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「断定表現を避ける」ときの工夫を考える【文章術051】

僕のnoteでは、これからライターを目指す人や、新たなスキルを身につけたいビジネスパーソンに向けて、文章力を培うためのポイントを解説し、練習課題を出していく。

今回は、どうしても断定表現を避けたいときの書き方の工夫について考えたい。

基本は断定表現が好まれる

大前提として、ライター仕事では、基本的に断定表現が好まれる。「〜らしい」や「〜のようだ」といった表現の数が増えてしまうと、情報の信頼性が無くなり、記事としての説得力も下がってしまうからだ。

そのため、特殊な意図が伴わなければ、わざわざ断定表現を避ける意味はない。

断定を避けたい場面とは

一方で、断定表現を使うと角が立ち過ぎる場面も稀にある。

そのような場面で「〜らしい」「〜のようだ」といった表現がマッチすれば良いが、なんでもかんでも乗り越えられるとは限らない。

たとえば、次のようにオススメの商品を紹介するような文脈では、断定することでPR記事特有の胡散臭さを孕んでしまう。

例A)モバイルバッテリーとしては、この「バッテリーXXX」が最適だ。

また、主語が大き過ぎる表現と、断定表現の相性は、相性が悪い。たとえば、「男性/女性」のような主語と断定表現は組み合わせるべきではない。

例B)男性は、運動能力が高い。

言うまでもなく、上の例文では、運動能力が低い男性や、運動能力が高い女性、あるいは中性的な立場の方など、事実として当てはまらないケースが多過ぎる。配慮を欠く表現として捉えられてしまう可能性が高い。

さらに、書き手の主観を多く含む表現の場合にも注意が必要だ。

例C)ハンバーガーの出前は高い。

この例文の場合、価格が一定ではない可能性があること。人によっては、コストパフォーマンスを鑑みて安いと感じることもあることーーなど、重箱の隅を突きやすい部分があるわけだ。

例A〜Cのように、断定表現を使って書いた文は、一見歯切れの良い文章に思えるかもしれない。しかし、配慮や多角的な視点がない不用意な断定表現によって、本来その文に意図していた機能を損なわれてしまうこともあるのだ。

改善策

では、例A〜Cの改善例を考えてみたい。まず例Aについては、断定表現ではなく。疑問系などを活用してみたい。

例A')モバイルバッテリーとしては、この「バッテリーXXX」が最適ではなかろうか。

このようなオススメ表現では、疑問系を使うことで、「いや、そうは思わない」と否定する選択肢・余地が読者に与えられる。

ほかにも、断言する事象のレベルを下げるというアプローチもある。つまり、「これがベストだから買ってね」という表現を断定するのではなく、「この製品なら検討候補の一つになる」のような表現でに書き換えるわけだ。

これができると、かなり小慣れた印象になる。

例A")モバイルバッテリー選びの際には、この「バッテリーXXX」が有力候補になるだろう。

続いて、例Bについては、主語を修正するアプローチを軸にしつつ、断定する表現をマイルドに変えていこう。

例B')30代の男性に比べ、20代の男性は、運動能力が高い傾向がある。

ポイントは3つ。1つ目は、ファクト(事実)に基づいた表現であるべきであること(※ただし、この例文はフィクションとして書いていて事実確認はしていない)

2つ目は、主語や視点を絞ること。ここでは「男性」という表現を「20代の男性」に変え、「30代の男性と比較した場合」という視点で固定した。

3つ目は断定表現をマイルドにしたこと。「高い」ではなく、「高い傾向がある」にしている。これで、「30代でも20代の男性より運動能力が高い人はいる」という例外に意識を向けている印象が生まれる。


最後に、例Cについては主観であることを明らかにするというアプローチが基本になるだろう。

例C')筆者は、ハンバーガーの出前は高いと感じる。

また、例Bでやったように、主語を狭め、視点を固定するというアプローチも効果的だ。これは断定表現の説得力を活かしやすい。

例C")出前サービスAでは、ハンバーガーの出前を注文すると500円以上の手数料がかかる。ユーザー自身が買いに行く際の時間的コストを検討に入れてもかなり割高だ。

思考を放棄して、何でもかんでも断定表現を使えば良いという書き方は良くない。上述してきたように、「本当に断定すべきか」あるいは「何を断定すべきか」をよく考えて文章を執筆してみて欲しい。

練習課題

【課題051】例A〜Cを、本稿で解説した以外の形で、どのようにリライトできるか考えてみよう。

なお、「断定」と「伝聞」については【文章術032】でも解説した。似たような内容ではあるが、もし興味があれば読み比べてみて欲しい。

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