mRNAワクチンがスパイク合成を制御できない理由について
AKIRAです。
本日は本気で解説をしようかと。
転写制御
ワクチンに関して。
・IgG4抗体について
→私よりも詳しい方がお話しされていて、論文も出ている。
・逆転写に関して
→論文が出ている。
・ADEに関して
→Cellで論文が出ているうえ、これを問題視している人は多い。
・DNA汚染について
→「量と質の問題」の感覚に慣れていないとどれだけ説明しても理解することは難しい。また、仮にこれが問題となったとしてもRNAワクチンの製造に直接的な問題とはならない。
以上のことから、RNAワクチンの懸念のほとんどのことには結論が出されており、もう後は各事項に該当するデータのNを積み重ねるのみとなっています。
しかしながら、私が以前から懸念しているRNAから作られるスパイクタンパクの制御に関する問題については、明確にされていない、あるいは当たり前すぎて議論の必要すらないのか、話題にならないようです。
そこで、この記事では、一般の方向けにそのあたりの解説をしようかと思いましたので、よろしければお付き合いください。
転写制御の基本
図1はヒトや動物の転写制御を示した図です。
一番左のDNAはヒトの遺伝子であるゲノムを構成している分子で、ここから情報を読み取って、情報のコピー媒体であるRNA(正確にはmRNA)を合成します。これを転写、といいます。
その後、コピーの情報であるmRNAから、機能を持つタンパク質を作るために翻訳という過程を踏んで、ようやく遺伝子は機能するのです。
しかし、このままだと左から右への工程が永遠に繰り返され、際限なくタンパク質を作り続けてしまいます。
そうならないように、人間の細胞にはそれを制御するシステムが備わっています。
それが、図1の「RNAの自己制御」と「タンパク質からDNAへの制御」です。
以前にmiRNAの記事を出したことを覚えていらっしゃいますでしょうか。
このmiRNAによる制御が「RNAの自己制御」に当たります。m(メッセンジャー)RNAに結合する配列をもつmiRNAが翻訳を阻害する話ですね。
一方で、タンパク質がDNAを制御するとはどういうことかという話ですが、実はDNAからRNAへの転写が起こる時には、DNA上のある配列が重要になってきます。これは、たびたび紹介しているプロモーターのことなのですが、このプロモーターは、RNAへの転写を行う酵素が結合する部位です。
タンパク質は、このプロモーターの近くに結合しに行くことで転写を行う酵素の邪魔をします。これによって、転写にブレーキがかかるのです。
このようにして、遺伝子の制御は行われています。
mRNAワクチンのRNAは制御が利かない
では、本題のワクチンRNAの場合について考えてみましょう。
図2は、図1をもとにして、ワクチン成分のmRNAがどのような制御をするかを示した図になります。
前提として、ワクチンのmRNAがコードしているタンパク質はヒトのゲノム上には存在しない遺伝子なので、DNAはありません。
よって、ワクチンmRNAについては、転写活性を持たないことになります。
重要なのは、このmRNAがあくまでもヒトや動物などの生物が採用していない修飾塩基を用いたmodRNAであることで、RNAによる自己制御が利かなくなるということです。よって、RNAを処分するには、もはや細胞自身が細胞死を誘発するか、RNAそのものが寿命で自己分解するしかありません。
そして、スパイクタンパクのDNA配列はゲノム上に存在しないため、スパイクタンパクからゲノムに発現制御がかかることもないです。
以上のことから、modRNA→スパイクの翻訳過程が永遠に繰り返される構造が出来上がります。
以上、解説でした
単純明快にして、簡潔。そして、教科書的な知識のみで解説しています。
生命科学の大学で学部生が勉強するレベルですかね。
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