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サービスデザインゼミ 卒制作品の紹介(2019年度卒業研究制作より)[追記:2020.6.14]

多摩美術大学吉橋研究室/サービスデザイン ゼミのfacebookページより転載・加筆)
2019年度 多摩美術大学情報デザインコース 卒業研究制作より、サービスデザインゼミ4年生の卒業制作を紹介します。最終作品なので学生が自分で書けるといいのですが、諸事情によりいつもどおり私から紹介させていただきます。
2019年度は大学院生1名(M2)と学部4年生2名のゼミでした。ゼミの名称は「サービスデザイン」ですが、特にデジタルサービスの提案にはこだわっていません。3名とも社会の課題に真摯に向き合う1年間となりました(テーマは学生たちが自分で選んだものです)。

▶ひとつめの卒業研究制作です。
「発達障害 ADHDを伝えるための情報の可視化」 新貝あゆみ
発達障害のひとつであるADHDの当事者とその周囲の人々が困っていることとその解決法について、可視化をテーマに1年間取り組みました。(写真は最終審査会/卒業制作展(学内展)での展示の様子です)

展示

展示片面_2

9月の中間審査会では、当事者へのインタビューなどに基づいて、社会人が「職場」で仕事をする上での様々な困りごととそれを解決するための方法をイラストで表現していました。
その後の検討で、当事者の立場をより身近な学生に置き換えて「大学生活」での困りごとを取り上げることとしました。インタビュー等の取材を追加でおこなったり、大学の学生課や学生相談室のカウンセラーの方々の助言もいただきながら、学生が手元で見ることができるパンフレットを制作することにしました。

記載内容や表現方法の検討を重ねて、イラスト作品(2枚)パンフレット(A5サイズ, 蛇腹折り, 両面10ページ)を最終作品としました。

イラスト作品_ADHD傾向がある学生_2

イラスト作品_周囲の人々

画像5

様々な文献の調査や当事者への聞き取り、表現方法の探索とたくさんの試作を経て、難しいテーマにていねいに取り組んだ卒業研究制作となりました。

[追記:2020.6.14]
多摩美術大学 2020年度 卒業制作優秀作品集(ウェブサイト)に掲載されました。


▶続いてふたつめを紹介します。
「インクルーシブ教育・保育の情報デザイン」安井小嶺
インクルーシブ保育法(注)を40年間実践している大阪の保育園の協力を得て、情報デザインの視点で問題解決を行ないました。(注:3〜5歳児を対象に障がいを持つ子も持たない子もいっしょのグループをつくって生活や行事を行う保育法)

安井展示

安井_保護者向け

安井_保育者向け

写真は1月の最終審査会/卒業制作展(学内)の時の作品展示の様子です。

最終成果物は、保護者向けの資料「年間カリキュラム概要」(A3サイズ,3枚)と、保育者向けの新人研修資料「インクルーシブ教育・保育の実践」(A4冊子,24ページ)です。
前者はリサーチを行ないながら前期に試作を行い、9月に開催された保育園の説明会で実際に配布してよい評価を得ることができました。後者は、園でのヒアリングを経て、園長先生や統括主任の先生からフィードバックを得ながら最終版としてまとめました。

制作ノート2_ol

制作ノート_ol

上記の画像2枚は、卒制のプロセスをまとめた「制作ノート」から抜粋したものです。

これまで園で利用されていた資料を調べ、園での説明会や研修の運用などをていねいに聞き取りながら、情報を整理して、園の外と内それぞれに向けた適切な情報提供をめざした卒業研究制作です。

説明は以上です。

▶2019年度は、たまたまゼミ生全員が社会性のある課題に取り組みました。教員からこれをやりなさいと指示したことはないので、これも時流なのかなと思います。どのテーマも、条件が複雑でステークホルダーがいて大人でもなかなか難しい課題解決でしたが、学生たちは「大変なのでやめたい」とは一度も口にしませんでした(おそらく悩みも葛藤もあったと思いますが)。
今日は4月1日、それぞれがデザイナーとしていよいよリアルな社会の課題に取り組みます。

M2 羅シチョウさんの修了制作/修士研究は先日紹介したこちら。


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