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雑感94:稲盛和夫最後の闘い: JAL再生にかけた経営者人生

「誰のカネやと思ってる! あんたにそれを使う資格はない」。官僚的な経営幹部らを容赦なく叱り飛ばした稲盛。
2次破綻もありうると懸念されていたJALの再建を、稲盛はなぜ引き受けたのか。巨象は本当に甦ったのか。稲盛和夫の経営者としての最後の闘い――「これぞ稲盛経営」と思わせる改革の現場を、京セラ創業や第二電電時代のエピソードも交え、臨場感溢れる筆致で描く。「リーダー不在」という日本の課題に斬り込んだ迫真のルポ。

稲盛は京セラという日本有数の電子部品メーカーをゼロから立ち上げ、NTTという巨人に立ち向かってDDIという通信会社を作り、誰もが不可能だと思ったJAL再生を成し遂げた。それは「奇跡」の一言で片付けられるような、軽々しいものではなかった。(中略)「日本は再生できる」。JALを甦らせたことで、稲盛はそれを証明した。(本文より)

amazonより

稲盛さんが会社更生法を申請、JALを再生させ、取締役を退くまで。2010年2月1日から2013年3月31日までの1055日の物語。

物語というか、この再生劇を様々な切り口から語ったもの、という感じでしょうか。サクセスストーリーが時系列的に語られているわけではないです、この本は。生き方、アメーバ経営、対労組、人材育成などなど、章ごとに明確なテーマがある訳でもなかったと思いますが、1055日の間に起った様々な出来事や稲盛さんの発言を通じて、稲盛さんの実践した経営とは何か?が浮かび上がってくる、そんな本だと思います。

大変恥ずかしいことに商学部出身でありながら、稲盛さん=アメーバ経営であることをこの本を読んで思い出した。思い出したというか、正確に認識したというべきか・・・。

以下、エピローグからの抜粋ですので、かなりネタバレ的になってしまいますが。

それは「奇跡」の一言で片付けられるような軽々しいものではなかった。何千時間にも及ぶ役員・社長との対話。百円玉を積み上げて数千億円のコスト削減につなげていく経営改善。それは気の遠くなる積み重ねであり、たゆまぬ努力だった。80歳を超える老人が、それをやってのけたのだ。

エピローグ

稲盛さんには、仏教を底に敷く人生哲学がある。それは「利他の心を大切に」とか「嘘をつかない」とか、当たり前のようで、実は多くの人が実践できていない行動規範を説く。
会社・仕事に対して、正直に誠実に、正面から向き合う精神を育むと思います。

稲盛さんには、アメーバ経営という経営哲学がある。境地に至った稲盛さんは資料からおかしな数字を見つけるのではなく、数字の方が稲盛さんに飛び込んでくるとのこと。
アメーバ経営を敷かれた組織では、自分の成果がすぐに数値に出てくるので自然となぜ良くなった?/悪くなった?と従業員が考えるようになる。

この両方の哲学には、従業員のエンゲージメントを高める・・・今時のカタカナを避けると「当事者意識を持たせる」という共通点があるように思いました。

どちらかだけではダメなんでしょうね。
「善い生き方」だけ説いていても「何だこのおっさんは??お坊さんか?」となるでしょう。で、アメーバ経営だけやっていても、「なんだこいつは。金の亡者め・・・」と思われるでしょう。たぶん。

稲盛さんの人生哲学と経営哲学が絶妙に混ざり合い、そこに本人の人格・情熱などが相まって、従業員が共鳴し、会社の中に隅々まで思想が染み渡っていく。

こんなにきれいにまとめてはいけないのだろうが、なんだか勝手に納得してしまいました。

稲盛さんが亡くなられた後にこの本に出会ったことが少し悔やまれますが、自分が死ぬ前に出会えて良かったと思うことにします。

冒頭に書いた2010年2月1日から2013年3月31日ですが、私自身はちょうど就職先が決まるか決まらないかの時期から、入社して数年のところですね。

東日本大震災の影響で大学の卒業式もなく、学生気分のまま社会人になり(・・・仮に卒業式があっても学生気分のままだったろうが)、社会情勢には目を向けず、仕事帰りにゲーセンに入り浸って大盛りのラーメンばかり食べていた時期。

そんな時期にJALではこんな再生劇が繰り広げられていたとは・・・。
この感情をうまく表現できないので、ここで終わります。

オススメです。

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