特別な存在
人は、あるコミュニティに所属していると
徐々に徐々にそのコミュニティに染まって
いつしか
そのコミュニティの中の景色しか
見えなくなってしまうものです
そこは安心安全な上に
自分を認めてくれるから
居心地がいい
できるだけこのコミュニティの中に
存在していたい
もっともっと役に立ちたい
もっと褒めてほしい
愛されてる
と、思い違いをしてゆくのです
がしかし、何らかのキッカケで
コミュニティの外側から景色を
見るチャンスが訪れます
え？
世界はこんなに自由で
広々しているのか
この身もこんなに軽かったのか、と
改めて驚くのです
ここはね、来たくて
来れるような場所じゃないのよ
１０数年前
友人から誘われてとあるカフェに行った時
そこの女主人が
俺に言ったセリフだった
はじめ、この女主人が何言ってるのか
理解できなかった
ポカンとしている俺に
君は、特別な存在ってことだ
と、友人に言われて
そうだったのか、俺は特別なのか、と
いい気分になった
そうか、このカフェは
特別な存在の人しか
来ることができないんだ
それから
俺はそのカフェに通うようになり
すぐに常連入りを果たした
夏祭りの手伝いをしてみたり
イベントの司会を仰せつかったり
声がかかれば出向き
役に立てることなら何でもやった
我ながらいい働きしてたと思う
それと同時に
女主人と仲良くなればなるほど
要らない物と要らない契約が
増えていった
なぜか漬物がうまく漬かる高級バケツ
どうみても普通のプラバケツだ
ガンが治るお茶
今なら薬事法違反だ
熱湯でも化学物質が溶け出さないプラボトル
今ならどこでも普通に売っている
細かい粒子で農薬まで根こそぎ落とす浄水器
そこまで俺は目がよくない
生命保険の加入
定期的な見直しが必要だ
だいたいの物は
毎月の基本料金＋αで
解約時に紹介主である女主人に
やめる旨を話さないといけないから
非常にやめづらいという
暗黙の縛りがあった
それだけならまだいい方だ
外資系の資産運用や
先物取引などまで勧められ
まんまとサインしてしまうと
もう後には引けない状態に
なってしまっていた
後悔しても、契約したのは俺なのだから
誰も責めることはできないのは
重々承知と知りながら
どうしても納得できない自分もいる
居ても立っても居られないので
そんな嫌な自分がいることを
勇気をふりしぼって
女主人に話したことがある
あなたは俺をカモとしか思ってないだろ
おだてて金を巻き上げたいだけだろ
という旨を
マイルドにマイルドに話しした
すると、女主人は
それはね、あなたの思い込みなのよ
成功を邪魔しようとする
幼少期に培った思い込みが
足を引っ張ろうとしているの
と、答えたのである
どんな不義理や理不尽なことがあっても
あなた自身の問題なんだから
私を責めるなんてもってのほかよ、と
罪悪感の上塗りをしてきたのだった
ここでやっと目が覚める山ちゃん
このままじゃいかん
嫌われようが、蔑まれようが
ここから、離れるのだ
そう、覚悟したのだった
覚悟なんていらないだろ
と思うかもしれないが
俺が必要とされる場所であったことには
変わりなかったので
この決断は、すごく悲しかった
さて
実際に離れてみると
なんであんなところにしがみついていたのか
まったくもってバカだったとしか
言いようがない
唯一、投資関係だけは
満期があったので１０年の時間がかかったが
すべて解決した時
本当に清々しかった
俺は何を学んだのか
桁違いに高い授業料だった
（笑）
ここはね、来たくて
来れるような場所じゃないのよ
あなたは特別なの
そんな安っぽい言葉にのるかよ
と、思っていても
人はどうして弱いもので
承認欲求と人生のタイミングが
見事に重なると
特別な自分を
信じたくなってしまうものなんです
きっと
女主人の言う通り
今回の件の大もとは
母から認めてもらいたいという
思い込みなんだろうとは思います
それでも、自分の力で解決できたのだから
その思い込みも解決に向かったハズ
その後も様々なコミュニティに
よく誘われるけど
つかず離れずを意識して
鯨のごとく生きてます
ざふーん
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