自己増幅型RNAワクチンについて

AKIRAです。
本日は、自己増幅型のRNAワクチン、いわゆるレプリコンワクチンについて記述していこうと思います。


本記事の対象者

もし、専門の方が見られている場合を考え、この時点で申し上げておきたいのですが、本記事は一般向けに書いていくことにします。ですので、新情報等はありません。
あくまでも一般の方にレプリコンワクチンの概要を知っていただくための記事になります。

自己増幅型とは

レプリコンワクチンで使われているmRNAは、アルファウイルスのウイルスプロモーターが内蔵されているRNAになります。
本来であれば、RNAを増やすことなどできないのですが、このRNAを増やして増殖する型のウイルスの生活環を利用した技術のようです。

難しいと感じた方は、要はRNAをDNAの代わりに遺伝子として採用しているウイルスのRNAを増やす機構を利用した核酸ワクチンだと思ってください。

どんな利点が?

https://www.science.org/doi/10.1126/scitranslmed.abc9396

↑このリンクに元となった技術の論文が載っています。
これによると、どうも1,2回の接種で防御効果を発揮するための設計を想定したようです。

今までのワクチンでは、何度もブースターを打たないと効果が表れず、打ちすぎることによって抗原原罪(一度記憶させた抗原情報を上書きできなくなる現象)が生じ、オミクロン株に対する抗体の誘導ができなくなるという不完全性を晒しました。
しかし、このレプリコンワクチンはこれ自体がアジュバント(免疫応答を引き起こしやすくする成分)として働くことによって、確実な免疫応答を引き出すことができるそうです。

要旨(論文の内容をかいつまんでまとめた部分)を読む限り、マウスを用いてレプリコンワクチンが中和抗体とT細胞の応答を誘導したことを示したようです。

つまるところ、自己増幅型であれば何度も打つことなくRNAの発現を維持できることから何度も打つ必要がなく、現行のワクチン同様の免疫応答が起こることを言いたかったようです。

以上が、レプリコンワクチン開発の概要ですね。

……え?

いや、ちょっと待てや。
どう考えてもおかしいやろ。

と言われても仕方ない、ということがお分かりになるでしょうか。

一度、整理してみましょう。
そもそもRNAワクチンの問題点は何だったのか?

その1、RNAからコードされたSタンパクそのものが血管障害をはじめとした炎症反応を引き起こすこと。

その2、免疫応答が起こらなかったのは、IgG4抗体の発現レベルが増加したことが影響している可能性があること。

その3、RNA自体がゲノムに対して影響がないことを論理的に説明できていないこと。

その4、ウイルス変異を起こした場合、抗原原罪により中和抗体が誘導されないこと。

その5、当初、mRNAのクリアランスが早急に行われるはずだったのに実際は数週間にわたってRNAが残存している可能性があったこと。

その6、ADEに対しての対策がなされていないこと。

思いつく限りではこんなところでしょうか。一つずつ解説します。

その1、RNAからコードされたSタンパクそのものが血管障害をはじめとした炎症反応を引き起こすこと。

実際に調べてもらったほうが早いのですが、Sタンパクは細胞の表面に作られます。これによって、血管の内膜に存在する血管内皮細胞が構造安定性を失い、そこに炎症性の免疫応答が殺到することで血管炎などを発症するリスクが指摘されています。(ちなみに、最初1回目の接種が日本で始まったときに私も同じことを考えました)

レプリコンワクチンもSタンパクを発現する様式は同じなので同じ運命をたどります。

その2、免疫応答が起こらなかったのは、IgG4抗体の発現レベルが増加したことが影響している可能性があること。

IgG4抗体は、人間の免疫記憶や免疫寛容(自身の抗原などに対して攻撃を仕掛けないように免疫を押さえる機能)にかかわるIgG抗体の一種です。
Scienceの論文だったと思いますが、3回接種後の被験者においてIgG4抗体発現レベルが増加する、という知見が得られています。(論文ありました。やはりScienceでしたね。https://www.science.org/doi/10.1126/sciimmunol.ade2798)いいようにとらえれば、免疫情報を獲得したことで増加したと考えることが出来ますが、それは同時に免疫寛容を引き起こしているとも考えることが出来ます。

この話は、その4につながる話にもなりますが、レプリコンワクチンであっても、RNAを使っている以上は同じ結末をたどることになるでしょう。

その3、RNA自体がゲノムに対して影響がないことを論理的に説明できていないこと。

DNAが含まれていないからゲノムに傷は入らない。
そんなことでゲノムの組み換えが起こるシステムをすべて説明できているというのであれば、それは大きな間違いです

DNAが含まれていれば、そのリスクは大きくなったでしょうが、RNAが含まれている場合でも可能性はゼロにはなりません。
現に、ヒトのゲノムには高度に発現抑制されているレトロウイルス由来の逆転写酵素が存在します。(ヒトゲノム LINE SINEで調べてみてください)mRNA導入によってそれらの遺伝子の発現が増加するデータもあります。(試験管内の実験系ですが)
興味のある方向けに論文のリンクを貼っておきます↓
mdpi.com/1467-3045/44/3/73

逆転写が起これば、RNAからDNAが合成される可能性があります
ゲノムに影響がないから大丈夫?
そんなわけないでしょう。

その4、ウイルス変異を起こした場合、抗原原罪により中和抗体が誘導されないこと。

おそらく、この点が皆さんにとっての最大の疑問になるのでしょうが、話は至極簡単です。
要は、「絶対にテストに出ると言われていた単語を頑張って覚えていたら、別の単語が出題されて手も足も出なくなる」という状況と同じです。

ワクチンで記憶された抗原情報は、ブースターを繰り返すたびにしつこく体に覚えさせられます。そうなると、体は「最初に提示された抗原情報にこだわる」ようになります。
つまり、あとから入ってきた抗原はガン無視ということです。

さらに、ワクチンにはLNPという成分が入っており、これがアジュバントとなって免疫反応を誘発します。つまり、いつまでたっても新規株に対して反応できなくなる、ということになります。
レプリコンでも同様の仕様ですので、同じ結末になることは容易に想像できますね。

その5、当初、mRNAのクリアランスが早急に行われるはずだったのに実際は数週間にわたってRNAが残存している可能性があったこと。

これについては私自身も知らなかった事実ですが、どうもmRNAのクリアランスは非常に悪い、ということです。修飾塩基のせいなのか、細胞の中に残存してしまうそうです。

まあ、まず考える可能性ではありますが、レプリコンも複製前のRNAは同じ性質ですので残存する可能性がありますね

ちなみに、この点に関して検証している論文が一つありました。もし、ご興味があれば一度目を通してみてください。

内容をかいつまんで説明すると、少なくとも2週間は血中を循環し、白血球においてスパイクタンパクを発現する可能性を指摘しているようです。

その6、ADEに対しての対策がなされていないこと。

そして、この可能性。
いつの間にか無視されていますが、誘導された抗体の抗原に対する特異性が低い場合、中和するはずの抗体が逆に感染を助長させてしまうことがあります。これをADEといいます。
以下、コロナウイルスでADEが起こる可能性とそのメカニズムについて記述されている文献です。なお、ここで扱っているコロナウイルスはオミクロン株ではありません↓
https://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(21)00662-0?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0092867421006620%3Fshowall%3Dtrue

言わずもがな、ですね。
抗原原罪が働いてしまう場合、この可能性も無視できません。
何の対策もされていないように見えるのは私だけでしょうか?

まとめ

以上、思いつくだけでもこれだけあります。
専門家の方であれば、もっと思いつかれるのではないでしょうか。

もういい加減にしてほしいものです。


8/30 編集:一部、誤解を招きそうな表現を修正しました。

ちなみに、最初1回目の接種時に私も同じことを考えました

ちなみに、最初1回目の接種が日本で始まったときに私も同じことを考えました

9/1 追加:IgG4抗体増加、逆転写酵素の発現増加、ADEの誘発のそれぞれについて指摘している文献のリンクを載せました。また、目次を追加しました。
    編集:その5について内容を少し修正。

9/7 追加:その3とその4について追記。

9/15  追加と修正:その5の内容において、根拠となる文献を追加しました。また、これに伴い、文章表現を変更しました。


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