モロッコ旅行記 3月21日

3月21日

朝の仕事を終えて、M君がトレッキングへ行っている間にフランス語をひさしぶりに勉強する。
ようやく暇な時間の使い方を分かりかけたところで予約のメールと電話が入る。少人数ではあるけれど、これで四日間は常にお客さんがいることになる。
宿の前の植木に水をやる。私の分かる植物は、ひまわりとサボテンだけだ。他は名を知らない。名を知れただけでも、たかが水をや
ることにも情が注げるだろう。
日本を離れた先で、緑に水をやる毎朝、それが妙ではある。けれども、その言葉なく行われる水やりに心が安らぐ。言葉が不要のためか。名を知れれば、一層に温かな心持になれるだろうに。
薄暗がりのひんやりとする宿の中に、色硝子の緑色を透って陽光がやわらげに差している。
夕方、Kさん一名が来泊。食事の心配を露骨にされてムッとするも、まぁみんな典子さんの料理を期待してのことなのだから仕方ない。今までの人もきっと不安で仕方なかったに違いなく、「美味しかった」と言ってはくれるものの、本心のことを気にしてしまえばキリがない。淡々と業務をこなす。
Kさんはよく喋る人で厄介だ。けれども、まずければまずいと言ってくれるだろうから、それは有難いことだ。
メルズーガからフェズ、あるいはメクネスまでの旅程を相談され、Kさんが散歩へ行っているあいだに調べる。
昨日から寒波がやってきていて冷える。Nさん家族やM君は何事もなく沙漠を楽しめるかしら。
夕飯にはハンバーグをつくる。Kさんと一緒に食べる。母と同じくらいの年で、年に一度、三週から一月の旅行をしているという。
自分でも笑い上戸と言っていたけれど本当によく笑ってよく喋る。そうしてアグレッシブだ。マラケシュ行きの列車で知り合ったモロッコ女性と仲良くなって、その人の家で寝泊まりしたという。アガディールでは現地の女子大生二人と仲良くなって遊んだという。
元気だ。
第一印象は面倒くさそうだと思ったけれど、そんなものは当てにならないことを知る。一時間以上喋っていた。
それから一人でテラスで缶ビールを飲む。
午前にフランス語、それから日記、ピックアップや買い出しをして夕食。一人の時間をつ
くるには午前中が一番だ。

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