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「20文字」ぴったり作文のすゝめ【文章術014】

僕のnoteでは、これからライターを目指す人や、新たなスキルを身につけたいビジネスパーソンに向けて、文章力を培うためのポイントを解説し、練習課題を出していく。

今回は、20文字ぴったりでテキストを整える練習を紹介したい。

20文字で書く意味

本マガジンの「文章術003」では、『「40文字」ぴったり作文のすゝめ』として、文字数を整える練習をした。

これは冗長な表現を避け、情報密度を高める訓練だ。実際のライター業務でも、文字数の限られた誌面で、掲載商品のネームを書いたり、図版の説明をするキャプションを書いたりするうえで、必要となるテクニックである。

一方、今回紹介する20文字ぴったり作文では、さらに少ない文字数でテキストをまとめることになる。こちらは、「どういった視点で情報を伝えたいのか」を見極め、その上で適切な表現を選ぶ訓練になる。40文字作文の高難易度版と思って貰ってもよい。

なお、実際の業務では、記事のタイトルや、見出し、アイキャッチなどを考える際に、こうした少ない文字数での書き方が必要になる。たとえは、雑誌の本文見出しなら12文字×2行、商品キャッチなら最大20文字など、ごく限られた文字数で書く必要がある(※当然、媒体や企画、そのページのスペース配分などによって異なる)。

伝えたい側面を切り取る

では、練習として「みそ汁」の作り方のコツを20文字でまとめてみよう。ここでは文は2つに分けても問題ないが、句読点で区切らず、10文字+10文字の2行で表すことにしたい。

まずは伝えたい切り口を決めよう。筆者が思いつくみそ汁のコツは以下の通りだ。

・出汁をとることで味付けを味噌の塩味に頼らないようにする。
・キノコや魚介、海藻、白菜など、旨み成分や甘味が多く出る素材をうまく組み合わせる。
・具材によっては別途下茹で等をしておくことで、スープを煮る時間を短くできる。電子レンジでの加熱を行えば時短になる。
・味噌を溶かしてから沸騰させない場合、味噌に含まれる揮発性の香り成分が飛ばない。
・甘味の少ない味噌を使う場合、多少の砂糖を加えることで、まろやかになる。

ここから、何を見出しにしたらインパクトがあるかを考える。いろんな切り口があるだろうが、オリジナリティで考えると「砂糖を入れる」が面白いのではないだろうか。

甘味の少ない味噌を使う場合、多少の砂糖を加えることで、まろやかになる。

これを10文字+10文字の20文字に整えていこう。「甘味の少ない味噌を使う場合」や「多少の」のように、条件を補足説明する譲歩は、本文内で書けば良いので、省いて問題ない。句読点も省こう。

砂糖を加えることで(9文字)
まろやかになる(7文字)

ここからさらに整えたい。「〜することで」は冗長なので、「加えれば」に変えてみよう。

砂糖を加えれば(7文字)
まろやかになる(7文字)

文字数に余裕ができたので、「砂糖」から始まる唐突感を和らげたい。「隠し味に」のようなニュアンスを加えるのはどうだろうか。

隠し味に砂糖を加えれば(11文字)
まろやかになる(7文字)

良い感じだが、1文字オーバーしてしまった。そこで「に」を「の」に変えて、さらにやや機械的に感じる「を加えれば」を「一杯で」に変えみよう。

隠し味の砂糖一杯で(9文字)
まろやかになる(7文字)

なかなか文字数が合わない。発送を転換して、「スプーン一杯」という単語を入れてみるのはどうだろうか。

スプーン一杯の砂糖で(10文字)
まろやかになる(7文字)

なんとか10文字ぴったりになった。続いて2行目を調整していこう。文字数に余裕があるので、まずは味噌を思わせる単語を入れてみたい。

スプーン一杯の砂糖で(10文字)
味噌がまろやかになる(10文字)

10文字ぴったりにはなったが、まだ改善の余地がありそうだ。文末の「になる」は削れる。「に」だけで、変化のニュアンスは伝えられるだろう。

スプーン一杯の砂糖で(10文字)
味噌がまろやかに(8文字)

空いた文字数で、「味噌」を「みそ汁」に変えておこう。「が」も「は」に変えて、ニュアンスを調整しておく(「みそ汁」よりも「まろやかに」に情報の重きをおく意図だ)。

スプーン一杯の砂糖で(10文字)
みそ汁はまろやかに(9文字)

場面によっては「!」をつけて文字数を合わせるということもできるが、ここでは避けよう。思い切って「まろやかに」を使うのをやめ、「ひと味変わる」にしてみるのはどうだろうか。

スプーン一杯の砂糖で(10文字)
みそ汁はひと味変わる(10文字)

これで20文字ぴったりになった。

では、最後にBefore・Afterを比較してみよう。まず、原稿の構成要素はこうだった↓

・出汁をとることで味付けを味噌の塩味に頼らないようにする。
・キノコや魚介、海藻、白菜など、旨み成分や甘味が多く出る素材をうまく組み合わせる。
・具材によっては別途下茹で等をしておくことで、スープを煮る時間を短くできる。電子レンジでの加熱を行えば時短になる。
・味噌を溶かしてから沸騰させない場合、味噌に含まれる揮発性の香り成分が飛ばない。
・甘味の少ない味噌を使う場合、多少の砂糖を加えることで、まろやかになる。

そして、この内容を代表させた20文字がこちらだ↓

スプーン一杯の砂糖で
みそ汁はひと味変わる

だいぶキャッチーに整ったのではなかろうか。

ちなみに、実際の原稿で書く見出しを書く場合には、ぴったり文字を合わせる必要はなく、「最大20文字」のような指定に変わる。ただし、上記で解説したような作業を頭の中で高速で行っている点は変わらない。

今回の練習課題

では、今回の練習課題を紹介したい。みそ汁の代わりに、「自分の得意なもののコツ」を紹介する流れで同じことをやってみよう。

【課題014】料理やスポーツ、趣味など、自身の得意なテーマを挙げよう。そこから、(1)原稿として書ける構成要素を箇条書きで書き出し、(2)見出しにする切り口を決め、(3)10文字+10文字という20文字ぴったりのテキストに整えてみよう。

文字数が少ない文が簡単、というわけでは決してない。むしろ字数が限られるほど難易度は上がる。課題に取り組む際は、本稿の例で紹介した通り、思い切った方向転換を繰り返すことを想定しつつ、20文字ぴったりを目指してほしい。

本マガジンで紹介した内容の補足説明や、文章術やライターとしてのテクニックについては、Twitterの「MOJIBITO|文章術」(@mojibito)アカウントにて不定期に投稿しています。ぜひフォローよろしくお願いします。

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