持論を鍛えるには - 輪読会を企画してみた話
昨年、コンピュータサイエンス教育に関する英語論文をテーマにした輪読会に参加した。教育に関わるさまざまな方々と時間をともにすることができ、新しい出会いと大きな刺激をいただいた。
このときの経験から、うっすら、自分でも場づくりをしてみたいと思うようになった。そして今年2月、関わっている複数社の女性リーダー5名に声をかけて輪読会を開催してみることにした。
持論を鍛える機会をつくりたい
日頃、リーダー職のメンバーと話す機会が多いのだが、そのたびに持論を鍛える機会が必要なのではないかと感じていた。
具体的なアクションは十分やっているが、上長やメンバーからの意見に振り回される
抽象的な議論になると、分からないと感じる
全体的な文脈から「あなたはどうしたいの」「どう考えているの」と問われると思考停止する
結果、やることはやっているのだが、なんだか自信が持てない
リーダーになると、関わるステークホルダーが増える。ステークホルダーの数だけ時間軸と持論があり、思惑が複雑に絡み合う中で、何を描いてどう進めていくのか。
自分軸が問われる。
輪読会の進め方
こういった背景から、具体と抽象を行き来する機会をつくりたいと思い、5名の女性リーダーに声をかけてやってみることにした。
1.題材を選ぶ
今回は、書籍『組織論再入門』を題材にすることにした。
数年に一度読み返している本なのだが、これを選んだ理由はいくつかある。
組織論がマクロ、ミクロの視点で整理されているため、今回の狙いである「具体と抽象を行き来する」というテーマに良いのではないかと考えたから。
2005年に発刊された本で、色褪せない部分がほとんどなのだが、時代の変化とともにフィットしない価値観やエピソードもあり、その差分が面白いのではないかと思ったから。
まあまあボリュームがあるため、きっかけがなければ手に取ることはないかもしれないし、輪読会だからこそ読み切れた、みたいな機会になればいいなと思ったから。
2.大まかなスケジュールを立てる
輪読会のコンセプト「具体と抽象を行き来する」にあわせて、「第1部ミクロ組織論」「第2部マクロ組織論」が交互になるよう配置した。
3.事前にスライド/ポストイットを作成してもらう
事前準備として、持ち回りでまとめスライドを作成してもらった。
私も1章分を担当したのだが、実際にスライドを作成してみることで気づくことは多い。人に伝えるために自分なりに整理してみたり、どこをスルーしていたのかが分かったり。
つくってもらったスライドには、参加者全員に感想や気になることをポストイット(色がついているボックス)を書いてもらった。
ここまでが各回の開催前にやったことだ。スライドは計166ページになった。
4.ポストイットベースで意見交換
輪読会は、1回60分で以下のように進行した。
各章のボリュームが多かったため、メンバーが気になったスライドを中心に3〜5くらいトピックを取り上げた。ポストイットの事前コメントを拾ったり、もやもやすることや経験談を振りながら議論の活性化に努めた。
5.学んだことを使えるようにする
インプットだけでなく、持論を鍛えることを目的としてたため、最終回では簡単なワークに取り組んでもらった。
職場では、概念的な説明をするのに、しばしば例えが用いられる。世代によっては野球やゴルフに例えられることが多いように感じるが(私はキングダムを多用していた…)、好きなことで例えることは、抽象的な内容を手触り感をもって表現する練習になるのではないかと考えた。
学んだフレームワークを子育てに例えたメンバーが、「自分にはマネジメント経験がないと思っていたけど、子育てに置き換えて考えたら、やってきていることに気づいた」とシェアしてくれて、胸がいっぱいになった。
何度も読んでいた本ではあるが、輪読会を企画してみて、私自身、具体と抽象、そしてフレームワークと実際のところを行き来する良い機会になった。
今回は、対象者を女性リーダーに絞って企画した。
分からないことを分からないと言える環境が大事だと思ったからだ。
キックオフでは、「女性リーダーだけが5人も集まったこと自体が新鮮」という声をもらった。私も新鮮だった。
1社で見ると、リーダー職の女性はまだまだ少ない。しかし複数社が集まれば、リーダー職の女性が多くいる環境をつくれる。キャリアのロールモデルという観点でも、所属を越えた場をつくっていきたい。
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