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「ゲームチェンジ日本」を読んで

 少し前に、真壁昭夫著「ゲームチェンジ日本」(発行所:エムディエヌコーポレーション)を読んだ。

 むかし、村上龍がジャパン・メール・メディア(JMM:現在は休刊)を発行していた時の常連筆者の一人。当時は信州大学の先生をやっていたと思うのだけど、鋭い切り口で、なるほど、と思う事ばかり。でも、長文だったので、メールをプリントアウトして熟読してた。

ゲームチェンジ

 ビジネスの世界で使われるゲームチェンジは、既往のビジネス市場そのものが機能しなくなるような、新しい枠組みでビジネスを展開すること。

既存のビジネスルールや市場を根本的に変えるような革新的な出来事やアイデアのことを指す。 これは新しい製品、サービス、テクノロジー、または新たな市場戦略などを含む。

出所:日経ビジネス

 小さな会社を立ち上げ、いつも大きな会社と競争する時、「規模の違い」等でハンディを負ってたので、ゲームチェンジに憧れてた。だけど、そう簡単にできることじゃない。
 本書によると、コロナ感染もゲームチェンジの契機と捉えていた。
 ヒトとヒトの接触による感染回避のために、「紙にプリントアウト」とか「対面対応」が、官民の至る所で減った。紙至上主義を見直してみれば、電子化による効率化に改めて気づき、ようやく、ハンコ文化も無くなっていきそう。

時代の変化に取り残された日本

 そのうち、何とかなる。「石の上にも三年」というじゃないか。
まぁ、しばらく辛抱して頑張ろう。
 なんてことは、今時代、単なる問題の先送りでしかない。
 けど、昭和の時代は、右肩上がりの経済成長を背景にしてたので、「待てば、そのうち良くなる」という理屈も成り立っていた。
 暗黒の30年を経た今は、待った処で、大概が何も変わらない。むしろ、悪化していくだけ。 何も期待出来ない30年でもあった。 
 本書では、「保守性バイアス」とか「アンカリング」などの経済分野にも応用される心理学用語を駆使して解説していて、わかり易くて腑に落ちた。
 だけど、ある時気付いたことがある。
 皆で良くなることは出来ない。 業界全体は重く停滞してるけど、そんな中でも創意工夫すれば、少しは良くなる人も会社もある。
 特に私がつくったような小さな会社なんて、工夫次第で何とでもなる!
 何をやっても大きな会社には敵わないけど、小さな市場でスピーディにニッチ戦術を繰り返していれば、大きな会社は入って来れない。そうやって小さな成功を重ねていって実力を付けるようにした。
 「自分だけの道を、自分たちらしく、切り拓くこと」こそが唯一の正解。 
 そうやって自分流の道を進む会社が増えていけば、日本は再興出来る。

脱炭素は本物か

 この分野は、結構、難しい。
20年以上、取り組んできたけど、上手くいかなかった。

 そもそもの「地球温暖化」の原因は、科学的に証明されたわけじゃない。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が言ってることだって、「科学的根拠を確定することが出来ず、多くの科学者が言っているので確からしい」ってことになってる。
 最初に見た時は「?」がいくつも付いた。

 日銀の短観(全国企業短期経済観測調査)と同じ! でも、短観だって、第一線で働いている人達の直観をアンケート調査したものだけど、結構、当たってる。実相を反映しているというか・・・

 IPCCの報告書もそんな類。 

 なるほど。 でも、いいのか?

 出発点がはっきりしないけど、とりあえず脱炭素化を進めよう。迷っている暇がないので。
 ・・・これじゃぁ、世界中を動かすのには、時間がかかるわけだ。

 たぶん、もっと深刻な事態になっていれば、迅速に脱炭素化は進んだだろう。 コロナ感染下の時の新薬開発のように。

  それでも、日本では春と秋が短くなって、猛暑と極寒で各地に被害をもたらしている。世界でも森林火災が渇水など甚大な被害が出始め、南極の巨大氷山が溶け出し、海面上昇の危機が深刻化しており、気候変動の影響が顕在化してきたので、切実に事態が起こり始めてる。

 地球の温暖化は間違いなく進んでいる。待ったなし。

 地球温暖化の原因物質の一つは二酸化炭素。それは、ガソリンを燃やし、電気をつくり・・・と人間がつくり出してる。いやいや80億人分の吐息だって。

 単純なロジックで、IPCCは30年も前から、大変だぁ、と叫んできた。

 ようやく、世界が気候変動に目を向け、取り組み始めた感がある。
 このゲームチェンジは、どうなるんだろうか。 

今を知る教科書

 本書は、戦後の経済復興から今日までを概括しながら、先読みしている。「おわりに」に記された日付は2010年10月。なので、その前に書かれた本。

 末尾に記されたTSMCの工場は日本の熊本に誘致され、つい先ごろ第一工場が開業。第二工場も建設されるそうで、周辺で半導体関連の事業開発が進んで、今は、プチ半導体ブームですらある。

  本書で示された「EV」も、確かに自動車業界に激震が走っている。ガソリン車で世界NO1の座をトヨタに奪われた欧米各社が考え、編み出したのがEVだ。追撃されるトヨタはPHVを推しているけど、そこは多勢に無勢。そこまでが本書の時代だけど、最近の欧州自動車メーカーは、EVにすると電気使用量が激増して大変なことになると分かって、少し路線変更も始まっているようだ。そりゃそうだ。中東の巨大資本がガソリン車の応援団になり始めている。

 本書は、時代の姿をしっかりと映し出しているので、現在と対比しながら読むと余計に面白くなる。とにかく、勉強になりました。

                             (敬称略)

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