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「また」や「次に」を使うとき、使わないとき【文章術035】

僕のnoteでは、これからライターを目指す人や、新たなスキルを身につけたいビジネスパーソンに向けて、文章力を培うためのポイントを解説し、練習課題を出していく。

今回は、文章をつなぐ「また/そして/さらに/加えて/なお/ちなみに」や「まず/次に/その後に/最後に」といった表現を使う是非について考えたい。

使わない方が良い文

前提として、段落が別れるような長く堅い文章を書くときには、なるべくこうした接続詞は使わない方が良い。

例1)トウガンの果実は、煮込むととても柔らかくなります。じっくり煮込んだおでんの大根のよりも、とろっとした食感で、食べていると癖になります。味は淡白で、さまざまな料理に使われます。漢字では冬の瓜(ウリ)と書きますが、実は旬は夏頃。俳句では、秋の季語です。長期保存が効き、「冬まで持つ瓜」という意味で、この名がついたと言われています。栄養価としては、ビタミンCやカリウム、食物繊維が豊富です。

例1では、「また」「なお」などの語を一度も使っていない。このように、淡々と文を並べただけでも、文章として成立する。

一方、よくあるのが「なんとしてでも文と文を繋がなくては」と考えてしまい、余計な語だらけになってしまうケースだ。先の例文に手を加えてみよう。

例2)トウガンの果実は、煮込むととても柔らかくなります。また、じっくり煮込んだおでんの大根のよりも、とろっとした食感で、食べていると癖になります。そして、味は淡白で、さまざまな料理に使われます。ちなみに、漢字では冬の瓜(ウリ)と書きますが、実は旬は夏頃。また、俳句では、秋の季語です。なお、長期保存が効き、「冬まで持つ瓜」という意味で、この名がついたと言われています。また、栄養価としては、ビタミンCやカリウム、食物繊維が豊富です。

大げさに見えるかもしれないが、実際に例2のような文を書きがちな人は多い。このような書き方をすると肝心の内容がかえって理解しづらくなってしまう。自信を持って、「また」などの語を消そう。

一方、話題が大きく変わるときや、文章構造的なブロックをわかりやすくする意図で、敢えて使うことは問題ない。

例3)トウガンの果実は、煮込むととても柔らかくなります。じっくり煮込んだおでんの大根のよりも、とろっとした食感で、食べていると癖になります。味は淡白で、さまざまな料理に使われます。また、漢字では冬の瓜(ウリ)と書きますが、実は旬は夏頃。俳句では、秋の季語です。長期保存が効き、「冬まで持つ瓜」という意味で、この名がついたと言われています。なお、栄養価としては、ビタミンCやカリウム、食物繊維が豊富です。

例3では、(1)トウガンとは、(2)なぜ冬の瓜、(3)栄養価、のように話題が分かれたところを明示する意味で、敢えて「また」「なお」などの語を入れてみた。「話題が変わるぞ」と読者が気付きやすくなるための標識として使っているわけだ。

ただし、こうした使い方も「段落」を分けられる場面ならば、改行に任せてしまった方が良いだろう。

例4)
 トウガンの果実は、煮込むととても柔らかくなります。じっくり煮込んだおでんの大根のよりも、とろっとした食感で、食べていると癖になります。味は淡白で、さまざまな料理に使われます。
 トウガンは、漢字では冬の瓜(ウリ)と書きます。しかし、実は旬は夏頃。俳句では、秋の季語です。長期保存が効き、「冬まで持つ瓜」という意味で、この名がついたと言われています。
 栄養価としては、ビタミンCやカリウム、食物繊維が豊富です。

使った方が良い文

一方、文章をつなぐ表現をた使った方が良いのは、先述のように「文章構造を明示する」場合、そして「時系列や手順などの流れを説明する」場合だ。

まず、「文章構造を明示する」場合だ。たとえば、ポイントを3つ挙げて説明するような文章構造ならば、3つの要素に「まず/次に/そして」を対応させることで、読みやすさが増す。

例5)トウガンを調べてみて面白いと思ったポイントは3つある。まず、加熱すると柔らかくなることだ。煮込んだ大根よりもとろっとした食感になる。次に、漢字だと冬の瓜と書くことだ。旬は夏なのに、長期保存が効き、冬まで持つためにこの名がついたという。ちなみに、秋の季語だ。そして、栄養価としてビタミンCやカリウムが豊富なことだ。食物繊維の水溶性と不溶性のバランスも良いとされる。

こうした対応があることで、例5では、「ちなみに、秋の季語だ」のような枝葉が混ざっても、「今読んでいる部分は、“そして”がまだ書かれていないから、2番目と3番目の間にある枝葉の部分なのだな」と推測しながら読めるわけだ。

一方、これが例6のようになってしまうと、一気に混乱を招くので気をつけたい。

例6)トウガンを調べてみて面白いと思ったポイントは3つある。まず、加熱すると柔らかくなることだ。煮込んだ大根よりもとろっとした食感になる。次に、漢字だと冬の瓜と書くことだ。旬は夏なのに、長期保存が効き、冬まで持つためにこの名がついたという。そして、秋の季語だ。また、栄養価としてビタミンCやカリウムが豊富なことだ。食物繊維の水溶性と不溶性のバランスも良いとされる。

読者は暗黙の了解として、「そして」以下に3つ目のポイントがある、と期待して読み進めている。そのときに、意図せぬ「そして」登場が登場したり、「また」以下に3つ目のポイントが出てきたりすることで、混乱してしまう。文章構造が破綻してしまっているわけだ。

もし「まず/次に/そして」のような語を、目印として使うならば、あくまでも文章構造に忠実になり、変則的な使い方をしないことが重要だ。


次に、「時系列や手順などの流れを説明する」場合だ。こちらは文をつなぐ語が並んでいた方が、自然に感じる。

例7)まず、トウガンの皮を剥き、食べやすいサイズに切る。次に、お湯を沸かして、トウガンを2〜3分茹でる。その後、出汁に浸して味を馴染ませる。そして、器に盛り付けよう。

練習課題

【課題035】「また」などの接続詞を使わずに、400字前後の文章を書いてみよう。

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