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公園

あの春のうちに あのカラスが死んで
あの園児は卒業して あの木は撤去されてた
夢に出てきた空気は あまりにも冷たくて匂いを感じるには鼻が冷気に耐えられず 私はそのスッキリと透き通った青色をただ眺めるだけにしておいて 朝 目が覚めるのをずっと待っていた

夕暮れ あなたはいつも公園でタバコを吸ってから 私の家に帰ってくる
ベランダからその公園は見えるけど 大きな木が生やしていた葉っぱたちで少し身体を変な方向に捻らないとあなたが見えないのが少し窮屈だった
タバコの匂いが私の部屋までしてくるような しないような 気だるい猫背姿でタバコを吸っているあなたを 遠くから見ている時の方が なんだか3年前の私になれたようで初々しさに一人で照れた

あなたは私がここから見ていることを知らない
その猫背が携帯をいじっていて 私の知らない女と楽しそうに話していても 私がここから見ていることを 
あなたは知らない

そのまま家に帰ってくるあなたがまとったタバコの匂いを 私が作ったカレーの匂いが上書きするから それでいい

ギターをメルカラ?メルカリ?で売ったらしい
発送をしに行くんだって
深夜だからって そんなに大きな荷物をコンビニに持っていったら迷惑でしょう 集荷でいいのにね

そんなことも言わずに あなたを見送って
また公園の猫背を眺めて

でもいいの 今日は新しいシャンプーの匂いで全部上書きするから

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