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「ブレイク」を読んで

 真山仁の新書「ブレイク」(発行所:㈱KADOKAWA)が、書店で平積みされてたので飛びついた。

 舞台設定が、どこかで見たことがあるなぁ、と思ってたら、10年前に読んだ著者の「マグマ」(出版社:角川文庫)の後継本だった。

地熱発電

 以前、環境分野の仕事をやっていた頃、再生可能エネルギーと言えば、太陽光発電と風力発電の二択だった。
ホントは、ずっと昔から利用してきた水力発電こそ、再生可能エネルギーの雄。 何より水力発電は、お日様任せ風任せに比べ、昼夜を問わずに安定的に発電出来る利点がある。日本のように水資源が豊富な国では有用なエネルギー源。けど、水力発電はある程度行き渡っていて、当たり前の地味な存在。 お日様や風の方が華やかで“再生感”があった。ヘンな話だけど。

 地熱発電だって、立派な再生可能エネルギー。
だけど、地熱のコントロールは難しく、ほとんど開発されてなかった。温泉組合との相性も良くない感じ。結局、費用対効果が低くなってしまい、商用化出来ないところが多かった。 
 民間シンクタンクの環境エネルギー政策研究所の調査によると、2022年政府速報に基づく日本の電源構成の中で、地熱は僅か0.2%しかない。世間的な関心も低くなるはず。

 地熱発電は、地中深くのマグマで暖められた水(蒸気)を使う。CO2排出量は少ないし、水力発電のように常時、供給できる。けど、地中深くの水(蒸気)のある場所を探すのが難しく、お金が係るのが難点。その上、似たようなところで温泉が出るので、事業者等々による反対も多いのが実情。まぁ、ちょっと厄介な再生可能エネルギーということで重用されてこなかった。

 だからこそ、著者が「面白さ」を見出したのかも知れないな。

 本書では、普通の地熱発電じゃなく、「超臨界地熱発電」。何だか、劇画チックで画期的な技術のようだけど、内閣府が2016年に発表した「エネルギー・環境イノベーション戦略」の中でも、次世代地熱発電の一つの要素技術として取り上げられている。
 実情化、汎用化には、少しは時間がかかるのだろうけど、火山大国日本にとって、地熱の有効利用は考えていくべきものかのかも知れない。

エネルギー大量消費時代

 EV自動車の普及で、「ガソリンが悪で、電力が善」のような風潮が生まれてる。
確かにクルマの事だけ考えたら、そうかも知れない。 けど、電気をつくるには、火力や原子力なんかを使った発電が主流になってるし、クルマの部品製造の工程や、組み立て加工や流通過程では、いろんなエネルギーを使っている。 何がベストなんだろうか。

 可能ならば、クルマなんて使わないのがイイ。特に都市部なら、バスも電車もたくさんあるんだから。
けど、地方はそういう訳にいかない。広域分散してるので、クルマがないと生活が大変。まして高齢者にとっては。それは九州に移住してみて実感。 自転車生活にしようかとも思ったけど、関東平野のように平坦じゃない。
坂道で苦労する。関東平野は、ホントに広い大地だ。

 人間社会生活を維持するには、電力がガスが不可欠。
産業革命期ですら、世界の人口は20億人にも満たなかったよう。それが、今や80億人。これだけ大勢の人が生活する社会では、大量の電気やガスが必要。デジタル化が進むことで、なおさらエネルギーを必要とする時代になってしまっている。
けど、今更、スマホやPCのない生活には戻れないし、AIなんてものも必須になっていくのだろう。 これって、破滅の序章なんだろうか・・・

 どう考えてみても、エネルギー不足に陥る。

 そんな事を考え始めると、やっぱり、「再生可能エネルギー」を上手に使う工夫が大事で、日本で言えば、地熱発電だって、問題の解決策のひとつ。そう思って、本書を読んでみるのも面白い。
                             (敬称略)


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