英文法授業レシピ1 仮定法①
新指導要領では仮定法の基本的なものを中学生で扱うことになりました。このことを知らない高校教師も多く、中高連携が早速危ぶまれます。
さて、そんな仮定法ですが、ど定番の表現として
If I were a bird, I would fly to you.
みたいなとこからスタートするでしょうか。
どうしてもFormに注目がいきますよね。
"I" だけど "was"じゃなくて "were"を使うんだよ。
そのあと、"would+動詞の原形"を使おうね。
といった具合でしょうか。
Meaningは「もし~だったら」で終わってしまうかも。
Useの指導は、「私」は鳥じゃないよね。だから「もし私が鳥だったら~」というのは、ありえない仮定だね。こういう時には仮定法を使おうね、という感じですか。
この後たくさんの書き換え問題や穴埋め問題が続くでしょう。
If he ( ) right, I ( ) say sorry. こんな感じの。
この指導のどこが問題か。
それは直説法と仮定法の区別が不十分という点です。
たとえば If it ( ) rainy tomorrow, I ( ) stay at home.に適語を補え、だとしましょう。
ワークだと、適語を補い仮定法を完成させよ。みたいな文言で元も子もない…と感じるんですが。
この場合、新潟だったら
If it is rainy tomorrow, I will stay at home.でも間違いではなさそう。
でも沖縄や九州、四国などであれば、
If it were rainy tomorrow, I would stay at home.じゃないとかなり違和感。
このように、初期段階や初めて指導する項目は1文レベルでの指導が中心になりがちです。
それは学習者の限られた認知資源(注意力)を、目標文法項目のみに集中させる点では有益だと思います。
そのかわりに文脈を犠牲にしている、という認識を十分に持ちましょう。
文脈は日本語でもいいし、このように写真やイラストなどでもいいのでしっかり与えるべきです。
そのうえで、学習者自身にこの条件節(If~の中身)は現実にありえるのか、という点を判断させたいところです。
中学での【仮定法の基本的なもの】のもう一つとして、 "I wish"があります。これも便利な表現ですよね。
I wish I could swim well. みたいな。できないことを願う感じで紹介されます。
では、次の英語は適切でしょうか?
I wish you could win the game.
これも状況や言い方によりますが、まあ、普通は言いにくいですよね。
なぜなら、勝てないという現実に目を背けつつ応援しているわけですから。
言外のメッセージを書き起こすと、「どうせ勝てないだろうけど、ま、せいぜいがんばれや」みたいな感じでしょうか。
部活の大会での声掛けとしてはよろしくはない、かな?
I hope you can enjoy your game.とか I hope you'll do your best.とか、別の表現にした方がよさそうですね。
ですが、ギャンブル中毒者(カイジみたいな)に向けて、周囲の人間が飽きれながら、「勝てるといいね」というのであれば、I hopeはむしろ不適切でしょう。
このように仮定法は「もし~だったら」や「~だったらいいのに」という和訳だけでは推し量れない文脈や状況が裏にあるはずです。
そしてそれはFormやMeaningからは判断できない(ことが多い)。
だからこそ、Use(場面)をしっかりと提示することが求められます。
今日のポイント
仮定法は文脈提示を忘れずに。
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