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サービスデザインゼミ 卒業研究制作の紹介(2020年度)

昨年に続いて今年も紹介します。2020年度 多摩美術大学情報デザインコース 卒業研究制作より、サービスデザインゼミ4年生の卒業制作です。2020年度は学部4年生9名と大学院生1名(M1)のゼミでした。ゼミでは、幅広くサービスやUIUXを扱うこととし、テーマは学生たちが自分で選んでいます。特にデジタルサービスに限定しているわけではありません。また、いくつか載せた「サービスエコシステムマップ」は、学生と教員(私)とで時間をかけて議論しながら、持続可能なサービス提供のかたちを検討したものです(具体的な数字を伴う事業プランは検討していません)。では学生の作品を紹介していきます。なお、写真は作品の一部です。(順不同)


▶ nuance,  部屋の中でのシーンや気持ちの切り替えを選りすぐりの香りでサポートするサービス,石塚美晴

アロマカートリッジのサブスクリプションと組み合わせて香りのある生活を提案するサービスです。調香できるアロマディフューザー(ハードウェア)と専用のスマホアプリのプロトタイプをデザインしました。
本体には7本(7種)のアロマカートリッジが収納されます。アプリで調香した香りをタスクやシーンに合わせて楽しむことができ、憧れのブランドやインフルエンサーの調香レシピを手に入れたり友人とレシピをシェアすることも可能です。

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参考文献:「ビジネスモデル 2.0 図鑑」近藤哲朗 著,中経出版
(サービスエコシステムマップの一部に「ビジネスモデル 2.0 図鑑」のツールキットを使用しています)

卒業制作優秀作品集2021:

▶︎ 認知症予防のガイドラインのデザイン,望月ひかる

WHOが2019年5月に発表したガイドライン「認知機能低下および認知症のリスク低減」を取り上げ、一般のひとにも関心をもってもらえるよう情報の一部をビジュアルを用いてわかりやすく表現しました。ガイドラインでは、主に生活習慣を整えることで、認知症のリスクを下げることができ体の健康が脳の健康にも繋がっているということを示しています。その部分を中心に視覚化しました。(パネル展示)

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参考資料・参考文献:
アルコールと認知症,生活習慣病予防のための健康情報サイト 厚生労働省
  
認知症予防・支援マニュアル(改訂版),厚生労働省 「認知症予防・支援マニュアル」分担研究班
「僕はやっと認知症のことがわかった」長谷川和夫・猪熊律子 著,KADOKAWA

▶︎ ぜん息で通院する人が健康状態を記録して自己管理をするための手帳のデザイン,吉岡涼夏

喘息の患者が自身の体調を記録して把握するための紙の手帳と、そのスマホアプリ版を提案しました。ぜん息手帳には、数値をグラフとして見やすく記録するページや、服薬の際に気をつけることなど情報の一覧ページをデザインしました。スマホアプリは簡単に記録できるUIとしました。また、電子式のピークフロー(息の速さ)計測機器との同期を想定しています。

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参考資料:大気環境・ぜん息などの情報館,独立行政法人環境再生保全機構

▶︎ magmo ファッション雑誌の好きなページをクリップできるアプリ,岩井七海

ファッション雑誌をさらに楽しめるようにしたいと思いから、雑誌のお気に入りのコンテンツをコレクションして他の人と共有できるスマホアプリを企画しました。著作権の問題をクリアするため出版社と提携して運用することを想定しています。

岩井new

▶︎ dear. 思い出を身につけるためのサービス,鵜澤美里

記念日の花束に込められた特別な気持ちや思い出を美しく、より大切なものとして残すためのサービスです。記念日に贈られた花束をアクセサリーに加工して永く身に付けることができます。贈られた花束をアプリのガイドにしたがってドライフラワーに加工したのち、好みのアクセサリーにすることができます。サービスの仕組みをデザインし、花束の花を加工したアクセサリー、パッケージ、加工サービスのためのスマホアプリ(プロトタイプ)を制作しました。    

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▶︎友達と再会するきっかけを提供するアプリ,大川祐里菜

高校を卒業後、地元を離れて暮らす大学生や社会人を対象にしたサービス提案です。疎遠になりがちな地元の友人たちと再会したり集まったりする「きっかけづくり」をサポートするためのアプリをデザインしました。過去に友達と撮影した写真の投稿に場所や日時をタグ付けすることで会話が盛り上がり、友人と会いたくなる仕組みを考えました。

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▶︎ ワン防災 愛犬と飼い主さんのための防災情報アプリ,木谷彩乃

災害時にペットといっしょに避難するために必要な防災情報を飼い主に提供するサービスです。災害に備えるためのスマホアプリと、サービス提供の仕組みをデザインしました。アプリでは、平常時にはペットとの防災の知識や発災時にとるべき行動、防災対策を学ぶことができ、被災時の体験談を知ることができます。災害時には防災情報や避難情報などを一括で受け取れます。

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参考サイト・参考文献:
東京都防災ホームページ人とペットの防災ガイドライン,環境省自然環境局
ドコノコ,株式会社ほぼ日
「犬連れ災害対策マニュアル」株式会社枻出版社

▶︎ すぐに絵本が読めるアプリ,島貫美穂希

若い夫婦に向けてサブスクリプションで絵本をレンタルし、子供への「読み聞かせ」をサポートするアプリを提案しました。小さい子供をもつ若い夫婦にヒアリングし、読み聞かせによって夫婦と子供とのよい時間を提供することができるのではないかと考えました。

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▶︎ 友達同士で遊びのマッチングができるアプリケーションのデザイン,辻村瑞希

同じ趣味を持つ友人のコミュニティーの中で、行きたいイベントや個人のスケジュールを共有し「いっしょに行く」機会をつくるアプリを提案しました。友人と会いたいという気持ちと時間を逃さないために、行きたい場所、遊びたい日時、会いたい人のすべてを一度に決められるマッチングのためのアプリを考案しました。

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●2020年度のゼミ

以上が、9名の学生が1年間かけて卒業制作に取り組んだ成果です。
今年度はコロナ禍で新学期のスタートが1ヶ月遅れ、前期は全面オンラインでの卒制指導となりました。後期には対面授業が一部再開しましたが、生活にも様々な制約があり気晴らしもままならずストレスがたまりがちな中での卒業制作でした。制作を進めようとしても特にメンタル面で創造的な作業に没頭しづらくきびしい環境だったと想像しますが、12月の最終審査会ではゼミ生全員が研究制作の成果を発表することができました。卒制を完遂できた学生たちに拍手を送りたいと思います。

●作品展示のお知らせ

学生たちの卒業研究制作の成果は、以下の展覧会で展示・発表の予定です。
先日、1都3県に緊急事態宣言の発出がありお誘いしにくい状況となってしまいました。開催の日時をお知らせすることに止めたいと思います。

・美術学部卒業制作展・大学院修了制作展A(八王子キャンパス)
 2021年1月14日(木)〜1月17日(日)

・情報デザイン学科情報デザインコース卒業制作展(横浜赤レンガ倉庫1号館) 
 2021年3月5日(金)〜3月7日(日),11:00 - 19:00(最終日17:00まで)
 【入場事前予約制】

●教員からのメッセージ

(卒業研究制作展2021「そして、」 カタログより転載)
ゼミの多くの学生が社会的なテーマ、ユーザーや顧客の視点で考えるテーマに取り組みました。自己表現ではなく利他的なテーマを自ら選ぶ学生が多かったことは、デザインを学ぶ若い世代の姿勢としてとても心強く感じました。まだ見ぬ新しいことへのチャレンジは時に孤独なものです。多くの失敗があり、なかなか伝わらないこと、理解してもらえないことにも耐える強い気持ちが必要です。新しい地平にたどり着くには、自分自身を信じること、そして、いっしょに進む仲間を見つけることも必要になります。みなさんは、変化が早く従来の価値観がすぐに通用しなくなる時代に生きています。コロナ禍がそれをさらに加速してしまった感もあります。変化を恐れず、自分の眼と感性と信念をもって世の中を見て、世の中に貢献できるデザイナーになってください。社会人として再会する日を楽しみにしています。
サービスデザインゼミ 吉橋昭夫

▶︎ 吉橋研究室/サービスデザイン ゼミ

更新履歴:
2021.1.5 公開。
2021.3.22 一部の写真の差替え・追加、説明文に加筆、教員からのメッセージ追加。

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