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参考にならないHow to★作詞家になるには[17] 完結

ここまで長々とお読みいただき、本当にありがとうございました。

作詞家になりたい方には本当に何の参考にもならなかったと思いますが、何かもし、出逢いや縁、タイミングや夢など、ご自身と重ねて感じていただけることがあれば幸いです。

スマイルカンパニーと契約後から、当然すぐにたくさんのお仕事をいただけた訳ではなく、その16年後にスマイルカンパニーとの契約を解消し現在、まさに今日にいたるまで肩書ではなく

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参考にならないHow to★作詞家になるには[16]

後日スマイルカンパニーの事務所で部長さんとの面談があり、明日香に提供していた歌詞をネットで事前に見てくれていた部長さんは2つ返事で「是非うちに所属してください」と言ってくれた。

社長とは契約書を交わしていたわけではなかったしほぼほぼ仕事ももらっていなかったので軽い気持ちで、いや、私を作詞家にしようとしていたのだから、どちらかと言えば喜んでくれるかも知れないとすら思いながら「スマイルカンパニーと作

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参考にならないHow to★作詞家になるには[15]

社長が「うちと契約して作詞家になれ」と言い、私が「作詞家になりたい」と言ってから2年が過ぎた。

明日香との友情は続いていたけれど、明日香が成長して自分で歌詞を書けるようにもなり私が歌詞を書くことはほとんどなくなって来ていた。

「社長、暇なんですけど」
「社長、どうしたら作詞家になれるんですか」

給料が出るわけではないので土日のアルバイトに復帰していた私が時々社長に連絡を入れると、社長もなんと

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参考にならないHow to★作詞家になるには[14]

その日三浦徳子さんは、「劇場版ポケットモンスター アドバンス 七夜の願い星 ジラーチ」の主題歌となる「小さきもの」の作詞の打ち合わせをしに会社を訪れたのであった。

三浦さんが社長と打ち合わせ中は同席しなかったけれど、お帰りになる時は一緒にお見送りをした。
三浦さんの姿が見えなくなってから私は慌てて社長に駆け寄った。
「今の方、作詞家って言ってましたよね…?!」
社長はまたコイツ訳の分からないこと

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参考にならないHow to★作詞家になるには[13]

「作詞家ですか…」

そうして私は作詞家になった。
と言いたい所だが、この時私は「作詞家」とは「明日香の作詞を担当する人」という意味で、この会社内だけでしか使われない社長の造語だと思っていた。

今となっては不思議でならないが、本当に20年間私は「作詞家」という言葉を避けていたかのように出逢わずに生きてきていた。

さて、何にせよ私は会社をクビになった。
私の書いた歌詞が5曲収録された、明日香の1

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参考にならないHow to★作詞家になるには[12]

食事会は進み、お酒も進み、酔っ払った社長が調子に乗ってふいに明日香のことを
「うちの商品が…」
というような言い方をした。

また酔っ払ってる…
明日香のご両親の前でも同じ言い方ができるのだろうか。
社長のお酒の飲み方に対する日ごろの苛立ちがパチンと弾けた。
「社長、明日香は物ではありません」
他社の社長さんの前にも関わらず私はニコリともせず冷たく言った。

社長も社長で私の仕事ぶりに対する日ごろ

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参考にならないHow to★作詞家になるには[11]

私がマネージャーになってから半年後くらいだろうか。
2003年1月22日、明日香は「ake-kaze」でデビューした。

デビューまでにレコード会社、ラジオ、テレビ等、ご挨拶回りの予定が次々と舞い込む中、PVの撮影、2枚目のシングル「母」のレコーディング、それに参加するミュージシャンのブッキング、大きなスタジオの予約、国内のみならず日中韓同時デビューだったのでデビューライブイベントのリハーサル調整

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参考にならないHow to★作詞家になるには[10]

明日香のマネージャーとして東京と大阪を行き来していた私は、その日も大阪のホテルに1人滞在していた。

ベッドに寝ころんで翌日のスケジュールを確認していると、社長から1通のメールが届いた。
「この曲に歌詞つけてみな」
居酒屋で出逢った可愛いカップルの、彼女の子が作曲した曲が添付されていた。

作詞をしたことがなかったのでどのような形の音楽が流れてくるのか想像もつかなかったけれど、一先ず流してみた。

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参考にならないHow to★作詞家になるには[8]

一緒に住むと言われて口をあんぐりと開けていた社長も明日香の寂しさは重々承知だったので、私と明日香が本気だということを何度も確認すると苦肉の策とも言える提案をした。

「オレも明日香を親御さんから預かってる立場としてよぉ…
同居人ってわけにも行かねぇから…
じゃぁ~…もうさ、あこ、お前明日香の現場付きのマネージャーになっちゃえよ」

私は結局履歴書を提出することなく、結局その会社に就職することになっ

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参考にならないHow to★作詞家になるには[7]

明日香の顔を見て親心が疼いたのか急に社長が
「ちょっと、飲みもん買ってくるわ、2人でなんか話とけよ」
と言って出かけて行った。

「座ろっか」
私が言うと明日香もうんうんと頷いて私達は近くにあった椅子にそれぞれ腰掛けた。
不思議と初対面の私達の間に気まずさなどはなく、それどころか私は彼女を一目見た時からもう、とっても彼女のことが好きであった。
まだ本当に彼女があの歌声の主なのかは半信半疑だったけれ

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参考にならないHow to★作詞家になるには[6]

「歌詞を書きなさい」
そう言われても全然ピンとこなかった。

当時私は漠然と音楽を作る人は全員、何かしらライブやテレビなどの表舞台に立っているのだと思っていたのだ。
例えばTKのような作詞作曲もするプロデューサーがいるとか、バンドならバンドメンバーがそれぞれ作るとか、歌手なら本人が作詞や作曲をしているのだと思っていた。

「作曲家」と言えばベートーベンやバッハ、モーツアルトのことで、J-POPを作

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参考にならないHow to★作詞家になるには[4]

居た堪れない空気の中
「じゃぁ…スタジオでも見てくか」
と言って社長が席を立ったので、私も慌てて席を立った。
つい5分前に社長の後について入ってきたばかりの扉を通り、上ってきたばかりの外階段を下りた。

そして社長は1階の駐車場の奥にある、大きな扉のレバーに手をかけた。
開けてみると40cm、50cmも幅がありそうな鉄製の分厚い扉。
「おお!レコーディングスタジオっぽい!!これこれ!イメージある!

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参考にならないHow to★作詞家になるには [3]

ガチャっと社長が会社のドアを開けて中に入り、私も中へと通された。
入り口からすぐのところに長方形の大きなテーブルがあり、会社員らしき男性が2名、女性が2名、私から見たら向こう側に横並び一列に座っていた。
社長は、その人達の真ん中にちょこんと座ると私に「どうぞ」と言って、社長の対面に座るよう促した。

長方形の机の向こうに5人の大人。
その向かいに1人の私。
なにこれー。面接みたい。
と思った矢先、

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参考にならないHow to★作詞家になるには [1]

参考にならないHow to★作詞家になるには [1]

「作詞家になるには、どうしたらいいですか?」
時々このようなご質問をいただく。
そんな時、私はとても困ってしまう。

私が作詞家になった経緯は、きっと誰の参考にもならない。
「作詞家」という職業がある事を知ったのですら、
私が歌詞を書いた曲がCDになって世に発売されてからであった。

19歳の時、私は池袋の焼き鳥屋でアルバイトをしていた。
今はもうあるか分からないけれど、池袋のメトロポ口リタン出口

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