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でき太くん三澤のひとりごと その144

◇ 失敗を自信へと導く


令和6年5月9日。
もう5月だというのに、今の信州の気温は6度。
明け方には3度になる予報。
暖房がないと、ちょっと厳しい気温です。
この「ひとりごと」を書いている私の部屋では、暖房がついています。
去年の今頃は、もう暖房はつけていなかったと思うのですが、いつになったら、暖房が必要なくなるのか。

たぶん、農業を営んでいる知人の多くが田植えを始めるころになれば、暖房は必要なくなるでしょう。

農業を営んでいる人は、気温の変化をよく調べています。長期の天気予報を調べ、苗を植える最適な時期を見極めるためです。今日のように気温がぐっと下がる日には霜がおりてしまいます。霜は苗にとっては大敵です。

苗が霜の影響を受けることなく成長できるタイミングをしっかり見計らう。
これも農業を営むプロにとっては大切な技術なのだと思います。

今日たまたまお会いしたお米農家の方は、19日に田植えを行う予定とのことなので、きっとそのころから暖房が必要のない気候になるはずです。

先日車を運転している際に聞いたラジオでは、パーソナリティがその番組に寄せられた質問に答えるというコーナーがありました。

そのひとつに、「私は社会人として働いているが、どうしたら社会人として自信が持てるようになるのか。どうしたら自分に自信が持てるようになるのか」という質問がありました。

パーソナリティは、その質問に対して自分なりの考えを答えていましたが、その答えは私には「正解」には思えませんでした。おそらくそのパーソナリティの回答では、質問をした方は納得できないだろうし、実際に今日から何をしていくべきなのかがわからないだろうと思いました。私はそのパーソナリティの回答に、自分とは違う切り口の「はっ」とするよな回答を期待していただけに、少し残念にも思いました。

人はどうしたら自信を持つことができるようになるのか。
これは多くの人が一度は悩んだことがあるテーマだと思います。

私は、人が自信を持つには「体験」が必要だと感じています。
今までの自分があえてしなかったような体験をすること。これが自信につながっていくように思います。

今でもよく覚えているのは、私がこの仕事を始めて数年くらいしか経っていない時期のこと。50名くらいの親御さんを前に、教育や子育てについての講演をしたときのことです。

私は人と話をするのが苦手なほうでしたので、講演のような類のものはできるだけ避けてきました。緊張すると、話そうとしていたことが一瞬でどこかに飛んでしまうことがよくあったからです。

おそらく私に今の仕事のノウハウを徹底指導してくれた師匠は、そのことをよくわかっていたのでしょう。私が自分に自信を持ち、つぎのステップにいくには「人と話をするのが苦手」という苦手意識を克服して、大勢の人の前でも堂々と話ができるようになることが必要だと考えていたのです。

その講演は、正直、失敗だったと思います。
自分が話したいと思っていたことは半分も話せていなかったと思いますし、緊張して言葉に詰まることもありました。

人によっては、この失敗でさらに苦手意識が深まり「もう二度と講演などしない」、「もう人前で話をするのはうんざり」となってしまうこともあると思います。師匠はそれをよくわかっていて、その点をしっかりフォローしてくれました。

「三澤くん、良かったよ」

講演後、このひと言だけを私に言い、ぽんっと肩を叩いてくれました。

どこがよくないとか、聞き取りづらかったとか、余分なことは一切言わずに、ただ私を肯定するそのひと言だけ。それ以上は一切語りませんでした。苦手意識がある人の挑戦を心から励まし、肯定するだけでした。

この師匠のフォローで、私は救われました。
「体験」を肯定してくれる人がいてくれたおかげで、私は失敗を自信につなげていくことができたのです。

それからも師匠は、私をどんどん人前に出すようになりました。

ちょっとした地域の会合。
数名単位のでき太くんの説明会。
児童養護施設の代表との面談。
学校の先生を対象とした説明会など。

人と話をするのが苦手な私に、どんどん人と話をする「体験」をさせていくのです。

最初のうちは、規模の大小にかかわらず、必ず話の内容を原稿に書いていた私でしたが、次第に原稿は書かずに、アドリブで話をするようになっていきました。
原稿を読みながらするような話では、私の話を聞きにきている人はつまらないということを「体験」から感じとったからです。

人と話をするときには、話のポイントだけを決めておいて、あとはその場の雰囲気を感じとりながらアドリブで話を進めていく。ひとり1人の目を見つめながら、自分の話を相手に届けるという意識を持つ。そうすると、話を聞く人の心をグッと掴むことができるようになってくる。こういうことを少しずつ「体験」から身につけていきました。

「体験」は、たとえそれが失敗だったとしても、それを肯定してくれる人がそばにいたら、人を成長させてくれる。そして「自信」を育んでくれる。
もし私がラジオのパーソナリティだったら、こういう話をしただろうなと思います。

社会人として自信が持てるようになりたいなら、たくさん「体験」すればいい。
これまで自分がしてこなかったようなこと、避けてきたようなことをどんどん挑戦し「体験」すればいい。

子どもに自信を持たせてあげたいなら、たくさん「体験」させてあげればいい。
失敗も含めて、いろいろな「体験」をさせてあげたらいい。
そのひとつ1つを、私たちが肯定し見守っていくことができたら、きっと子どもはその「体験」を自信へとつなげていってくれるように思います。

農業を営む方々にとっても、毎年1回だけの田植えは貴重な「体験」のはずです。
その貴重な「体験」から多くを学び、苗を植える最適な時期を決断する自信を手にしているのでしょう。

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