見出し画像

年間75億本、レッドブル成功の秘訣


「レッドブルのための市場は存在しない。我々がこれから創造するのだ。」
レッドブル創業時の企画書である。


レッドブルといえば、いまや年間75億本の販売数を誇る、エナジードリンク市場を代表する世界的な有名ブランドだ。
ただ、創業からまだ二十数年しか経っておらず、創業から100年以上経つ企業が
多い飲料業界の中では、比較的若い企業だ。

そのような新規参入者が大手企業と同じ土俵に参入するためには大きなハードルが
あったのだが、”逆”をついたマーケティング戦略を駆使して、そのハードルを
乗り越えていった。


あなたは、レッドブルと聞いて、どのようなイメージを思い浮かべるだろうか?

エキサイティング? パワフル? チャレンジング? 危険?

これらのイメージが思い浮かぶのではないだろうか。
実はこれらのワードこそが、レッドブルのブランドであり、
レッドブルのマーケティング戦略が作りだしたものなのだ。


レッドブルの価値

コンビニやスーパー、自動販売機などで200円程度で売られているレッドブル
だが、その原価は10~20円ほどと言われている。

では、消費者は残りの190円分は何に対して、お金を払っているのか?


答えは、「レッドブル」というブランドだ。

画像2

1984年にレッドブルを創業したディートリヒ・マテシッツが作った当時の企画書
には、「レッドブルのための市場は存在しない。我々がこれから創造するのだ」と
書かれていた。
彼はマーケティング戦略、すなわちブランディング戦略さえ完璧であれば、
ビジネスを成功させることができると考えていたのだ。

これを象徴するのが、レッドブルのマーケティング費用の大きさだ。

コカ・コーラは収益の9%をマーケティングに使うのに対し、
レッドブルはその3倍以上の30%をマーケティングに使っている。
さらに、コカ・コーラは自社でドリンクの開発から生産を行うのに対し、
レッドブルはドリンクの開発はしておらず、生産も全て外部まかせ。

このように、自社はマーケティングに特化することで、
新しい市場を生み出すことだけに全ての時間を費やしていた。


”逆”をついたマーケティング戦略

レッドブルの成功を語る上で必ず語られるのが、「スポーツマーケティング」だ。

画像3

レッドブルは、スノーボードやサーフィンなど、自社のブランドイメージと
マッチするエクストリームスポーツと積極的にスポンサー契約を結んでいる。

ちなみにだが、上の画像、おわかりいただけただろうか。
レッドブルが主催した、eスポーツの大会の様子である。
このように、レッドブルはeスポーツの振興にも力を入れている。

ただ、同じ「スポーツマーケティング」戦略でも、
大企業が結ぶイチローのような有名スポーツの有名選手とのスポンサー契約と、
レッドブルが結ぶエクストリームスポーツでのスポンサー契約では、
その目的が大きく異なっているのだ。

これが、「”逆”をついたマーケティング戦略」といわれる所以である。

大企業がイチローのような有名選手と契約を結ぶ際は、その選手の知名度や人気を
当てにした場合が多い。
自社の広告に有名選手が出てくれば、その選手の知名度や人気に伴って、自社の
製品に興味を持ってもらいやすい。

しかし、レッドブルの場合、知名度の高いスポーツや選手ではなく、マニアしか
知らないようなスポーツに焦点を当てている。
そして、そのスポーツの振興のために、選手たちと共に努力するのだ。
スポーツ選手やスポーツ組織からすると、単純にお金を提供してくれるスポンサー
というより、パートナーに近い存在といえるかもしれない。

こうしたエクストリームスポーツの選手たちは、レッドブルのスポンサーにより
競技自体の知名度を高めることができれば、大会規模も大きくすることもできる
可能性も出てくる。
まさに、上画像のeスポーツ大会「Red Bull Kumite」もその例だ。

そして、この選手たちがスポンサーとなってくれたレッドブルに対して感じる
感謝のレベルを想像してみてほしい。
すでに成功している有名競技の有名選手がスポンサー企業に対して感じる感謝
とは、まったく違う種類のものだろう。

つまり、同じ「スポーツマーケティング」においても逆転の発想があるのだ。


画像3

ドイツの社会学者ハルトムート・リュトケは、時代の価値観の変化もレッドブルが
成長した大きな要因だと指摘する。

特にヨーロッパでは、80年代の若者の憧れといえば、都会に住み、周りから
羨ましがられるような生活をすることだった。
だが、年月が経ち90年代になると、若者は贅沢な暮らしよりも、大きな興奮や
スリルがある生活を求めるようになっていった。

この価値観の変化もレッドブルのブランドイメージとマッチしており、
レッドブルの成長の後押しをすることとなった。


それに加えて、レッドブルは、こういった若者が好むブランドイメージを失わない
ように、広告の出し方に関して、どういった層に、どのように見られるかを常に
意識している。

CEOのマテシッツ氏は、色々なところに広告を出して、それがどれだけ見られて、どのくらいのアクセス数があるかを細かく分析する古いやり方には一切興味がないのだという。

量よりも広告の質とそのターゲット層を意識し、長期的に続かない一回きりの
イベントには広告を出さないことを徹底したことで、いまや若者だけではなく、
セレブまでもが意識してレッドブルを飲むようになった。

実際にレッドブルは、
従業員一人あたり年間5000万円以上の売上を生み出しており、
いかにそのマーケティングが強力であるかが分かる。


世界のリーディングカンパニー「マイクロソフト」
その価値の99%は無形資産

時代によって、企業が生み出す価値の評価は、大きく変化する。

例えば、90年代のアメリカ企業の時価総額の大半は、工場や様々な設備など、
目に見える有形資産が占めていた。

しかし、2000年代になると、その割合は大きく低下し、ブランド力、人材など、
目には見えない無形資産が企業の時価総額に大きく影響し始めていた。

時価総額が1兆円を超えるレッドブルだが、その価値はエナジードリンク自体
ではなく、ロゴが生み出すブランド力に依存する部分が大きいのだろう。

そういった意味で、レッドブルにとって、
エナジードリンクはブランドの価値観を伝えるための一つのツール
に過ぎないのかもしれない。

画像4

世界的な大企業マイクロソフトにいたっては、オフィスや設備などが占める割合は
時価総額の1%でしかなく、残りの99%はソフトウェアの信頼やブランド力などの
無形資産が占めているのだという。

物理的な店舗でコーヒーを販売しているスターバックスであっても、価値の大半は
コーヒー自体ではなく、彼らが生み出す、家でもない、職場でもない、第三の場所(サードプレイス)という空間の価値なのだ。


すなわち、「経済学の父」ドラッカーがイノベーションとマーケティング以外は
すべて”コスト”だと断言するように、成功している企業は、直接的あるいは間接的
問わず、新しい市場をつくりだすマーケティングを実行している。

企業価値の大半を占める無形資産を作り出すには、マーケティングをしていくこと
が不可欠だと考えれば、マーケティングを主軸に置いている会社は生存確率が高い
とすぐに分かる。

画像6

例えば、あまり知られていないが、あのミシュラン・ガイドを作っているのは、
「ミシュラン」というフランスのタイヤ会社なのだ。

近年の日本、特に東京では、その必要性が薄れてきている車だが、世界的に見れば
まだまだ生活に欠かせないものである。
そして、車の維持には定期的にタイヤを交換する必要があるが、一般人にとって、
どれだけ詳しくタイヤに関する話を聞いたところで、全く面白くないだろう。

であれば、つまらないタイヤの話をするよりも、美味しいお店のガイドブックを
作った方がお客さんは喜ぶし、お客さんが車に乗って、ミシュランガイドのお店に
行けば、タイヤがすり減って、タイヤが売れていく。

まさに、画期的なマーケティングといえるが、ミシュランやレッドブルのように、ただ製品の良さを語るのではなく、別の観点からターゲット層を獲得することで、
競争が激しいレッドオーシャンから抜け出し、独自の新しい市場を創造することが
できるのだ。


よく日本企業は、製品の品質向上などの製造の部分には徹底的にこだわるけど、
その後のマーケティング戦略やブランド力の向上を含めた、ビジネスの部分が
苦手なのだといわれる。

実際、製品の質に重点を置き、日本企業の良いところを維持したまま成功している
企業というのは、例外なくマーケティングに力を入れている企業が多い。

ユニクロは、ヒートテックやエアリズムなどの革新的な商品を開発しながらも、
優れたカスタマーエクスペリエンスを提供しているし、セブン・イレブンは自社を
小売業ではなくマーケティング・カンパニーだと述べている。


画像5

世の中の経済が成熟してくると、
どこの企業がつくる製品やサービスも大した違いがなくなってくる。

でも、レッドブル、スターバックス、ユニクロなど、
なぜか自然と手にとってしまう商品というのは、
その裏で地道なマーケティング戦略が行われているのだ。




どうでしたか?
今回は、「レッドブル」という会社に焦点を当てて、記事を描いてみました。

これからもいろんな記事を配信していくので、よろしくお願いします。


では👏

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?