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読みやすくするための「と」の使い方【文章術018】

僕のnoteでは、これからライターを目指す人や、新たなスキルを身につけたいビジネスパーソンに向けて、文章力を培うためのポイントを解説し、練習課題を出していく。

今回は、「と、」と「、と」の使い分けついて意識したい。

「と」は分かりづらい

日本語に出てくる「と」は、文法的には主に「格助詞」と「接続助詞」に分かれる。その使われ方は多岐に及ぶので、用法の分類を見るだけでも、何がなんだか、という感覚になるはずだ。ここでは細かい解説は割愛するので、詳しく知りたい場合には、辞書やネットを調べてみて欲しい。

一方、母国語として日本語を扱える人として、文章を書く際に意識的に気をつけたいポイントはひとつだけだ。それは、「と」が&の意味で使われているのか、そうでないのか、という違いについて、読み手からわかるようにすべきということである。

例えば、こんな文があったとする。

彼は朝になると、淹れたてのコーヒーと、……

この文の「と、」の後ろにある「……」の部分は、まだ書かれていない。しかし、読み手は、「と、」を見た時点で、後ろにコーヒーと並列の構造を予想する。たとえば、「パン」や「新聞」といった単語が入るだろう、と考えるわけだ。

一方、こんな文はどうだろうか。

彼女は、その料理のポイントが、強火で一気に炒めること……

こちらの場合には、「並列」なのか、そうでないのか、読み手からすると判断ができない。「……」の部分は、「素早くかき混ぜること〜」と続くのか、「推測した。」と続くのか、一瞬ではあるが悩むことになる。読者のテンポを崩し、文章のリズムを阻害する要因にもなりかねないわけだ。

まだ、このくらいの短さなら大きな支障はないだろうが、より複雑な構造を持った文章では、避けた方が良い書き方だと僕は思う。

しかし、「、」を一つ加えることで、この事態は避けられる。

A)彼女は、その料理のポイントが、強火で一気に炒めることと、……
B)彼女は、その料理のポイントが、強火で一気に炒めること、と……

Aの「と、」に続く文は、並列の可能性が高いだろう、と読み手に想像させることができる。

一方、Bの「、と」は、並列構造ではなく、「知っていた」「推測した」など、「彼女」を主語にする動詞が後ろにきそうだと予感させる記号になる。

小さな違いだが、読みやすい文章を意識するうえで、重要なテクニックだ。

また、さらに文を読みやすくするうえで、主語と動詞を近づける際にも、Bの構造の方が都合がよい。例えば、「彼女は、」の部分を後ろに移動させてみる。

A')その料理のポイントは、強火で一気に炒めることと、彼女は……
B')その料理のポイントは、強火で一気に炒めること、と彼女は……

A'の「と、」の後ろは一瞬並列を思わせてしまうので、続く「彼女」が主語なのかどうか一瞬の戸惑いが生じる。

B'の「、と」の後ろは並列の可能性がなくなっているので、「彼女」が主語だろう、とスムーズに理解できるはずだ。

もちろん、文法的に「と」のまえに「、(読点)」をつけなくてはいけないというルールはない。むしろ付けるのはくどい、と判断する書き手・編集者もいるだろう。あくまで「読者へのわかりやすさ」を追求した一つの形なので、この文は読みづらくしたくない、誤解を避けたい——といった文に使うテクニックとして捉えておいてほしい。

そして、当然今回解説したパターンに当てはまらない「と」の用法もあるので、悪しからず。


練習課題

では、今回の練習課題について

【練習課題018】気になるニュースやコラム記事から、格助詞や接続助詞の「と」を使っている文を10個抜き出してみよう。それぞれの文において、読点を前後に付けるべきか、あるいは付けないべきかを分析してみよう。



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