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「答えが出るような内省はしない」- ミドルマネージャーを経験し気づいた大切なこと -

デザイナーという仕事を始めてからもう5年目が終わろうとしている2023年、年の瀬。 美大生だったあの頃と比べても『何者かにならなければ』という漠然とした焦燥感も徐々に消えさり、むしろ自身の仕事に対する真っ当な意味、意義というものを欲しがっていることに気づく2023年、年の瀬。 嫌な焦燥感と別れてから「自身が手を動かすこと」への執着も徐々になくなり始めたように思う。モノを作ることが嫌いになったわけではない。ただ、モノづくりにおいて、自分が手掛けていることに意味を見出しすぎてい

    • 監獄としてのメディア - 形式の恣意性からの脱獄 -

      この記事は Goodpatch Design Advent Calendar 2022 13日目の記事です。 ・   ・   ・ まえがき 豊かさを求めて私にはデザイナーを続けていく上でのポリシーというかスタンスというか、そういう一つの軸みたいなものがある。 それは思想のバランスを維持するということだ。 たとえば、 デザインの力を信じる自分/デザインを心から疑っている自分 良いUIの哲学を信じる自分/それは果たして我々人間のためなのかと疑う自分 などである。 常に

      • いつか読み返す用

        大好きだった服をたくさん売った お金が必要だったから 今、Nintendo Switchも売ろうとしてる ジムを解約した 意味がないと半年経って気づいたから 身体を鍛えることは心を鍛えることではないと知った そんなに追い込まれているわけではないだろうけど 人間 いつでも簡単に人生は崩壊するんだなと気づいた でも、それでもちゃんと朝はくるし 二度寝もちゃんとした 午前11時。昼前。 妻が入れてくれたコーヒーが冷めたままキッチンに置かれている。冷めたコーヒーが好き。熱々は嫌

        • 【憑依編】コントロールコントローラー

          この記事は Goodpatch Design Advent Calendar 2021 19日目の記事になります。 ・   ・   ・ “アニミズム”と“降霊”“アニミズム”とは アニミズムとは、生物や無機物を問わず、すべての「もの」に霊魂が宿っているという考え方のことである。目に見えない「霊的存在」を肯定した上で、それらがあらゆる物質に宿っていると考えるものだ。 アニミズムは宗教の成立/進化プロセスにおいても重要な考え方で、多くの宗教がアニミズム→多神教→一神教といっ

        「答えが出るような内省はしない」- ミドルマネージャーを経験し気づいた大切なこと -

          測量

          机が散らかっている時は、特に調子がいい日だった 夜2時を回ってからが僕の時間そのものだった お風呂に入るのが好きだった 曲を作って誰かに歌っているのが好きだった タバコは1日に5本 土日はずっと寝ている 運動はしない それほど腹は減らない 食べた皿はすぐに洗う よく笑う  夢は見るけど 悪夢はそんなに見なかった 雨の日は好きだった よく わざと濡れて家に帰った 映画が好きだ レイトショーは私の居場所だった 夢は大きく 寛大だった よく未来の話をするのが好きだった 同級生と会う

          東京

          東京は青森より寒いなんて知らなかった 雪も降らないし 人もこんなに多い 日もあたっているのにこんなに寒いなんて 知らなかったわ 駅のエスカレーターを降りているときに 冷たいビル風が私のまつげを上にあげる どんなに落ち込んでいたとしても それにしてもそれがつんざくように冷たくて もう泣いているのに涙が凍りそうで 私くらいの女は可愛くすら泣けないのね つくづく可哀想な女だわ なんてなぜ一人でこんなことを考えてしまうのだろう 最寄り駅 故郷という感じがしない 線路の反対側 あ

          公園

          あの春のうちに あのカラスが死んで あの園児は卒業して あの木は撤去されてた 夢に出てきた空気は あまりにも冷たくて匂いを感じるには鼻が冷気に耐えられず 私はそのスッキリと透き通った青色をただ眺めるだけにしておいて 朝 目が覚めるのをずっと待っていた 夕暮れ あなたはいつも公園でタバコを吸ってから 私の家に帰ってくる ベランダからその公園は見えるけど 大きな木が生やしていた葉っぱたちで少し身体を変な方向に捻らないとあなたが見えないのが少し窮屈だった タバコの匂いが私の部屋ま

          今日のこと

          バンドを辞めた レスポール、リッケンバッカーを売った 高いパーカーを売った あの時 喧嘩をした時に来ていた服は もう持っていない 車を廃車にした 緑のタントでどこまでも行った あの車内の匂いはもう2度と嗅げない 髪を切った あの時喜んでくれた髪型には 今はもうなっていない 引っ越した ずっと暮らしていた家とあの時初めて一緒に映画を見た部屋はもう僕たちの帰る場所ではない 自分から何かを手放すことを選択する日々の中で これまでの長い月日 手放さなかったこと、自分を 褒め

          今日のこと

          最近のこと

          解けた靴紐を結ぶために、一緒に歩いている人より少し前に出て結んでいる。よく考えると今までの人生はそんなことの繰り返しだった。 言えたことだけが気持ちであるなら、自分が頭の中から掴んで離さない世界で1番汚い言葉たちは、まだ私の気持ちではない。そう思うだけで少し優しくなれる気がした。 自販機の前に立つと、選ばれなかったあの缶ジュースの気持ちになって悲しくなる。130円の激安なラインナップでも選ばれない。 毎日ホームランを打つ彼に、嫉妬することがある。私は彼の至極個人的な地獄

          最近のこと

          ささくれ

          「お前は、私に似ているから嫌いだ」 と私が幼少期の頃、母は私にそう言って叱った。 何が原因で怒られていたのかはもう思い出せないけれど、その言葉を当時受けた私は、意味も分からずただ驚嘆していたことは思い出せる。 狭い1Kのアパートに水色のカーテン。所々シミがあった。落書きのクレヨンを消そうとして滲んだシミだろうか。 時計はちょうど14:00くらいを指していて、その日の夜はスパゲティだった。 明るい家族のいつもの夕食。いつもは出ないオレンジジュースが食卓にはあった。弟はとても喜

          ささくれ

          爪が切れない

          まるで何もできなかった。 食べた皿を洗えなかった。 干した洗濯を取り込むことができなかった。 靴は玄関で揃えられなかったし、ゴミは決まった曜日に出すことができなかった。 人間として当たり前のことができなかった。 当たり前を作った人間にたまに腹が立つことがあった。きっと世界で一番最初に当たり前を作った人間は自分ができないことは当たり前の定義には含まなかっただろう。そんな都合のいい裏工作をしていただろう。チッ。 そんな何でもないことをぼやぼやと考えていた私は今年で30歳になっ

          爪が切れない

          あげることば、とどまることば

          随分と“ことば”は語りやすくなったいつからだろうか、日本語を口で話すより、指で話していることの方が多くなったのは。 高校時代、帰りが遅い私を心配して母はよく私に電話をかけてきた。今思うといちいち電話ではなくてメールでいいのではないか。とも思うが、きっと母からしたら電話の方が手っ取り早く、心配な気持ちを解消するには1番良い方法だったのだと思う。それから私は地元を離れ、県外の大学へ。そして東京のデザイン会社に入社し、母の住んでいる地元からはどんどん離れていった。一緒に住んでいた高

          あげることば、とどまることば

          後輩に伝えたかった、“可能性の選択肢”の話

          卒業生として後輩に話す機会があった私はいまGoodpatchというデザイン会社でUIデザイナーとして働いています。昔から何かを作るという行為が好きで、高校の時は美術科専攻、大学では東北芸術工科大学でグラフィックデザインを専攻していました。 大学を卒業して就職してから約一年経った先日、Goodpatchの運営するデザイナー就活支援サービス、ReDesigner for Studentという事業部の担当者から、「母校の後輩に、デザイナーになった先輩としてアドバイスをしてほしい」と

          後輩に伝えたかった、“可能性の選択肢”の話

          わたしを視るわたしとそのほかの目の話

          1.人に接触しないわたしを除けばあるウイルスの爆発的流行の末、各国の政府はこの問題を解決するため、国単位での政府を解体し、「世界政府」を発足。それが誕生したのちの最初の政策が世界封鎖要請であった。これまでは国単位での外出自粛がせいぜいなところではあったのだが、すでにウイルスは猛威という段階を超え、わたしの肌感としては私たちを乗っ取りにきている。というのが素直な感想である。 自粛生活から外出禁止に移行してからというもの2年の歳月が過ぎた。わたしは自粛時代以前からすでに一人暮ら

          わたしを視るわたしとそのほかの目の話

          電車と鏡の線形認知について

          その日、彼女は緑色の電車がこれから彼女を運ぼうとしている電車を待つためのホームに立っていました。 彼女の名前は、いわゆる昭和のような香りのする素敵な名前だったと思います。最近はあまりそのような雰囲気の名前を見聞きする機会はなかったものですから、彼女に周囲の人たちは彼女を常に名前で呼びました。あだ名はなく、彼女はずっと名前で呼ばれ親しまれて生活をしていました。 季節は春先にも関わらず、まだ冬の匂いを残していましたし、暖冬とは呼ばれていましたがそれでも都会はビル風というものが

          電車と鏡の線形認知について

          【接触編】コントロールコントローラー

          この記事はGoodpatch UI Design Advent Calendar 2019の13日目の記事です。 序文私は別に学者ではないが 私は別に詩人ではないが 私はその手の話には詳しくはないのだが それでも考えてしまう  想いを馳せてしまうものがある それはいつしか私たちを操っていて、同時に私が操っている  世界の全て、もっというならば決して触れることはできないであろうその虚構。 そしてそれに触れることができる錯覚 コントロールはいつも私は持っていた そして私はコ

          【接触編】コントロールコントローラー