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「HAKUTO 月面を走れ」を読んで


  先ごろ、アストロスケールホールディングス株式会社が、東京証券取引所に株式公開した(グロース市場)。あぁ、こんな会社があるんだ、と思い、少し「宇宙」が気になった。

 いわゆる宇宙関連事業は、三菱重工業や三菱電機、SUBARUなど、日本の重厚長大産業の大手企業が、国策と共に手掛けている。 
そんな印象だったけど、最近では、ispaceやQPS研究所等々の、「宇宙」一本の元気なベンチャー企業も出てきた。アストロ社もそのひとつ。
いや、きっともっといろいろあるんだろう。

 ともかく、「宇宙」 何だか夢がある。

  そこで読んでみたのが、袴田武史著「HAKUTO 月面を走れ」(発行所:祥伝社)。著者は、株式会社ispaceの代表取締役CEO。

  本書は、2018年発行で少し古い。けど、著者の夢いっぱいの若々しさが伝わってくる。

宇宙開発は、民間主導の時代、らしい

 「スター・ウォーズ」に憧れ、「レゴ」で宇宙船のようなものをつくったり、お絵かきで宇宙船を描いてた子どもたちの中から、ホントに宇宙工学に進み、ロボット、ロケット開発に関わる人々がいる。著者もその一人。

 著者の躍進の契機は、XPRIZE財団が主催した「Google Lunar XPRIZE」コンテストでの中間賞受賞。このコンテストは、グーグルがスポンサーとなって莫大な予算を使い、民間による最初の月面無人探査を競うもので、2007年から2018年にかけて開催された。
本書の前半部分は、このコンテストを軸に、宇宙開発に携わっていく話。

 面白かったのは、国等の支援を頼りつつも、民間主導で進めていること。
どうやら宇宙開発は、個々の企業(経営者等々)の自由な発想や行動力が原点になるらしく、そうなると、自由に、迅速に行動出来る民間主導の取り組みの方が進め易い。当然、先の読めない分野に莫大な国家予算が付くはずもなく、民間資金が重要になっていく。

 何せ、宇宙は、その大きさすらわかっていない、徒手空拳の世界。
素人には、先行き不透明中での事業開発は困難を極める(斯界有識者は、そんなことはない、と言いそうだが)。

 ともかくも、先の見通せない世界を突き進むには、「揺るがない情熱と膨大な知見、そして、資金」が必要。
特に資金調達は、大変なんだろうな。それは、想像できる。
特に赤字国債依存の日本が、莫大な宇宙開発予算を、民間企業に付与するわけもない。当然のように、民間の企業や団体の寄付や出資に頼るほかない。

 ただ、民間企業や団体だって、何某かの思惑もあるだろうから、軍事利用にならないような注意は必要だろう。「タダより高いモノはない」というから。

地球外生物は、いる。はず!

 138億年前に私たちの住む宇宙ができたそうだ。地球は46億年前に出来た。 その宇宙の中に、地球を含む銀河系があり、その直系は約10万光年。つまり、端っこの光や音が、中心を通って反対の端に行くまで10万年かかる計算・・・
 それだけでも驚きなのに、私たちの住む宇宙のような空間は、「10の500乗」ほどあるそうで、もう、想像もつかない。

 この壮大な宇宙から見れば、人なんて些細な存在で、人類そのものですら刹那的な存在なのかも知れない。
そして、これだけ広いのだから、どこかに人間のような、少なくとも原始的な生物はいるはず。ただ、その生物を見るのも、聞くのも、途方もない年月がかかるので、出会った頃には、もう無くなっているかも知れない。

そりゃぁ、出会うはずもない。
でも、何かの偶然で生物が誕生したように、地球外生物に出会うチャンスがないわけでもない。宝くじよりも低い確率だろうけど。

成功を夢見て

 アストロスケールに先立ち、著者がCEOを務める株式会社ispaceは、2023年4月にグロース市場に上場した。
上場直後には、ロケットを打ち上げ、民間企業として初の月面着陸に挑んだようで、勇猛果敢。

 残念ながら月面着陸は失敗し、株価は乱高下・・・
でも、たぶん、大丈夫。

 先ほど、同社のニュースリリースを見たら、「ミッション2にて・・・(中略)・・・月面探査ミッションに向けた重要な開発マイルストーンを達成」等々が報じられてた。 失敗は、大きな成功のためのお試し。

 本書に示されてる著者の情熱と、ispaceの仲間たちがいれば、いつか大成功するはず。

                                                                                                         (敬称略)

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