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「主語」を書き出す筆力トレーニング【文章術008】

僕のnoteでは、これからライターを目指す人や、新たなスキルを身につけたいビジネスパーソンに向けて、文章力を培うための練習課題を出していき、そのポイントを解説していく。

今回は、「良い文」と「ダメな文」を明確に分ける主語のミスについて、解説したい。

主語のミスは絶対NG

ご存知の通り、文には、読んでいて心地よく感じられるものと、しっくりこないものがある。しかし、それらの多くは「文として間違っている」わけではない。文体やリズムが、書き手(あるいは媒体方針)と読み手の間でマッチしていないだけだ。なので、書き手として初心者のうちは、ここにこだわる必要はあまりない。

一方、文には「読んでいて理解できるもの」と「読んでも理解できないもの」もある。この差は書き手にとって致命的だ。なぜならば、後者は文が想定通りに機能していないからである。

このミスを引き起こしやすい要素こそ、何を隠そう「主語」の省略だ。今回は、この問題に対して、簡単な意識づけをしたいと思う。

話が変わるたびに、主語をチェックしよう

そもそも日本語では、何度も同じ主語を繰り返す行為を避けた方が美しいとされるので、述語のみが書かれる文は多い。

例1)最近、近所に新しいコンビニができた。とても便利だ。

この文章では、後半の「とても便利だ」の部分で、「そのコンビニは」が省略されている。これは前半と主語が共通しているから省略可能なパターンだ。省略されている内容を書き出すと次のようになる。

最近、近所に新しいコンビニができた。(そのコンビニは)とても便利だ。

繰り返すとくどくなるので、これは省略するのが正解だ。

一方、よく見かけるミスは、前後で主語が違うのに、主語を省略してしまうというケースである。

もちろん、一人称の省略は不自然ではないことが多いので、間違いとも言い切れないケースもあるが(※このnoteの文章でも探せば該当する部分があるだろう)、精密な文章表現をしたい場合には、この使用法は避けた方がよい。

例2)最近、近所に新しいコンビニができた。しかし、まだ行っていない。

この文では、前半の主語が「新しいコンビニが」であるのに対し、後半の主語は「僕は」である。言いたいことは伝わるが、できれば以下のように書いた方がよいだろう。

最近、近所に新しいコンビニができた。しかし、僕はまだ行っていない。

これを予防する方法は簡単だ。主語が変わったタイミングで、必ず主語を書けばよい。そして、重複するタイミングでのみ、主語を省略すればよい。


文が長くなったら主語を明確にしよう

続いて、2つの文を繋げるときについても考えていこう。文法的な用語で言えば、「重文」や「複文」を作るときなどが該当するだろう。

例3)僕はコンビニでホットストックを購入し、公園のベンチに座って食べた。

例3は、「読点(、)」を挟んで、2つの文が繋がっている構造だ。どちらも、主語が「僕」で一致しているため、後半の主語を省略すべき構造だ。

僕はコンビニのホットストックを購入し、(僕は)公園のベンチに座って食べた。

こうした基本系は簡単なので、「そんなの間違えないよ」思った方も多いだろうが、意外と長文になると主語をすっぽかしてしまう人が多い。例えば、こんな文だ。

例4)昨年のノートPCの販売台数に関して上昇傾向だったが、今年のトレンドは変化した。

この場合は、後半の主語は「今年の状況」だが、前半の主語が良くわからない。書き手が、なんとなく伝わるだろう、と勢いで書いてしまっている状態だ。正しく文を機能させるには、前半の主語を明確にすべきである。

昨年はノートPCの販売台数が増えたものの、今年はトレンドが変化した。

ここでは、「昨年は、」「今年は、」——という「は」を使った対比構造にしつつ、出荷台数=増えた、状況=変わった、という関係性が分かるようにしてみた。

このように、文が長くなると「うっかり主語を忘れてしまう」ことが出てくる。これを予防するためには、書き手は毎回文の主語を明確に意識すべきだ。


今回の課題

では、最後に練習課題を紹介して、今回の〆としたい。

【課題008】まず、今日の日記として、200字〜500字程度の文章を書いてみよう。そして、各文の主語を抜き出してみよう。主語を省略している部分については、どんな主語が隠れているのかを分析しよう。

何かを無意識でできるようになるには、まず意識的に繰り返すトレーニングが必要だ、と僕は思う。本課題を繰り返して、身につくであろう「主語を意識して書く癖」は、必ず文章スキルを向上させてくれる。

本マガジンの課題についての補足説明は、Twitterの「MOJIBITO|文章術」(@mojibito)アカウントにて投稿する予定だ。また、サークル機能の「MOJIBITO」にて、添削用の送信フォームも用意するので、本マガジンの課題に本気で取り組む際には、ぜひ活用して欲しい。

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