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二段お重人格ごっこ/#毎週ショートショートnote

「高階倫子とお近づきになるにはどうしたらいいだろう」
「任せたまえ。私は弁当の中身で持ち主の性格が分かるのだ」
「へええ、勉強以外にそんなことも分かるんだね」

「例えばあの、肉・野菜・飯がバランスよく盛り付けられた弁当。色どりも細かく計算されている。あの娘の親は子供の栄養をしっかり考えて作っているのだろう。仲のよい家庭に育った、素直なよい子と推察できる」
「そういえば彼女は、いつも家の話を楽しそうに話すよね」

「あの茶色の面積の多い弁当。冷凍食品が多いんだな。忙しい共働き、一人親家庭か、処々の事情で父親か本人が作っている場合がある。単に母親が料理嫌いの可能性もあるが。こういう弁当の娘は、しっかり者が多い。将来、家庭より仕事のタイプになる可能性が高い。私は嫌いじゃないぞ」

「菓子パンを3つも食べているあの娘は?」
「親が忙しいパターンもあるが、往々にして本人がめんどくさがりのズボラなのだ。弁当箱を持ち帰りするのなんか面倒だろう?汁が漏れるかもしれんし。それが嫌で毎朝コンビニでパンを買うのだ。しかも3つも」

「好きなもの食べさせてやりなよ。で、肝心の高階倫子は……」

二人が見やると丁度、高階倫子が風呂敷を解くところだった。高そうな風呂敷から出てきたのは、漆塗りの二段お重だ。

「重箱を弁当箱にするとは…いいとこのお嬢か。おい、これはハードル高いぞ」「うっ…」

高階倫子がお重の蓋を開けた。白飯に、梅干しひとつ。
「上段は日の丸弁当か。おかずは和風かな」
上段を机に置く。二段目も…果たして、日の丸弁当であった。

「!!」

「こ、これは…こんな弁当は見たことがない…分析不可能だ」
「あんな美人なのに…なんか僕、ドン引きしたよ」
「高階倫子は大層変わり者のようだ。しかし、こんな変な弁当を級友の前で晒すことが出来るとは、裏表のない気持ちのよい人格ともいえる」
「僕はもういいよ、降りるよ」
「よろしい。では、私がお近づきになるとするか」


(800字)
たらはかに(田原にか)様の企画に参加させていただきました。
すみません、文字数大幅にオーバーしました💦

※弁当から性格分析は若林の高校時代に得たものであり、必ずしも一般には当てはまりません。