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その「受動態」、本当に使うべきか?【文章術013】

僕のnoteでは、これからライターを目指す人や、新たなスキルを身につけたいビジネスパーソンに向けて、文章力を培うためのポイントを解説し、練習課題を出していく。今回は、受け身表現を避けることを意識したい。

受け身は便利だが、密度を下げがち

日本語における「受け身(受動態)」の表現は、とても便利だ。しかし、文章を書こうとする場面において、行動の主がはっきりしないまま使えてしまうので、曖昧さが残ることも多い。

例1-1)先ほど、頼んでいた弁当が届けられた。

上の例文は決して、おかしな文章ではない。しかし、記事を書く場合などには、避けた方が良いことが多い。

具体的には、「誰が届けたのか」という情報が抜けてしまうので、動作の主を明確にしつつ、能動態に変えることを意識づけておこう。

例1-2)先ほど、配達員が弁当を届けた。私が頼んでいた弁当だ。

文章が美しくなくなると感じる人もいるだろうが、ミスリーディングを防ぐために重要だ。

「いやいや、そんなの使わないよ」と感じる人もいるかもしれないが、騙されたと思って考えておいてほしい。例えば、こんな冒頭の導入文でうっかり使ってしまいがちだからだ。

例2-1)ついに新製品が発売された。

こうした文はうっかり簡単な受け身に流れてしまったゆえに、情報がぼんやりしてしまっている。受け身表現そのものが悪ではないが、情報密度が下がりがちになってしまうのが問題なのだ。それを避けるための意識づけが重要である。

たとえば、上の文なら次のように書き換えた方が良い。

例2-2)A社が1月15日、新製品Bを発売した。

これで具体性のある情報が追加された。楽な方向に流れたしまった文と比べて、情報量が増えているのがわかるだろう。

さらに、こんな例も、どうやって書き換えるか考えてみたい。

例3-1)いま、ポテトが注目されている。

こんな文章を書きがちな人はよく見かける。僕も疲れているときに気を抜くと自分でも書いてしまうし、編集部が書き足したリードとかで見かけることも少なくない。

確かにキャッチーな一文ではあるが、この文章では、誰が、何のために、その話題に注目しているのか、という情報が不明瞭だ。そこで次のような能動態の書き換えをしてみたい。

例3-2)複数の海外メディアが、日本におけるフライドポテトの供給不足を報道した。

この文章ならば、「『注目されている』というのは、グローバルにおいて、なんらかの特徴的なできごととして認知されているのだな」と理解できるだろう。少なくとも国内需要で若者がポテトに群がっているわけではない、と判別がつくはずだ。ここから、サプライチェーン危機の話題や、アフリカの話題が続いたとしても、自然に感じると思う。

今回の課題

それでは今回の課題だ。

【課題013】「いま、〜が注目されている」という文を3つ書き、それぞれを能動態にしつつ、具体性を持った表現で書き換えよう。

繰り返し言っておくが、受動態は決して使ってはいけない表現ではない。ただし、意図的ではなく、無意識的に使ってしまうことには問題があると思う。受け身表現のほとんどが能動態で書き換えられることを知っておき、必要な場面で受動態をわざと使えるようになって欲しい。

本マガジンで紹介した内容の補足説明や、文章術やライターとしてのテクニックについては、Twitterの「MOJIBITO|文章術」(@mojibito)アカウントにて不定期に投稿しています。

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