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ジュリエット釣り #毎週ショートショートnote

漁師に釣られた人魚のジュリエットは船上の王の間へ運ばれ、王子のロミオと恋に落ちました。腰から下が魚では最後まで愛し合う事ができません。彼女は船縁まで這っていき人間になりたいと姉に訴えました。姉は小瓶を渡し、

「これを飲めば足ができる。すっごいマズイけどいい?」
「いいわ」
「彼が他の女性を愛し嫉妬に苦しむと海の泡となり消えるの。でも彼を殺せば人魚に戻れるから」

ジュリエットは小瓶の中身を飲み、二本の足とロミオの寵を得る事ができました。

翌朝。寝室の掃除をしていると扉が開き
「到着が遅れてごめんね」
「どなた」
「隣国の王女よ。ロミオの婚約者」
「何ですって」
「ここを掃除してるって事は既に体の関係あるみたいね。いいわ。これくらい我慢しなきゃ王妃は勤まらないもの」

ジュリエットの顔が輝きました。
「実は、夕べちっとも気持ちよくなかったの。あなたよく満足できて? 後はお願いね」

箒を王女に押し付けるとジュリエットは街に出ました。
さあ、私の新しい世界だ!


(417文字)
たらはかに(田原にか)様の企画に参加させていただきました。