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中学校の評定問題についての一般質問

令和6年3月定例会の一般質問で取り上げた質問です。新年度に入り、新たに1年生が入学したこともあるため、今一度、質問の際に取り上げた内容を整理しておきます(動画はyoutubeでご覧いただくことができます)。
https://www.youtube.com/watch?v=uCyxuAvIGrA
※具体的な事案については個人情報の問題があるため差し控え、報道や他自治体等で既に発信・公表されている内容を参考として、一般質問を行いました。以下は長文になります。

1.発表された内容と問題点

令和6年1月に「浮羽中3年の通知表評価に誤り」ということで、西日本新聞の紙面で2回に渡って取り上げられました。中学生の皆さん、保護者の皆さんの中には当時「どういうことかな」と気にかかった方もいらっしゃったと思います。まず1/17に西日本新聞に中学3年生の誤評定について記事が掲載され、同日午後にメールが配信、夜に緊急で保護者会が開催ということで、必ずしもおおぜいの保護者が参加出来る形ではなかったと記憶をしております。その後1/19に「通知表の評定の誤りについて」として保護者向け連絡ツールで、2教科の評定の誤りについて発信されました。

〇入力ミスが起きていた。
〇入試の時期に動揺や不安を与えてしまった。
〇高校入試の出願等に影響はない。
〇今後の対応として、作成に係る手順や、確認方法の改善を図るとともに、チェック体制を再度見直すことで再発防止に努めていく。
 
学校側文書に記載されていた内容は、おおむねこのような情報でした。その時点で私なりに問題ではないかと受け取った点は下記の通りです。
 
まず1点目、「入力ミス」。これは各教科1人の担当教諭の方が入力・確認されていたということで、いわば「ヒューマンエラー」です。ヒューマンエラーそのものは、私たち誰もが起こします。今回は、そのヒューマンエラーが最後まで点検、修正されなかったこと、つまり組織として見落とされていたという点が問題だと思っています。
 
次に、入試の時期に動揺や不安を与えてしまったということ。中学3年の2学期から3学期という時期は、高校入試では非常に重要な時期です。その時期に当該学年の子ども達、そして見守っている保護者の皆さんに多大なる動揺や不安を与えてしまった、通知表に対する信頼性を揺らがせてしまったということです。
 
3つ目、「高校入試等の出願等に影響はない」という記載ですが、福岡県教育委員会「一般入試での合格者の決定方法」では「調査書を積極的に活用」とされています。受験生をAの群、Bの群でわけているわけですが、このBの群に該当する生徒にとっては、中学校から提出される調査書というのは、実は非常に重要に感じられるのではないかと思います。

「令和6年度入試に向けて 県立高校を目指すみなさんへ」  より
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/198521.pdf

※なお、推薦入試は学校による基準をクリアしなければなりません。

今回、報道で取り上げられた評定の付け方、担当教諭1人の方が入力し確認したものが最終的な評定となる、別の方によるWチェックが入らないという方法は今年度のみの付け方ではありません。今までも同じようなヒューマンエラーが起きていた可能性も否定できないことを考えると、この「影響がない」と断言するような形で発信されたことはどうだったのだろう…と感じます。

そして4点目です。「今後の対応として、作成に係る手順や確認方法等の改善を図るとともに、チェック体制を再度見直すことで再発防止に努めていく」と記載がありました。

2.類似の問題から

生徒・保護者側から見て類似の問題・・・一例としては堺市で類似問題が発覚した際に、学校運営、リスクマネジメント、行政法務、保護者の観点を有す「外部有識者」によって構成された委員会が報告書を作成されていたので、調べてみました。学校側、教育委員会事務局側、それぞれに対して調査され、誤記載発生の原因が抽出され、再発防止策の具体化や進捗管理が行われていました。他の自治体のものですが、実はこのうきは市の教育現場にとっても同じような課題があるのだろうと感じました。まず学校側の課題になります。
〇調査書作成事務の重要性の認識が低い。
〇校務分掌や、学年集団の枠組みを超えて積極的に関与しない風土が、校内の組織体制が形骸化する要因。
〇「事務作業は人が行う限り間違えるものだ」という前提で点検が行われていない。
〇誤記載のない学校においても、教員個人の自発的取り組みにより防いでいた可能性。などが取り上げられています。
次に教育委員会側です。
〇一般にインシデントは何らかの問題が発生してアクシデントになる一歩手前の状況と言われているが、重大なインシデントとしての対応が不十分で、重要性の認識が低い。
〇誤記載発生事案要因の掘り下げが不十分。
〇学校に調査書作成事務を委ねてきた。等がありました。
こちらもうきは市も同様の課題だと感じました。

次に再発防止策です。まず学校側は     
〇管理職含め各役割を明確・厳格に示す。
〇業務に専念できる時間を設定する。
〇学校評価の項目に設定するなど仕組みを構築する。
〇出願前に、調査書を生徒・保護者に開示する。
次に教育委員会側は           
〇制度的な仕組みを構築する。
〇進路指導に関する事務体制を検討する。
〇教員と連携して再発防止策を進める。
〇作業工程の削減やシステム導入を検討する。
〇誤記載発生時は全て公表する。 
これらが指摘されていました。他にも、教職員の意識や作業成熟度についての検証、「組織」としての課題や対策の硬直性・緩慢性などについて、そして委員の方からの意見などが掲載されていました。これらを踏まえ、3月定例会では改めて本市の誤評定問題について私なりに課題を抽出し、一般質問で確認をしました。

自身が大変際どいところにいると認識している生徒にとって、まさに受験まっただ中に「自分の評定がそもそも正しいのか」と疑ってしまう大変苦しい事案です。1事案として矮小化せず、今後、同様の苦しい状況におかれるケースが生まれぬようにするために、評定に対して客観性・信頼性が担保されることが重要だと考えます。

3.今後にむけて

堺市の再発防止策の中で学校側には「業務に専念できる時間を設定する」といった記載があり、また、教育委員会事務局側にも様々な再発防止策があげられていました。教員の働き方改革・学校の管理運営体制の見直し・予算措置に関わってくるような、そうした非常に重要なテーマだと認識し、一般質問で市長、教育長それぞれに考えをうかがいました。
 
ちなみに、文部科学省初等中等教育局教育課程課が「新学習指導要領の全面実施と学習評価の改善について」として令和元年に出されている資料があります。
その中には「学校が学習評価を行う上での留意事項」が記載されています。
「評価方針等の児童生徒との共有」です。学習評価の妥当性や信頼性を高めるとともに、児童生徒自身に学習の見通しをもたせるため、学習評価の方針を事前に児童生徒と共有する場面を必要に応じて設けるとあります。
また、教師の勤務負担軽減を図りながら学習評価の妥当性や信頼性が高められるよう、学校全体としての組織的かつ計画的な取組を行うことが重要、とも記載があります。
さらに、教育委員会側には妥当性のある信頼性のある学習評価の作成にいたるための条件整備として、教員研修の実施や、各種資料の作成、統合型校務支援システム導入の推進などが記載されていました。
「新学習指導要領」が中学校で全面実施されたのが、令和3年度、そして問題発覚が令和5年度第4四半期のタイミングです。この間、うきは市教育長人事は前任の方から現教育長に変わられています。つまり、この間、複数おられたわけですが、誤評定発生の可能性がある方式について校長経験者である教育長の方々が課題として認識されてこなかった、あるいは問題として見落としてきたということです。

ちなみに、評価方針等の生徒との共有について、一般質問では他自治体の参考として千葉県船橋市の中学校の「指導と評価について」と言う資料をベースに確認をしました。こちらでは、知識・技能、思考・判断・表現、そして主体的に学習に取り組む態度の3観点それぞれABCの3段階で評価し、5段階で評定を決定するということが年度はじめに生徒・保護者に開示されています。また、9教科全てで年間指導計画も開示され、そのいずれもがホームページ上でいつでも閲覧できる状態に整備されています。

ふりかえって我がうきは市です。全国各地に「信頼性のある学習評価を行うための環境整備」に努めている学校があるわけですが、こういったことが、教育委員会で議論されたことは過去遡っても把握できませんでした。
学校がベースであることは重々承知をしていますが、文科省は「教育委員会による条件整備」を明確にあげています。一例としてあげた船橋市の場合は、市内中学校それぞれが同様のデータをアップしています。また、多くはありませんが、全国各地で同様の取り組みがなされています。

西日本新聞報道後の1月の教育委員会定例会について傍聴しましたが、その際にはそうした議論はなく、また過去の会議録で情報開示されている分から「これだ」というものも見当たりませんでした。「総合教育会議」についても、主催者である市長に一般質問で確認をしましたが同様に議論されておらず、その問題発覚時点での報告等はなされていませんでした。その後、臨時委員会が数度開催されたとのことでしたが、やはりうきは市教育委員の皆さんや市長部局の皆さんにも、生徒・保護者と同じレベルで「評定の信頼性」について真剣に危機感をお持ちいただきたいと感じました。

「中学校の成績で人生が決まるわけではあるまいし」とお考えになる方もいるでしょう。しかし、大学へ行かねばつけないような、特定の職業もあります。そして目標とする大学へ行くために、一定レベルの高校を目指す子どもたちがいることも事実です。また、生徒たちにとって、日々の頑張りを適切に評価してもらえなかった、ということはやはり残念なことだと思います。

学校の教職員の皆さんが多忙だということは重々承知していますし、一保護者としては、熱心に関わって下さることに大変感謝しています。
だからこそ、こうしたミスで教職員の皆さんがさらに追い込まれるような、つぶれてしまうような、そういった危険な状況を、今後作って欲しくないと思っています。

「きっと教科担当が適切にデータを入力しているはず」や「きっと学校側の管理職がきちんと指示を出してしているはず」といった希望的憶測ではなく、「どの教師でも、どの学校でも、ヒューマンエラーは起こりうるもの」「重大なインシデントを見逃さない」という基本認識のもと、組織的な再発防止に取り組んで頂きたいと考えます。 

「教職員の業務負荷を減らす」という観点から考えますと、例えば2学期制を導入して1日当たりの時数を減らす、そして評価回数を減らす、こういった取り組みをしている県内の事例もあります。また、例えば水泳指導などを民間事業者へ出したり、職業観についての学習コーディネーターに民間企業のスタッフを導入したりと、民間との連携をはかることが結果として教職員の業務負荷減少へとつながっている自治体もあります。チーム担任制も1つの方法だと思います。

今回の評定ミス発覚を契機とし、再発防止策の立案と予算措置を検討して頂きたいです。マニュアルを整備したり、業務フローを作成したりするのは当然のことですが、やはりしっかりと「学習評価が1つの業務として取り組める、他の教職員とも共有できる時間・環境を整えること」が必要だと考えます。その為には予算が伴うのですから、市長部局がしっかりと関わる意識を持っていただきたいと思います。

また、何人かの保護者の方々とお話しさせていただく中で、「子どもの教育に力を入れるご家庭にとって、真剣に転居を考え始める1つのきっかけになるのではないか。子育て世代の市外流出に繋がりかねないのではないか?」と怖さも感じました。子育て世代=市税を支える生産年齢真っただ中の方々です。市全体の課題です。大きな危機感を持って誠実な対応を進めていって欲しいと願っています。

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