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文章をやさしくする、「映像化」のテクニックについて【文章術009】

僕のnoteでは、これからライターを目指す人や、新たなスキルを身につけたいビジネスパーソンに向けて、文章力を培うためのポイントを解説し、練習課題を出していく。ぜひチャレンジしてほしい。

今回のテーマは、「文の映像化」についてだ。

視点を意識した書き方

多くの人は文章を読むときに、これまで自身が経験したことをベースに照らし合わせているはずだ。少なくとも僕は、一定の文章を目にしたときに、“経験に基づいたフォーマット”でその映像を頭に現像していることは多い。

例えば、「関東地方は晴れのち曇りでしょう」という文を見た場合に、多くの人はテレビニュースの天気予報コーナーの映像が頭に浮かんでいるはずだ。等圧線が描かれた日本地図の右側に、天気予報士がいて、指し棒を持っているかもしれない。

このような頭の中に自然と浮かぶ映像を、情報の説明に利用しようというのが今回の趣旨だ。うまく映像の中で視点を誘導することで、読者にとってわかりやすい情報に整えやすい。

例えば、店舗取材に基づく原稿ならば、こんな書き出しができる。

東京から西へ、新幹線で2時間ちょっと。「千年の都」とも称される京都へ向かった。上空から眺めると、京都駅周辺の都市構造は、南北・東西に伸びた道が直行する様子から、「碁盤の目」と呼ばれていることをご存知だろう。その碁盤の目を、京都駅から東に向かってまっすぐ進むと、南北に流れる有名な河川「鴨川」にぶつかる。そこから少し北に進むと、古い民家を改装したカフェが多いエリアがあり、観光客に人気のスポットとして知られている。今回は、その鴨川沿いに新しい古民家カフェがオープンしたというので、早速行ってきた。

ここでの想定読者は関東圏に住んでいる土地勘のない人間だ。おそらく「上空から眺めると〜」のあたりから、視点が街の上空へと移動し、頭のなかは俯瞰した映像に切り替わっているのではないだろうか。具体的な空間を意識させることで、文章に膨らみを持たせ、イメージを作り上げやすいようにしてある。

ただし、多少冗長になりがちな表現手法であるし、万が一想定している映像が浮かばなかった人には、一転してわかりづらくもなりかねないというデメリットも理解しておきたい。そのため、多用するのは避け、ここぞという場面でのみ使うのがよい。

実際、先ほどの文をミニマルにするなら以下のようにもできる。

京都駅の北東、鴨川沿いには古民家を改修して活用している商業施設の多いエリアがある。観光客にも人気のスポットだ。今回は新しいカフェができたというので、早速行ってきた。

記事としてどちらの表現が適しているのかは、媒体や企画の戦略・方向性によって変わってくる。

ただし、文に膨らみを持たせ、土地勘のない人にも具体的なイメージを抱かせつつ、スムーズな導入をする手段として、1つめの例文は機能する。必ず使う必要はないが、書ければいつか“武器”になる時はあるだろう。

今回の課題

では、今回の課題を紹介したい。

【課題009】あなたのお気に入りの観光施設について紹介する導入文を、200〜400字程度で書こう。ここでは、その施設がどんな場所にあるのか、を土地勘のない人がイメージできるように地図を俯瞰するような流れを意識しつつ説明するように心がけよう。

文章術としては短く短く書くことを追求するものが多い。もちろん、簡潔に書くことは基本だ。しかし、短い文だけが全てではない。今回紹介したように、敢えて冗長さを活かすことも表現の選択肢として頭に入れておいてほしい。


本マガジンの課題についての補足説明は、Twitterの「MOJIBITO|文章術」(@mojibito)アカウントにて投稿する予定だ。また、サークル機能の「MOJIBITO」にて、添削用の送信フォームも用意するので、本マガジンの課題に本気で取り組む際には、ぜひ活用して欲しい。

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