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「知らない言葉」を捻り出す意味 【文章術007】

僕のnoteでは、これからライターを目指す人や、新たなスキルを身につけたいビジネスパーソンに向けて、文章力を培うための練習課題を出していき、そのポイントを解説していく。

今回は、敢えて難しい単語を混ぜる意味について説明していきたい。

説得力はあとから付いてくるもの

実は、Webや雑誌に記事を書く場合、自分の詳しいテーマを扱える回数なんてのはかなり限られている。何も調べなくても記事の骨子を書き上げられるなんてケースは、1ヶ月に1回あれば良い方だろう。何度も何度も自分の知っていることだけを書いてお金を得られるのは、一部の専門家だけだ。

寿司屋が市場でその日の良い魚を仕入れるように、ライターもその時期の良い情報を得る方法と、それをきれいに卸す手順を熟知していなくてはならない。そのためには、企業や人に直接取材をしたり、【文章術002】で紹介したように「検索」を高い精度で行ったりする必要が出てくる。

ただし、だからと言って「何かを調べて詳しくなってからライターになろう」なんて遠回りは辞めておこう。「魚市場で働いてから寿司屋を目指そう」って言っているのと同じだ。人生はそんなに長くない。原稿や記事を実際に書いて、トライアルアンドエラーを積み重ねていけば良い。説得力なんてあとから付いてくる。記事を書くジャンルを絞りながら、専門家を目指せば良い。

初めて手を出すジャンルの1記事目なんか、誰が書いてもど素人の作品だ。その道のプロに批判をくらいまくる可能性は高い。でも、それでいい。それを5年続けたら専門家になっているはずだ。魚の売り方を知らなくても寿司屋になれるように、いま専門性がなくてもライターにはなれる。

だが、いつまで経っても知識レベルが上がらない文章の書き方もある。それは「自分の分かることだけ書く」「わかったつもりで書く」というスタイルである。全くもって偉そうだが、挑戦しない者に成長はない、と僕は思う。常に勉強は必要だ。


知らない言葉を1つ足すことを意識しよう

では、原稿を書くときに具体的に何を意識すれば良いのか。文章術の練習として取り入れやすい僕なりの方法を紹介したい。それは少しずつで良いので「知らない言葉」を取り入れるということだ。

これは決して、「普段書いているジャンルとはかけ離れたジャンルの記事を積極的に書こう!」と勧めているわけではない。これは非常に労力がかかるので覚悟がなければやめた方がよい。

そうではなく、自分が書けそうなジャンルの話を書きつつ、「これってもしかして他の良い方あるのかな?」「専門用語での良い方はなんていうんだろう?」と疑問を常に持てるようにしておいて欲しいのだ。

例えば、僕はスマートフォンの記事を頻繁に書いている。今年も、新しい機種が出た際に、被写体と背景で、焦点を切り替えてぼかしのある映像が撮れる動画撮影機能を搭載したと話題になった。

別に僕は動画撮影についてはド素人だけれど、ここで一歩深く調べる癖が付いているとビビッとくるわけだ。「あ、これ……なんか動画撮影の専門用語がありそうだな」、と。

そして、何回も何回もキーワードを変えて検索を繰り返す。これなんていう撮り方・テクニックなんだろうか。すると案の定「プルフォーカス」という言葉が見つかった。焦点の対象が移動する撮影技法のことを「プルフォーカス」と呼ぶようだ。

その後はプルフォーカスについて説明している記事や解説動画などを見まくって、自分の知識としていく。そうすれば、「アウトフォーカス」のような関連した用語も自然と知ることになる。

その後は、上記のトピックを紹介する記事で、「被写体と背景で〜」と書くだけでなく、「〜の動画撮影機能では、プルフォーカスの再現ができるようになった」という書き方の選択肢が増える。当然記事中でプルフォーカスについての説明は必要になるが、これだけの差で、より撮影に興味がある層の読者にも刺さるようになったはずだ。説得力は、この積み重ねで深まっていく。

加えて、その後似たような機能が登場するたびに、プルフォーカス・アウトフォーカスといった単語を自在に使えるようになった。また、動画撮影に関する知識を広げる糸口も得たので、興味があればそこから知識を広げられる。一石二鳥にも三鳥にもなっていくだろう。

ちなみに、もし専門的なキーワードが少ないジャンルならば、類語辞典を検索するだけでも良い。自分の語彙と知識を、書きながら増やしていくことが重要だ。


今回の課題

では、今回の課題を紹介する。

【課題007】「在宅期間のおうち筋トレには腹筋がおすすめです」。この文における「腹筋」を、より専門的なカタカナのトレーニング用語に変えて、より説得力が増した文章に変えよう。複数種類がある場合、それについても説明し、各用語がわからない人にも伝わるような解説を加えた文章に整えよう。

自由度は高いが、こうしたキーワードを一つ二つ混ぜることは、読者に「おっ」と思わせて意識を引き止めることにつながる。ぜひ奮励努力して取り組んでほしい(※ふんれい:気力を奮い起こして努めること)。

本マガジンの課題についての補足説明は、Twitterの「MOJIBITO|文章術」(@mojibito)アカウントにて投稿する予定だ。また、サークル機能の「MOJIBITO」にて、添削用の送信フォームも用意するので、本マガジンの課題に本気で取り組む際には、ぜひ活用して欲しい。



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