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雑感85:始まりの木

藤崎千佳は、東京にある国立東々大学の学生である。所属は文学部で、専攻は民俗学。指導教官である古屋神寺郎は、足が悪いことをものともせず日本国中にフィールドワークへ出かける、偏屈で優秀な民俗学者だ。古屋は北から南へ練り歩くフィールドワークを通して、“現代日本人の失ったもの”を藤崎に問いかけてゆく。学問と旅をめぐる、不思議な冒険が、始まる。
“旅の準備をしたまえ”

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FACEBOOKで読んだ本を定期的に紹介してくれる方がいるのですが、その方が数年前に紹介していた本。

日々淡々とサラリーマンをしているとなかなか出会うことのない経験を、本書を通じて擬似体験できた、というか、忘れていたものを思い出した、というか、日本人の眠れる遺伝子に訴えかけるような・・・不思議な小説でした。

印象的なセリフが二つあります。

民俗学は就職の役には立たん。だが君が人生の岐路に立ったとき、その判断を助ける材料は提供してくれる学問だ

第三話

大切なのは理屈じゃない。大事なことをしっかり感じ取る心だ。人間なんてちっぽけな存在だってことを素直に感じ取る心なのさ。その心の在り方を、仏教じゃ観音様って言うんだよ

第五話

主人公と偏屈な准教授のコミカルな掛け合い(言葉のドッジボール?)の中で、現代の日本人に「日本人にとって神とは何か?」「生きるとは何か?」を訴えかける、そんな作品と思います。おすすめです。

話が逸れますが、この本を読んでふと10年くらい前に訪問した駒場東大前の日本民藝館を思い出しました。

どんな展示品を見たか、全くと言っていいほど記憶に残っていないのですが、なんとなく懐かしい気持ちになり、また行こうかなと思いました。

以上、雑感でした。

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