真っ暗な静寂の中で想う。目に見えないところにあるのが本当の姿。
ニュージーランドで暮らしてちょうど10日が経った頃、私は原生林と崖上を歩く4日間のグレートウォークに参加した。
「あぁ完璧な静寂だ・・・」
物音一つしない暗闇の中、見上げると月が輝いている。ただそれだけのことなのに、泣けるほど美しくて、その静寂に私は心を奪われた。
こんなにも月明かりが眩しいなんて、私は知らなかった。
トレッキングの良いところはとにかく自分と、人生と、向き合うことだ。
ニュージーランドといえば南島のミルフォードサウンドは有名だけど、北島のワイカレモアナ湖はマイナーすぎてほとんど情報がない。でもローカルの人(KIWI)も「ワイカレモアナは最高だよ!」と全力でお勧めしてくれるから、それだけを信じて行くことを決めた。
とはいえ、5日間原生林の中を一人で歩くのは不安。さすがに危険・・・
そんな中、LOVELY GREEN NEW ZEALANDの著者である四角大輔さんのオンラインサロンミートアップに色んなご縁から急遽参加させてもらうことになり、そこでまさかの6年前、私が節目の度に行っている宮古島のゲストハウスで当時スタッフとして働いていた子(ぶんちゃん)と再会した。宮古島でも過ごしたのは数日、それがまさかのオークランドですごい偶然が重なるなんて奇跡だ。英語が全くできない中、3ヶ月の一人旅をここから始めるぶんちゃんがNZでリトリート体験をしたいと言うので「ワイカレモアナどう?」と誘ってみた。直感的に、彼にはこの経験がきっと人生を変える機会になる気がしたから。
さらにその話を聞いていた別の子が、明後日帰国するから寝袋やらキャンプ用品一式を譲りますよと言ってくれて、あれよあれよと話が進みその場で行くことが決まった。
今回の旅はこういうことが頻発していて、「あぁ魂が呼んでいるんだな」としか思えないことばかり。
かくして私は、弟のようなぶんちゃんというレンタカーや宿代を折半する相棒を見つけ、私は英語力と旅のアレンジと全ての手配を。ぶんちゃんは山道の運転とスポーツトレーナーとしてボディメンテナンスを。それぞれのスキルをシェアすることで、ワイカレモアナに行くことを決めた。
DocでHutの予約も完了し、さてWaikaremoana Great Walkのはじまり。
工程は3泊4日。1日目の朝がめちゃ早いので前日からホリデーパークに泊まって身体を慣らしておくので、実質丸5日間を確保する。
4日分の水(1人6L)と食料、寝袋や着替えと、鍋やガスなどの調理器具などどれだけ軽量化を図っても、泣けるほど重いバックパック・・・。
Day1:Onepoto Bay→Panekire Hut
とにかく1日目が一番キツイ。8:30発の水上タクシーで無人島の入口みたいなところで降ろされ、そこから獣道みたいな原生林の中をただひたすらオレンジの▲を頼りに登る。15kgをゆうに超えるバックパックを背負ってただ黙々と歩く。開始30分で頭がボーっとして心が折れかける。
「肩が痛い・・・腰が痛い・・・頭痛い・・・」雑念ばかりが頭をよぎる。
1時間半くらい歩いたところで見晴らしの良い崖上のスポットで休憩。迫力のある景色と力強くて優しい風に癒やされると、みるみる元気になってくるから不思議。
写真を撮って出発しようとしたら、まさかの少し先に出たぶんちゃんを見失いはぐれるという事件。
「ウソでしょ・・・おーーーい。」
でももう私には山を降りることも止まることもできない。ただただ前を見て歩くしかない。
その後5時間一人で山道を歩き続ける。14時半に山小屋に到着。遅れること2時間ぶんちゃんも到着。なんと私を探しにスタート地点まで戻ってまた登ってきたらしい。。。(道が二股に分かれていて、違う道をそれぞれ歩いていたみたい)
決して綺麗とは言えないHutだけど、それでも無事着いて安堵して、綺麗な夕焼けを見て、電気の通っていない山小屋は21時には真っ暗でみんな就寝。
Day2:Panekire Hut →WaiPaoa Hut
2日目はひたすら下りで、快調に歩く。鼻歌とか歌えちゃうくらい。3時間で目的地のHutに到着。湖にドブンと飛び込み、陽を浴びて、優しいそよ風を感じながら静かに本を読む。なんて穏やかな時間なんだろう。
太陽が沈み、21:30には静寂が訪れる。
1人、また1人と山小屋に入っていく。
まだ眠くない私は、山小屋の外の階段に腰を下ろして星が瞬くのを待つ。鳥がなく。木々が風で擦れる音がする。それ以外は一切物音がしない。
「あぁ完璧な静寂だ・・・」そして見上げると月が輝いている。
眩しすぎて直接その光が見れないくらいあたりは真っ暗だ。私はこんなにも月明かりが眩しいなんて、知らなかったかもしれない。
「美しい、世界はこんなにも穏やかなのだ。」
この静寂を知れただけでも来てよかったなと思えた。この日は中々寝付けなくて、深夜に目が覚めて外に出てみると、月が沈みそれはそれは美しい満天の星空が広がっていた。何時間でもここにいたい。そう思える静寂の中で星が降り注いでいた。
Day3:Waipaopa Hut→Waiharuru Hut
このトレッキングで最長の20kmを歩く。通常プランだと途中のMarauiti Hutなんだけど、私たちは+2時間4日目の分までこの日に歩くことにした。
3日目に入って水も食材も消費しているはずなのに一向にリュックが軽くも小さくならない謎を抱えながら出発。
途中寄り道をして、Korokoro fallを見に行く。
本当に舗装された道は一切なくて、滝に行く道は飛び石。ロープに捕まるも足を滑らせて右足がドブンと浸かったり、この日は何度も何度も転んだ。
いよいよ疲れが身体に出てきたかなーと思いながらも、言い訳も愚痴も出てこない。誰も助けてくれないし、転けても痛がっている暇もない。立ち上がるしか無いのだ。
Marauiti Hutに15時頃到着。この時点で6時間歩き続けてる。一つ遠いHutを目指すことを決めた自分たちを少し後悔しながらも、暗くなる前に到着したくて奮起して出発。
そこからの2時間は地獄だった。ここまでの道のりは、人生のことを考えたり、過去のことを振返ったり、未来のことを考えたり、思考をしながら歩いていた。時には音楽の力を借りて自分たちを鼓舞したりもした。
でも私はここからフロー状態を体験する。
無心で歩く、なにも考えない。むしろ考えられない。
ただただ歩みを進める、前だけを見る。
虫が止まっても気づかないレベルで、歩くことだけに集中する。そうするとしんどいとか、お腹すいたとか、そんなことも考えなくなる。
立ち止まるとまた歩き出せなくなるから、最後はぶんちゃんとふたり無言で塩胡椒を舐めて熱中症を凌いだ。それくらい辛い3日目だった。
Day4:Waiharuru hut→Wanganui hut
2日目のHutから一緒だったアメリカ人のパトリックの勧めで、朝早く出発して9時の水上タクシーピックアップのプランに切り替え、まだ日が昇らないうちに出発。前日に+2時間歩いていたおかげで、この日は2時間半ほどで最終目的地に到着した。
目的地のHutに着く少し前、昇る朝日を見ながら足を止めたパトリックが、"Almost over"と呟いた。
なんだかこの言葉が沁みた。ひたすら歩みを進めてきたこの4日間。
そう、もうすぐ終わるのだ。本当に。そう実感したから。
朝9時、水上タクシーにピックアップしてもらう。
「あぁ、こんなにも歩いたんだな」この4日間の道のりを思い出しながら、山々を見上げる。無事、ホリデーパークに着いた時の達成感と安堵感といったら・・・。
今回、私が無理やり誘って連れてきたぶんちゃんは、トレッキング中時折、「明奈さん、ここに連れてきてくれてありがとう」と静かに言った。はじめは中々目を見て話をするのが苦手そうだったぶんちゃんも、明らかに顔つきも発する言葉も声色も変わっているのに私は気づいていた。
「一人じゃ絶対に来なかったよ。」
ぼそっと話すのが彼らしくていい。
大切なのは、目に見えないところ、そこにあるのが本当の姿。
彼がオンラインサロンで書いたブログを送ってくれた。とても素敵だったのでここに記載したい。
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この日、奇跡の再会がありました。ぼくが宮古島のゲストハウスで働いていた時にお客さんで来てくれていたAKINAさん。彼女とは6年ぶりの再会でした。このご縁もあり、1週間ほど彼女と行動を共にする事になりました!
レンタカーを一緒に借りてニュージーランドの北島をメインに旅しました。車での移動中。宿での食事中。お互いのこれまでの人生。今後のビジョン。語り合いました。
彼女はウエディングの業界ではそれなりの人間なのかも知れません。
ぼくは、知りませんが笑
それでも、ぼくが嬉しかったのはひとりの人間としてフラットな関係で話をできた事です。お互い肩書きがなくただの人間としてです。
彼女の質問は、
自分の事を更に深く考えさせてくれました。
彼女のビジョンは、
ぼくに刺激を与え、可能性を広げてくれました。
彼女との旅で印象に残っている場所。ワイカレモアナ湖の周遊です。
3泊4日かけて湖の周りをトレッキングします。
そのプランは彼女が勧めてきました。
最初勧められた時。
わたしは絶対に参加したくありませんでした笑
だって、水も食料も自分で持って、シャワーも3日間入れないんです🙄
「なんでニュージーランドまできてそんな辛い事せなあかんねん!」笑
断るつもりでした。
彼女から連絡が来ました。
「トレッキングエントリーしておいたから!」
😳😳😳
そうだ、彼女は、そんな人だった。😭
■トレッキング開始■
バックパックに水、食材、生活に必要最低限のものだけ詰め込みます。
それは、自分の命そのものです。命を背負って歩きます。
誰かの荷物を背負う余裕なんてありません。
一歩、一歩、進むしかないんです。
遠くを眺めても、後ろを振り返っても、
一歩、一歩、進むしかないんです。
彼女の後ろを歩きました。
勢い良く進んでは、息が切れて立ち止まる。
「あぁ、Akinaさんって本当は不器用なんだ。」
何度も転んでは、何事もなかったようにその度に立ち上がる。
「あぁ、これが、この人の強さなんだ!。」
彼女の歩んできた人生を見ているようでした。
人は、自分以外の人間をみるとき、表面だけに目が行きがちになる。
簡単に見ることができるから。
大切なのは、目に見えないところ、そこにあるのが本当の姿。
相手を見ているようで、それは自分を見つめること。
自分を見つめることで、相手も見えてくる。
ひとりでは、絶対に体験することができなかったトレッキング。
出会いが繋いでくれたもの。
そこには、可能性という世界が広がっていました。
私たちは無限なのだと。
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私たちはただ、湖の畔を歩いているわけじゃなくて、自然の偉大さに触れ、「ただ歩く」この経験を通して自分の生き方と向き合っているのだなと思う。目に見えていないこと、言葉に出来ないものを、心の目で見て感じる。それが人生の味わい深さだなと思う。
私自身、あり方で届けたいと思っていることを「背中を見て感じた」と言ってくれたぶんちゃんの言葉が、なんだかとても嬉しかった。
旅は本当に、年齢も肩書きも全ての条件、情報をゼロにしてフラットに人と関われるから好きだ。そんな旅のさなかでも、誰かが可能性に蓋をしている時、それをそっと開くきっかけになれたら私は幸せ。
私もそうやって色んな人に蓋をあけてもらってきたから。
人生は泣けるほど美しい。
静寂の中で想ったのは、いつもと同じ、だけどいつもと違う。
本当の静寂が、私をまたゼロにしてくれた気がした。
私にとってのゼロとは捨てることではなくて、純度を高めるということ。
にごりなく、ピュアに信じ続ける心に水を与えてくれた。私にとってはそうやって、知らないことを知って、また何度も確信を深めていくのだと思う。
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過去のグレートジャーニーも含めて、私の「人生を祝う旅」の様子はインスタでアップしてます。NZの様子も徒然と自分用のライフログのようにまとめてます。よかったらぜひ。
あと、マガジン「Great Journey(人生を祝う旅)」もどうぞ^^
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