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最高の餞別


またまた仕事の話。

私が遅番の時に、一緒に締め作業をする女性のパートさん。

その人と作業をする頻度は週に2回くらいで、最初は職場の人間関係についてとか、天気についてとか他愛もない雑談をしていた。

「ああ~、帰ったらお酒飲もう~」
なかなか作業が終わらなかったある日、私が伸びをしながら言うと、「家でお酒飲むの?」と聞いてきてくれた。


日本酒とハイボールが好きだけど最近は梅酒のソーダ割りばかり飲んでいること、お酒の種類がたくさんあって安い業務スーパーが近所にあって便利なこと、日本酒を飲むためのお猪口を持っていないから小さいコップで飲んでいることとかを話した。


その日から何だか打ち解けて、帰りの時間が被るときは私のことを職場の最寄り駅まで車で送ってくれるようになった。
10分くらいの短い時間だけど、たくさん話したなあ。
打ち解けて話せる人ができたことが私はすごく嬉しかったし、年齢的にもなんだかお母さんみたいでいろいろ相談した。

そのパートさんもお酒が大好きで、寝る前に缶チューハイ1本だけ飲むらしい。
「瓶からコップに移して飲むやつだと無限に飲んじゃうけど、缶なら1本だけって決められるでしょ?」と言って笑っていた。

サザンオールスターズ、主に桑田さんが大好きで1年に5回はライブに行くと言っていた。車内はいつもサザンの音楽が代わる代わる流れていた。


5月末、私が異動でその職場を離れることになった。
最終日にそのパートさんが出勤していたので、今までのお礼を伝えに行くと、なんと餞別の品と手紙を用意してくれていて、渡された。

「○○さんだと締め作業が早くて助かってたんだけどね。」
涙を溜めた目でそう言われて、私まで泣きそうになった。


家に帰って紙袋を開けてみると、日本酒の小瓶とお猪口、おつまみが入っていた。
「よく覚えてたなあ」と思いながら、その日のうちに日本酒をゆっくりゆっくり飲んだ。
旨口で本当に美味しかった。


些細な会話を覚えてくれていたのはもちろん、何より私のために選んでくれたというのが伝わってきて最高に嬉しかった。
日本酒の瓶はラベルを剥がすと、綺麗な瑠璃色の小瓶になったので一輪挿しに使おう。

素敵な人と出会えて一緒に働けたこと、相手もきっと私をそう思ってくれていたこと。
それってすごく幸せだよね?


最高の餞別をありがとうございました。
実は私もたまにサザンを聞くようになったよ。


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