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お盆の茶色いおかず #NHK俳句季節往来

 子供の頃、お盆の食卓に必ず二品があった。「ずいきの和え物」と「ぜんまいと厚揚げの炊いたん」である。ずいきとは里芋の葉柄。皮を剥き、茹でて生姜醤油で和える。
 皮を剥くのは私たち子供の仕事だったが、指が痒く、黒くなるし手間がかかる割においしくない。炊いたんも茶色×茶色の地味なおばんざいで、ただ甘辛いだけの退屈なおかずだ。
 大量にあるこれらを三日かけて消費しなければならない。一方、この期間は集まった親戚の男たちの酒盛りが煩く、罰当たりだが、お盆とはただ面倒な行事だなあと思っていた。
 現在は口にすることのないこの二品を懐かしく思う。今ならこれだけで何杯もごはんがいける。

芋の葉をころがる水の如来様



NHK俳句には、「季節往来」という読者のお便りコーナーがあります。
その月のテーマに沿った300字程度のエッセイに、それに合う俳句を添え、題名も自分でつけます。今月8月号「盆」は没でしたが、季節往来下段の編集部のひとこと通信の中で触れていただきました。Aさん、編集部のみなさんありがとうございます! こういうの実際目にすると、自分が書いたお便り読んでいただけてるんだあああ・・・!って感激します。


ずいきの和え物

ぜんまいと厚揚げの炊いたん


こういうのって、小鉢にちょこんと盛り付けられてるからおいしいものだと思うんですけど、どちらも大鉢山盛りに作るんですね。三日、いや、下手したら一週間くらいずっとある。炊いたんはまだ甘いからいいですけど、ずいきの和え物のぼうっとした貧乏くさい味は、大人になるまでその魅力に気づけませんでした。

お盆のイベントといえばやはり三日毎晩唱える西国三十三所御詠歌。おばあちゃんがこれの唱和巧かったんです。もちろんお盆だけでなく、毎日朝晩に一心不乱に念仏となえていました。若い頃におじいちゃんと大阪の繁華街を歩いていて道端の手相見にみてもらったら「奥さんは信心深い方やけど旦那さんはぜんぜんですね」と言われたそうで、ほらね!すごい当たってた!と強調していました。私は二人とも好きでしたが、信心とは別に私からみてどちらかというとおじいちゃんの方が穏やかな優しい人でした。

歌の文句も理解できない頃から聴いてきた御詠歌のあの独特の節回し。いまでもふっとした時に思い出して、耳にこびりついて離れません。特に好きなのを三首だけあげます。

参るより 頼みをかくる 葛井寺 花のうてなに 紫の雲
まいるよりたのみをかくるふじいでらはなのうてなにむさらきのくも

第5番 葛井寺

いくたびも 参る心は 初瀬寺 山も誓いも 深き谷川
いくたびもまいるこころははつせでらやまもちかいもふかきたにがわ

第8番 長谷寺

春は花 夏は橘 秋は菊 いつも妙なる 法の華山
はるははななつはたちばなあきはきくいつもたえなるのりのはなやま

第26番 一乗寺

イメージをとらえやすく流れるような調べのものが覚えやすく、記憶に残るようです。頼みをかくるって何?⇒「(頼みを)掛ける」の連体形で葛井寺に掛かっている。花のうてなって何?⇒花のがく仏さまが乗っている蓮の花の形をした蓮台。春は花って何の花?⇒昔は桜のことを花といった。妙なる法の華山って何?⇒「南無妙法蓮華・・・・経」の妙法蓮華の山、ありがたい仏の教えの花が咲いている山の意味。興味がわけば、わからないことでも自分で調べるきっかけになります。

うてなって奇妙な響きがなんともいえずいいですね。出だし「うっ」とパンチかましてきて「て」鉄の盾で反撃をかわされ、と思いきや「な」でやわらかく着地する。そういえば少女革命ウテナってアニメありました。たまに見てました。これも何だかよくわからないふしぎなアニメでした。話が複雑で魔女っ子メグちゃんと同じような感覚で見ていては理解できないのにたまにしか見ないからますますわからなくなる、しかし絵が綺麗なのでTVつけてやってたら最後まで見てしまっていました。


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