見出し画像

文を読ませる技術「フィア・アピール」とは何か【文章術023】

僕のnoteでは、これからライターを目指す人や、新たなスキルを身につけたいビジネスパーソンに向けて、文章力を培うためのポイントを解説し、練習課題を出していく。

今回は、「フィア・アピール」というテクニックについて紹介したい。

文を真剣に読んでもらうにはどうしたら良いか?

本や文章というのは、突き詰めれば「他人の言葉」に過ぎない。たとえば、酔った大人の昔話が適当に聴き流すべきものであるように、「知らない誰かが文字に書いた内容」もまた、全て真摯に読む必要はないのだ。これは、「読者」としての正しい姿勢である、と僕は思う。

その文や情報に対して、真剣に向かい合うかどうか、聴き流すかどうか、あるいは本を閉じるかどうかーー。そういった判断をする権利を「読者」は持っている(もちろん、法律や行政が関わる文書、契約書など、読む義務が発生しない場合に限った話ではあるが、ここではそういう話はひとまず置いておこう)。

これを反対に見れば、書き手がどれだけ良い話、役に立つ情報を書いたとしても、「読者が文に向き合う仕掛け」が無ければ「読まれる文」にはなりづらい、ということになる。

フィア・アピールとは

特に実用文の場合、具体的に、読者に文に興味を持ってもらうには、「自分事(じぶんごと)」として捉えてもらわなければならない。「たまたまテーマに興味のある読者」を待っているのは、宝くじが当たるのを期待しているようなものだ。

言い方を変えれば、プロの書き手は、読者に「おや、この話は、自分も関係あるな」と思わせ、あわよくば「これは真剣に読まなくてはいけなそうだ」と思わせられる、文章が書けると当然のようにクライアントから期待される。無意識的にだ。

この文脈で重要になるテクニックが「フィア・アピール」(あるいはフィアーアピール、恐怖喚起アピール、fear-arousing appeal、恐怖喚起コミュニケーションなど)と呼ばれるものだ。「フィア(Fear)」とは、「恐怖」を意味する英単語である。この言葉の通り、まずは、人が潜在的に抱えている恐怖感を思い出させる。後は、思いさせた恐怖感や不安に対して、ある種の解決策を提示する。こういう誘導によって、読者に文章の内容を「自分事」として捉えさせるわけだ。

例)ちょっと出かけたタイミングで、宅配の不在通知が届いてしまうことってありますよね。その度に、再配達を依頼するのは手間ですし、申し訳ない気持ちにもなりますよね。でも、そういった不安はスマホアプリで簡単に解消できます。

これは、一般に広告や営業で使われるテクニックの一つであるが、もちろん記事や文章の導入としたも効果的である。

(※ちなみに【文章術020】では、今回紹介した書き方を、「課題提示型」の導入文として説明した↓)


実際に使うときのコツ

ただし、名前がフィア・アピールだからといって、恐怖を煽りすぎるのは逆効果だ。先の例でも、書いたように、「出かけたときに不在通知入ってるのって嫌だよね」くらいの小さなfearを思い起こさせれば十分効果があると思ってよい。

具体的には、読者が潜在的に抱えている恐怖、不安、不便に対し、書き手として「共感」をしてみるくらいがソフトで良い。

例)エアコンって付けたり止めたりすると、かえって電気代がかかるって言いますよね。でも、本当のところどうなんでしょうか? 今回は冷房と暖房での違いについて調べてみました。

これで、読者が潜在的に抱えるごくごく小さな「恐怖」や「不安」を顕在化させる一文が仕上がる。

練習課題

では、実際にチャレンジしてみよう。

【課題023】フィア・アピールを使った導入文を、5つ書いてみよう。

もちろん、何でもかんでもフィア・アピールを使えばよいというわけではない。しかし、製品やサービスなどの魅力を伝える記事や、広告記事、雑誌企画のスムーズな導入などでは、必ず役に立つテクニックだ。

何となく「そういう書き方/理論あるよね」という認識しているだけでは勿体ない。ぜひ、自分の中で言語化されたテクニックとして、整理しておき、いつでも取り出せる選択肢の一つとしておいてほしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?