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放置カレー

【後悔日誌】

今日は暑かったです
車の温度計が指した気温は
ここ札幌で、最高35度

道民にとっては
自分の屍を焼く
擬似体験をしているようなもの

そんな暑い夏といえば
食中毒
酷暑といえば
食品管理です

子どもの頃から
ウンコを我慢するクセのある俺
小さい頃はウンコがしたくなると
部屋の隅に立ってしまう癖があり

親からよく

あ、またウンコ我慢してるな
早くトイレに行きなさい

と言われたものです

そんな俺が
忘れもしない29歳の夏

たしか、まぁ君とハンカチ王子の甲子園
世紀の対決の前の年

仕事中に脂汗をかき
患者が寝るはずのマットの上に
前額面から倒れこんでしまったのでした

どこまでも優しくない上司が
ない優しさをふりしぼって
外来処置室まで連れて行ってくれたのですが

プリンペランかブスコパンの注射が
全く効かないまま
脳外科では対応が限界とし

最寄りの消化器内科に
行くことになったのです

社用車をまわすから玄関先で待っとれ
と言われたのに

コイツらに世話になりたくない一心で
ひとりタクシーに飛び乗ったのでした

夏なのに、吹雪の東北の駅を見送る
演歌歌手のように
我が脳外科を見送ると

ほぼ四つ這いの状態で受付へ

病名は、急性胃腸炎
いわゆる食中毒

あんた何食べたの?
Dr.said

返答できる状態ではない中でも
返答できるのが俺

か、かれー、でし

昨日の作り置きのカレー
今でこそ、あきら飯とか言われてますが
当時は料理を始めたばかりで

カレーの夏の常温放置が
ウルトラ恐ろしいことなんか
全く知らず

何だか酸っぱいカレーだな
くらいの気持ちで
朝、美味しく食ってたのでした

内科では、飛んで火に入る夏の虫
いらん検査や
鎮痛に加え補水点滴
そして、大量の薬を処方

胃薬、6種類くらい出され

やるもんやったから
ほなさいなら、と
世間の冷たさを噛みしめながら
帰りのタクシーに乗り込んだのでした

気を抜くと失いそうな意識の中
消化器内科からそのまま帰宅し
服も脱がず、そのままうつ伏せでベットイン

そのまま意識が遠のき
現実に戻ったのは、日も落ちかけた午後7時

ハッ!?

何か出た

という感覚で目が覚めると
お尻のあたりに熱い何かが

え?

このお尻の感覚を
信じるの?

だめ?

いい?

だめ?

あたたかいお尻のあたりの
その大いなる何かに
頭の中は大パニック

まさかだろ

ううん、違うの違うの
屁だと思ったの

そう、屁だと思ったからゆるめたら

こんなことになるなんて
思ってもいなかったの

昔から我慢が得意だったから

そう、そうよ、屁だと思ったの
悪くない、俺は悪くない

誰に言い訳してるのか分からないが
当時、朝日粒々瞑想をしていた東の空へ
一生懸命言い訳をしていたのです

しかしながら、肉体は
その場から微動たりできない

しゃくとり虫みたいなうつ伏せのまま
まったく動けない

目だまがぐるりと
人生最大の可動範囲に動き
瞳孔を限りなく収縮させ

目線が仄暗い部屋と
無印のシーツを
何度も何度も行ったり来たりしている

どうしよう

このまま体を起こしたら
ブツが散らばるんじゃないかしら

そもそも、どのくらい
出ちゃったのかしら

29歳、独身
ファイナルファンタジーの仲間には
バレてないよね?

このまま、どのくらい動かなければ
物事は良い方へ向かうのかしら

待てよ

そもそも、どうやってジーンズとパンツ
脱いだらいいのかしら

分からない、何もかもが分からない
風呂で残りのウンコしてもいいの?

だめなのかしらいいのかしら

あまりのショックからなのか
回らない頭がフル回転で

実はまだ腹が痛かったのか

本当は、脱水だったんじゃないか

俺は再び、意識を失ったんです

それからの記憶がないのだけれど
何とかちゃんと処理してたし
出されたお薬のおかげで
2日後、仕事に復帰してました

けど

あれから20年が過ぎた今日
七夕飾りを眺めながら

これからもウンコを漏らさぬようにと
そっと、東の空に願いを放つのです

いいですか
ウンコは我慢しても、必ず出てきます

いいですか
頭痛と歯痛と腹痛は
絶対我慢しちゃダメだし
医療でしか対応できません

そして最後
下痢になったら
下痢だけじゃなく汗もかくので
出した以上の水分を摂らないと
本当に死んじゃいます

この夏は、ウンコを漏らさぬことはもちろん
常温の白湯を小まめに摂って
腐ったカレーは食べない

これがあきらの
後悔日誌

Dance!
in the morning lights

もう、大体のことは恥ずかしくない

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