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UIデザインのためのブックリスト(2020, 追記あり)

UXや認知科学のブックリストはおかげさまでかなり読まれていますが、そういえば「UIデザイン」のリストは作ってなかったなと思い至って本を探し始めました。手元の本を並べてみると該当する本はあまり多くなくて、関連する周辺の分野のものにも対象を広げることにしました。UIデザインと周辺分野との境界はハッキリと分かれるわけではないので、自分が作った他のブックリストとの重複があります。また、分野の明確な線引きはしていませんのでご了承ください。

UI(ユーザー・インタフェース)が関わる分野はかなり広いのですが、このリストでは主に、比較的新しい(と言ってもiPhone発表から10年以上経ちますが)「スマートフォン・アプリのUIデザイン」を念頭において選んでいます。パソコンのソフトウェアや情報システム、ウェブ(情報設計やウェブ・ユーザビリティーを含む)のインタフェース・デザインについては、すでに世の中に知見やブックリストがいろいろあるのでそれらをご覧ください。また、次々と新しいものが出てくるプロトタイピング・ツールの解説書などはリストに入れていません。
なお、新しいテクノロジーやOSのバージョンアップなどによる変化の影響を大きく受ける分野ですので、購読の際は念のため本の出版年にもご注意ください。(もちろん古い本だからダメと言うことはありませんが、事例はどうしても経年の影響を受けてしまいます。)

(関連分野であるUXについてのブックリストはこちら、認知科学のブックリストはこちらからどうぞ。)

UIデザイン

「まず何を読めばいいですか?」と入門書を聞かれると、最近はこの本を推薦しています。名前の通りはじめてUIデザインを学ぶ人のために、基本的な考え方から、ビジュアル、情報設計、制作プロセスや運用まで、必要な事柄がていねいに解説されています。著者はみな、この分野の第一線で活躍するプロフェッショナルというぜいたくな本です。
学生ほかUIデザインの初学者は、機能ごとにメニューやボタンをレイアウトした画面を描いて並べ、それで「UIをデザインした」と思いがちですが、目に見えている「画面」はUIデザインの表層に過ぎません。既存のアプリのコピーや自己流のデザイン方法ではなく、プロの考え方やデザイン・プロセスをきちんと学んで知ることがだいじですね。

はじめてのUIデザイン

2021.3.16 価格改定 2,500円→100円

以下のリンクからEPUBファイルを無料配布(転載や二次配布、販売は禁止)

こちらの本も基本となる事柄が解説されています。2013年刊なのでOSに関わらずデザインの基本を知るために読むとよいでしょう。

スマートフォンのためのUIデザイン

[追記]2022年に新しく出た本を追加します。入門書として書かれています。

UIデザイン必携(2022.4.13発売)

[追記]Figmaを使ったUIデザインの本が出ました。

Figma for UIデザイン アプリ開発のためのデザイン、プロトタイプ、ハンドオフ Kindle版のみ(2022.6.10発売)

次は上級者向けです。オブジェクト指向というソフトウェア設計で用いられている考え方を元にして、UIデザインの原理や方法を学ぶことができます。スマホアプリは「ソフトウェア」ですので、ウェブサイトのマークアップとは違うソフトウェア設計の考え方やとらえ方も必要になります。

オブジェクト指向UIデザインー使いやすいソフトウェアの原理

関連:解題インタビュー:「オブジェクト指向デザインの道具論」上野学

[追記]中級〜上級者向けの実践的な本が出ました(2023年4月)
「WEB+DB PRESS」での連載を元に加筆修正されたもののです。

縁の下のUIデザイン─小さな工夫で大きな効果をもたらす実践TIPS&テクニック

人間の認知 と デザイン

UIデザインの目的は、わかりやすく使いやすいデザインを実現することです。定番中の定番ですがこの本を紹介しないわけにはいきません。有名な本ですね。デジタルの事例は少ないですが人間の理解についてを知らないままこの分野のデザインはできません。

誰のためのデザイン?増補・改訂版ー認知科学者のデザイン原論

最近の本から1冊紹介します。こちらもとてもよい本です。工業デザインの歴史から現在のユーザー・エクスペリエンスに至るまでの系譜がわかります。はじめはモノのデザインの話ですが、第四章の自動運転車(テスラ)の話が出てくるあたりからデジタルプロダクトの事例が増えてきます。IDEOやアップルによるUIデザイン、ディズニーワールドのUXの話などを経て、facebookの「いいね」ボタンを例に中毒性のあるデザインについて倫理観を問う議論など、とても濃い内容です。

「ユーザーフレンドリー」全史 世界と人間を変えてきた「使いやすいモノ」の法則

人間の認知についての専門書です。ここでは入門編の1冊のみ。詳しいリストはこちらからどうぞ。

心を動かすデザインの秘密 認知心理学から見る新しいデザイン学

ちなみに、この本の一部を教科書として使った講義科目「認知科学」(2020)の講義ノートがこちらにあります。ご興味あればどうぞ。

UIデザインの事例

事例を集めた本です。OSのバージョンアップやトレンドなどの最新情報はネットで集めた方がよいと思いますが、分類や整理の視点を知るにはこのようなまとめが役に立ちます。

【新版】UI GRAPHICS 成功事例と思想から学ぶ、これからのインターフェイスデザインとUX

モバイルデザインパターン 第2版-ユーザーインターフェースのためのパターン集

インタラクションデザイン

アプリを操作したときのフィードバックは何が起きているのかをユーザーに正しく伝えるためには重要です。インタラクションの質は操作感に大きく影響します。画面遷移の設計と同様に、細部のインタラクション(アクション-リアクション)のデザインも重要です。

マイクロインタラクション-UI/UXデザインの神が宿る細部

2008年刊(日本語版)の本です。原書が出た2007年に初代iPhoneが発売されました。事例は情報システムやウェブサイトですが、基本的な考え方などいまでも色あせておらず参考になる点が多いです。この時点ですでに サービスのデザインに言及しています(Chapter 8)。著者はDan Saffer,監訳はソシオメディア。

インタラクションデザインの教科書(※新版あり)

[追記]上記の本の原著第二版(2010年刊)の翻訳が出ました。

The Elements of User Experience ~5段階モデルで考えるUXデザイン(2022.5.25発売)

プロトタイピング

紙などを使ったラピッドプロトタイピングを中心に解説していますので、プロトタイピングの基本を理解するのに良いでしょう。様々なプロトタイピングツールの登場でUIデザインの検討やユーザーテストが簡単にできるようになりましたが、ツールがデザインするわけではありません。紙で検討するのかツールで具体化するのか、目的に合わせたプロトタイピングを実践しましょう。
余談ですが、いずれUIデザインでもAdobe SENSEIのようなAIによるデザイン支援が行われるようになるかもしれません。そうなったらプロトタイピングの意味や質も変わるのでしょうか?

プロトタイピング実践ガイド スマホアプリの効率的なデザイン手法

ユーザーインタビュー,デザインリサーチ

適切なUIをデザインするためには、ユーザーの声を聞きそれをアプリの仕様やデザインに反映させることが必要です。プロトタイプによるユーザーテストの際にも同様に、ユーザーの意見を聞き取るスキルが必要になります。インタビューの本を2冊紹介します。

マーケティング/商品企画のためのユーザインタビューの教科書(※改訂版あり)

[追記]上記の本の改訂版が出ました。

ユーザーインタビューのやさしい教科書(2021.9.24発売)

マーケティング・インタビューのプロ モデレーター聞き出す技術

そして、まだ出版前で手元にはありませんがデザインリサーチの本が出ますのでフライングで紹介してみます。(2020.11.4現在)
著者の木浦さんのnoteはこちら

デザインリサーチの教科書

新しく出たユーザーインタビューの本を追加します。(2021.4.18追加)

ユーザーの「心の声」を聴く技術 ユーザー調査に潜む50の落とし穴とその対策

UXリサーチの本を追加します。(2021.8.21追加)
著者のおふたりは株式会社メルペイのUXリサーチャーです。松園さんのnoteはこちら

はじめてのUXリサーチ ユーザーとともに価値あるサービスを作り続けるために

IoTのUI,ボイスUI

スマホやPC画面によるインタフェース(UI)からの脱却を説いています。センサー等が様々な情報を集め、ユーザーにとって不要な画面や操作がなくなっていく世界、IoTの時代にUIはどうなっていくのかを考えていきます。

さよなら、インタフェース-脱「画面」の思考法

次はボイスUI(VUI)の本です。日本語版特別寄稿1として「サービスから考えるVUIのデザイン」吉橋昭夫・川本大功」を執筆しています。「オッケー グーグル」「アレクサ!」と呼びかけるのが日課になった時代のボイス・ユーザー・インタフェース(VUI)のデザインについて。

デザイニング・ボイスユーザーインターフェース-音声で対話するサービスのためのデザイン原則

2021年1月にVUIの良い本がでましたので追加します。

音声UX 〜ことばをデザインするための111の法則

その他 関連するもの

関連する分野から1冊ずつ紹介します。
まずはデザインシステムの本です。単体のデザインではなく、パターン、モジュール、デザインランゲージなどを規定していき、デザインシステムを構成していきます。本はウェブサイトを事例にしているのでスマホアプリにはそのまますぐには適用できません。ネット上に様々な知見がありますので、詳しく知りたい方は検索してみてください。

Design Systems-デジタルプロダクトのためのデザインシステム実践ガイド

次はデザインの倫理やリスクマネジメントについて。もちろんスマホアプリに限りませんが、これだけ長時間に渡ってスマホ画面見続ける(使い続ける)生活が日常になると、その影響を考慮せずにデザインするのはさすがに無責任でしょう。やや刺激的なタイトルではありますが、きちんと考えたいことです。

悲劇的なデザイン-あなたのデザインが誰かを傷つけたかもしれないと考えたことはありますか?

行動経済学の視点でデザインを考える本です。ユーザーに行動変容を促すためにどのようなことが有効なのか、がわかります。著者も述べていますが、くれぐれも悪用せずに社会を良くする方向で使いましょう。倫理感が求められますね。
(注:書名のサブタイトル「プロダクト」デザインは「デジタルプロダクト」を指しています)

行動を変えるデザイン-心理学と行動経済学をプロダクトデザインに活用する

こちらもアプリに限ったことではありませんが、デザイン手法として有名になったデザインスプリントの関連から1冊。これが正解とか万能だとか言うつもりはまったくなく、アプリのようなデジタルプロダクト開発のための特徴的な手法として紹介しておきます。(Sprint の本は他にもいくつか出ていますしネット上にもリソースがあります。)

デザインスプリント-プロダクトを成功に導く短期集中実践ガイド

テクノロジーとともに

テクノロジーについての考え方や姿勢、態度は、UIデザインの設計思想に通ずるものがあります。徹底してシンプルにと説くのはジョン前田、ノーマンは複雑さと共にと言います。答えはひとつではないと思いますが考えるきっかけとして。

シンプリシティの法則

複雑さと共に暮らす-デザインの挑戦

おわりに

UIデザインの実務的な本から思想や考え方に関するものまでまとめてみました。初めにも書いた通り、隣接する分野とはっきり分けられるわけではありませんので、広めの視野で眺めてみることをおすすめします。
すでにうっすらと見えつつあるスマホの「次」の時代には、UIデザインの主流もまたテクノロジーやデバイスと共に変わっていくのでしょう。その一方で、時代を越えて変わらない考え方や知識もあります。ひとはそう簡単に変われません。

2021年にはまた違う知識や理論、スキルが必要になるかもしれないなぁと思いつつ。(だいたい書きたいことは書いたのでひとまずこれにて。 2020.11.5)

[追記]退職のため、上記のページ名称とURLが変わりました。(2022.4.1)

参考:

とてもよい記事が出たので紹介します(2020.12.4)
引用:「UIデザインとは絵を描くことではなく、ソフトウェアを作ること」
Goodpatch新卒UIデザイン研修の設計—ソフトウェアデザイン概論と基礎理論—

更新履歴:
2020.11.4 公開[更新中]
2020.11.5 公開
2020.11.11 ユーザーフレンドリー全史 説明一部追記
2020.11.17 オブジェクト指向UIデザイン 関連記事 リンク追加
2020.12.4    ソフトウェアデザイン概論と基礎理論 関連記事 リンク追記
2021.1.25 音声UX を追加
2021.3.16 はじめてのUIデザイン の価格改定、EPUBファイルの無料配布を反映2021.4.18 ユーザーの「心の声」を聴く技術 を追加
2021.8.21 はじめてのUXリサーチ を追加
2021.12.6 関連:講演「OOUI のデザイン思想」上野学 を追加
2022.6.10 UIデザイン必携、The Elements of User Experience、ユーザーインタビューのやさしい教科書 を追加、「認知科学」の講義ノート、吉橋ゼミのリンクを修正
2022.6.15 Figma for UIデザイン を追加。
2023.5.12 縁の下のUIデザイン を追加。リンク切れの動画を削除。


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