さんのチェロ。お三方ともチェコで学ばれており、今は愛知に縁があるというご関係。今年も木之本に来ていただくセントラル愛知弦楽アンサンブルとの関係もあるが、ドヴォルジャーク・ファンとしては魅力的なプログラムであり、足を運ばずにはいられない内容だった。

演奏曲目は①スラヴ舞曲第1集第2番Op.46-2、②森の静けさOp.68、③ロマンスOp.11、④ワルツOp.54-8、⑤ピアノ三重奏曲第4番「ドゥムキ―」Op.90である。ちなみに①トリオ、②チェロ&ピアノ、③ヴァイオリン&ピアノ、④ピアノ独奏、⑤トリオ、という構成。

榊原さんのピアノが美しかった。ワルツOp.54-8、ドヴォルジャークのピアノ曲を生で聴くのはルドルフ・フィルクシュニーさんで大阪国際フェスティバル(フェスティバルホール)で「主題と変奏」を聴いて以来だ。とても感慨深い。またロマンスOp.11の冒頭、コラール風の和声的な旋律が繊細で美しく響いた。弦のお二人寺田さんと本橋さんも良かった。さすが弦の国チェコで研鑽を積まれたお二人、チェコの弦楽奏者が時折見せるような、かすれたような、でもけっして痩せていないいぶし銀のような響きを出され、胸に迫るようだ。

メインはピアノ三重奏曲「ドゥムキー」、ドゥムカの複数形がドゥムキー。ドゥムカはウクライナの舞曲で、ドヴォルジャークが汎スラヴ主義であったことを如実に示す作品。一般的に国民楽派と言われるが、民族自決主義が徐々に台頭する世相の中で、ドヴォルジャークは地図に線で引いたような国境をもって自立を求めていたわけでなく、スラヴ民族全体を俯瞰して創作意欲をもち続けていた生き様がここに投影されているように思う。自由な形式の構成ながら決して冗長な仕上がりになっていないのは、この頃すでにブラームスなどから吸収した作曲上の構成力を充分に身につけてきたことを証明している。

コロナ禍で休憩なしで60分ほどのプログラムを組まれ、開催にこぎつけられた感じだが、かえって凝縮した内容で楽しめたように思う。「Musica Panenkaコンサートシリーズ・チェコ作曲家の肖像」というシリーズ化のコンサートを作曲家生誕の記念年に開催していこうという、この試みに期待したい。

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