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事業フェーズによって変わる"コーポレート人材ニーズ"

はじめまして、大串です!
経理コミュニティ"UP!経理" アドベントカレンダー5日目を担当します。

簡単に自己紹介させて頂くと…、大企業の経理としてキャリアをスタートして、その後はメガベンチャーでの経営企画や新規事業を経て、今はスタートアップ界隈、特にコーポレート関連のお仕事をさせて頂いてます。

ここ数年、スタートアップ界隈で仕事をする中で、漠然と考えていたことですが、標題に書いた「事業フェーズによって変わる"コーポレート人材ニーズ"」について、記事にしてみたいと思います。
 ※ 個人の経験に基づく、私見です。


1. はじめに:スタートアップの成長フェーズと人材ニーズ

スタートアップの成功は、多くの要因に依存しますが、その中でも特に重要なのが適切な人材の確保です。事業の各成長段階では、異なるスキルセットと専門知識を持った人材が求められます。この記事では、スタートアップが直面する各フェーズにおける人材ニーズと、それに対応する人材戦略について記載します。

初期フェーズ(シード/スタートアップ期)
この段階では、ビジョンを共有し、多様な役割を担える汎用性の高い人材が不可欠です。リソースが限られているため、一人が複数の役割を担う状況が一般的です。場合によっては、コーポレート人材と言えども、マーケティング、製品開発、営業など、様々な業務に対応できる幅広いスキル(マインド)を持ったメンバーが求められます。

成長フェーズ(シリーズA/B)
資金調達が成功し、ビジネスが拡大するにつれて、より専門化されたスキルが必要になります。この時点で、経理、HRなど、特定の領域の専門家を採用することが重要です。組織の拡大に伴い、クリアな役割分担と専門性の深化が求められます。

成熟フェーズ(シリーズC以降、IPO準備)
さらにビジネスが成長し、IPOなどの大きなマイルストーンに近づくにつれて、更に高度な専門性と豊富な経験を持つリーダーが必要になります。法務、経営計画など、より複雑で高度な業務に対応できる人材が重要です。また、専門性の高い業務遂行能力だけではなく、組織文化を形成し、長期的なビジョンを支えるリーダーシップが必要不可欠です。
これら各フェーズの人材ニーズを理解し、適切なタイミングで正しい人材を採用することは、スタートアップの成長と成功において決定的な役割を果たします。

次に、各フェーズの特徴とそれに対応する人材戦略について、もう少し深掘りしていきます。

2. 初期フェーズ(シード/スタートアップ期)の人材ニーズ

スタートアップの初期フェーズは、企業の将来を創る重要な段階です。この時期に求められるのは、経営のビジョンを共有し、多様な業務に柔軟に対応できる汎用性の高い人材です。限られたリソースの中で最大限の成果を出すため、以下のような特徴を持つ人材が重要になります。

多様なスキルセット

  • 初期段階のスタートアップでは、従業員一人ひとりが複数の役割を果たす必要があります。

  • マーケティング、セールス、製品開発など、異なる分野に対応できる広範なスキルセットが求められます。当然ながら、異分野での高いスキルセットが絶対に必要というわけではないですが、それら異分野に挑戦しようというというマインドセットが重要だと言えます。

柔軟性と適応力

  • スタートアップの環境は常に変化しています。新しい課題や未知の状況に迅速に適応し、柔軟に対応できる人材が必要です。

  • 試行錯誤を恐れず、課題を自らで発見し、創造的な解決策を見つけ出す能力がとても重要です。

自立性と主体性

  • 初期フェーズでは、他者からのマネジメントを受けたり、十分なOJTを受ける機会は限られており、自立/自律して業務を遂行できる人材が求められます。

  • 自発的に行動し、自分の責任範囲を超えて積極的に取り組む姿勢が重要です。

ビジョンと文化の共有

  • スタートアップのビジョンやミッションに共感し、企業文化を形成するのに貢献できる人材が不可欠です。そもそも、会社としてのルールや仕組みが決まっていないことも多い環境なので、会社の掲げるビジョンやミッションに照らし合わせ、正しい行動を自ら選択していける人材が必要です。

  • 会社の基盤を築くため、専門的な知見以上に、チームワークと組織文化への強いコミットメントが必要と言っても過言ではないと思います。

まとめ
スタートアップ初期フェーズでは、多才で柔軟性があり、自発的に動ける人材が企業の成長を支えます。これらの特性を持つ人材を採用し、適切に育成することが、スタートアップの成功への鍵となります。
もちろん、高い専門性を備えた人材が採用できれば最高ですが、まだこのフェーズの企業は会社の知名度も高くなく、報酬面でも他社に見劣りすることが多いというのも事実なので、専門性よりもマインドセットを見極めて、ポテンシャルに賭けて採用するということも、場合によっては必要になると思います。

3. 成長フェーズ(シリーズA/B)の人材ニーズ

スタートアップがシリーズAやBの資金調達を成功させると、企業は新たな成長の段階に入ります。このフェーズでは、専門性を持ち、特定の部門を牽引できる人材が必要となります。

専門家の必要性

  • 資金調達後の成長には、各分野の専門家が必要不可欠です。

  • 経理、人事、法務、労務、情シス技術開発など、特定の領域で深い知識を持つ人材を採用することが重要です。

リーダーシップと管理能力

  • 組織の拡大に伴い、チームを率い、プロジェクトを管理する能力を持ったリーダーが求められます。

  • 部門の目標設定、戦略策定、チームビルディングに優れた人材が重要になります。

データドリブンな意思決定

  • 成長フェーズでは、データに基づいた意思決定が、ますます重要になります。

  • 組織が大きくなるにつれ、経営陣の直感だけではなく、徐々に大きくなる組織をスムーズに動かすため、データに基づいた意思決定が求められる場面が多くなるため、分析的な思考とデータを活用した戦略策定能力を持つ人材が不可欠となってきます。

事業拡大とプロセスの最適化

  • 事業のスケールアップには、効率的なプロセスの構築と管理が重要です。

  • 小さな組織においては、個々人の独自のやり方で、アナログなやり方で業務推進したとしても、何とかなりますが、組織規模が一定水準を超えると、適切なプロセスがないと、物事が進まなくなってしまいます。

  • オペレーションを効率化し、事業拡大を支える仕組みを創ることのできる人材が求められます。

まとめ
スタートアップが成長フェーズに入ると、専門性の高い人材と強力なリーダーシップが必要となります。これらの人材は、事業の拡大、組織の成熟、そして長期的な成功の基盤を築く上で重要な役割を担います。高いコミットメント、一定以上の専門性を有し、コーポレート業務の中核を担える人材を採用することが求められます。

4. 成熟フェーズ(シリーズC以降、IPO準備)の人材ニーズ

スタートアップが、シリーズCの資金調達を経て、更なる成長とIPOへの準備に向けて進む際、企業は新たな段階に入ります。このフェーズでは、特に高度な専門性、戦略的思考、そして組織を牽引するリーダーシップを持つ人材が求められます。

高度な専門性の重要性

  • 成熟したスタートアップでは、財務、内部統制、コンプライアンスなど特定の領域で深い専門知識が必要です。

  • IPOの準備には、証券市場の規制、財務報告の基準など、高度な知識を持つ人材が必要不可欠となります。

  • 社外の人材を業務委託として活用することが可能な場合もありますが、サステイナブルな事業成長、コーポレート運営を考えて、高度な専門性を社内で確保することも重要になります。

戦略的なリーダーシップ

  • 企業の長期的な戦略を設計し、実行する能力を持つリーダーが重要になります。

  • これまで以上の組織が大きくなり、コーポレート部門に関わるメンバーも多くなってくるため、ビジョンを共有し、組織を一つの方向へ導くリーダーシップが求められます。

持続可能な組織構造の構築

  • 成熟フェーズでは、持続可能な成長を支えるための組織構造と文化の構築が重要です。

  • もちろん、環境変化に応じて、適応を繰り返すことも重要ではありますが、組織が大きくなればなるほど、組織改編に伴うコストが増大するため、慎重に中長期のビジョンに基づいた組織構造を決定する必要があります。

  • 効果的な組織運営、人材育成、企業文化の強化を得意とする人材も必要になってきます。

リスク管理とコンプライアンス

  • 拡大する事業規模と複雑化する市場環境において、リスク管理とコンプライアンスの重要性が増します。

  • 成熟フェーズに入る前から重要であることは否定しませんが、事業拡大を優先する多くのスタートアップにとって、現実的に内部統制の重要性を理解し、法的、財務的リスクを管理し、企業の持続可能性を確保する仕組みを構築するタイミングになるとも思います。

  • 事業成長を支えるため、守り一辺倒でもなく、攻め一辺倒でもない、バランス感覚のある リスク/コンプライアンス体制を構築することが必要です。

まとめ
シリーズC以降の成熟フェーズでは、企業は高度な専門性を持つ人材、戦略的なリーダー、そしてリスク管理とコンプライアンスに精通した専門家の採用が不可欠です。これらの人材は、企業の持続可能な成長とIPOへの成功への道を切り開く重要な役割を果たします。

5. 持続可能な成長のための人材戦略

ここまで述べてきた通り、スタートアップが持続可能な成長を目指すためには、適切な人材戦略が不可欠です。この戦略は、企業が直面する課題に対応し、長期的な成功を確保するために重要な役割を果たします。以下では、持続可能な成長を支えるための人材戦略の要素について記載します。

長期的ビジョンと人材計画

  • 企業の長期的な目標とビジョンに基づいた人材計画が必要です。

  • 成長戦略と連動する人材のスキルセットと経験を明確に定義し、採用計画を策定します。

組織文化の構築と維持

  • 強い組織文化は、チームの一体感とモチベーションを高め、持続可能な成長を促進します。

  • 開かれたコミュニケーション、組織でしっかりと共有された価値観、継続的な学習機会の提供が重要です。

人材の多様性

  • 多様なバックグラウンドを持つ人材を採用することで、革新的なアイデアと解決策が生まれます。

  • 初期フェーズにおいては、同質性を大切にして、スピード感を重視する場面があることも否定はしませんが、多様な人材を抱える組織の方が、より変化に強い組織を構築できると思います。

従業員の成長と開発

  • 今回は、人材要件ということで外部からの採用を意識した記事になっていますが、当然ながら、従業員のスキル開発とキャリア成長を支援する体制も必要不可欠です。

  • 定期的なトレーニング、メンタリング、キャリア開発の機会を提供し、中長期的に働きたいと思える職場環境を創っていくことも、採用と同様に非常に重要なポイントだと考えます。

パフォーマンス管理とフィードバック

  • 最近は社員の自主性を重んじて、パフォーマンス管理を行わないスタートアップも出てきてはいますが、個人的な意見としては、効果的なパフォーマンス管理や、目標達成に向けた従業員サポートは必要不可欠だと思います。

  • 定期的なフィードバックと評価を通じて、結果的に従業員の成長と組織の目標達成にも繋がっていくと考えられます。

まとめ
持続可能な成長を達成するためには、戦略的な人材計画と組織文化の構築が重要です。長期的なビジョンに基づき、多様性を重視し、従業員の成長と開発を支援することで、企業は競争力を維持し、成功を持続させることができます。

6. おわりに:事業フェーズに合わせた人材計画の重要性

スタートアップの成功は、適切なタイミングで正しい人材を採用し、育成する能力に大きく依存しています。この記事を通じて見てきたように、事業の各フェーズに合わせた人材計画は、企業の成長と持続可能な発展の鍵を握っています。

初期フェーズ

  • 初期フェーズでは、多様なスキルを持ち、変化に柔軟に対応できる人材が必要です。

  • 限られたリソースの中で、最大限の成果を出すための多才で適応力のあるチームが重要です。

成長フェーズ

  • 資金調達後の成長フェーズでは、特定の専門知識を持った人材と効果的なリーダーシップが求められます。

  • 組織の拡大と目標の達成には、明確な役割分担と専門性の強化が必要です。

成熟フェーズ

  • 成熟フェーズやIPO準備では、高度な専門性と戦略的なリーダーシップが不可欠です。

  • 組織文化の確立、リスク管理、持続可能な成長のための戦略的な意思決定が重要になります。

持続可能な人材戦略

  • すべてのフェーズで、長期的なビジョンに基づいた持続可能な人材戦略の実施が不可欠です。

  • 多様性を重視し、従業員の成長を支援することが、企業の競争力と継続的な成功につながります。

最後に…
各事業フェーズに適した人材を計画的に採用し、育成することは、スタートアップの成長と成功の基盤です。企業は、長期的なビジョンを共有し、柔軟性、専門性、リーダーシップを兼ね備えたチームを構築することで、持続可能な成長を実現できるかと思います。

最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました!

疑問や質問、ご意見、ご相談等がありましたら、お気軽にご連絡頂けると嬉しいです。


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