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同じ言葉と知識を持たなければ、対等な関係は作れないし、アイデアも生まれない

使う言葉と知識の量が違うのって何が駄目なんだろう、を考えてみた。で、いわゆる言葉遣いだったり知識の立場の非対等性が強まっちゃうと、嫌でも上下関係が発生してしまい、結果としていいアイデアが出づらくなるよね、ということなんじゃないか。

デザイナーなら、デザインスプリントという言葉を耳にしたり、実践したりした人は多いかもしれない。上記に紹介した本は、個々人が持つたくさんの情報を発散し、まとめ、最適解を選択していくものづくりの手法について言及している本だが、実際に中を見てみると思った以上に「事前打ち合わせ」を重要視している。

事前打ち合わせとは、例えばこんな内容だ。

- この本に書かれていることを実践するための準備とプレゼン練習

- 参加者と自分が持っている自社商品に対するイメージを共有する

- 参加者と自分が持っている商品の事実や仮説を共有する

- 参加者と自分が持っているゴールとゴールではないことを共有する

- 参加者と自分が持っている顧客に対するイメージを共有する

- 参加者と自分の自己紹介

- メンバーは同じ付箋、同じペンを必ず使う(ので事前にPostItと水性ペンを人数分用意)

これは本の抜粋だが、全部行おうとすると1日で終わってしまう。
私はいくつかを短縮して実践してみたが2h以上かかり、声はガラガラに枯れ、あまりの「準備」の多さにぐったりとしてしまった。

この準備の多さの理由は、本書に詳しい人物に教えてもらうところ「メンバー間が同じ言葉を使うことで、あらゆる認識を合わせることができるから」であった。彼いわく、付箋に書かれる棒人間も同じように書く必要がある。(本にも書いてあったかな。)

活発な議論を生み出すためには知識レベルを一定にしないと尋問型の会話になるリスクがある

「裁判とことばのチカラ―ことばでめぐる裁判員裁判」では、裁判で行われる会話を徹底分析している。

この本曰く、裁判員と裁判官はそもそも立場が違う。裁判官の方がどうしても偉くなってしまう。それはなぜかというと、法律や考察の知識は圧倒的に裁判官のほうが多いからである。使う言葉と知識の量が違うと、対話中に立場の非対等性(上下関係)が強まってしまう。上下関係が強まってしまえば、一般人は萎縮してしまい、活発な議論を生み出しにくくなる。
事実、尋問型評議や取り調べ型評議は裁判員個々人の満足度も低いものとなるらしい。

Design Sprintを実践するにあたり、事前打ち合わせが大事なのは下記の理由だろう。

役職の差や知識の差によって引き起こされる尋問型のディスカッションをなるべく避け、複線型の会話を活性させることによって素晴らしいアイデアを生み出しやすくするため。個々人の工夫としてできることは、使う言葉と知識を一定にすることである。

まとめ
- 使う言葉と知識の量が違うと立場の非対等性が強まり、嫌でも上下関係が発生してしまい、いいアイデアが出づらくなる
- みんなと同じ言葉を使い、みんなと同じ知識を持つことで対等な関係を保つことができる
- 色んな人から意見が出てきて会話が活発になると、チーム満足度が高くなる

余談: 複数人間の会話が活発である場合、チームの満足度も高まる

ちなみにDesign Sprintではファシリテーターの準備や進行方法においてもかなり詳細にかかれており、その詳細度だとか文の表現だとかはまるで今日入ってきた新人が司会を行えるかのような細やかさである。

裁判の場では、裁判長がファシリテーターを務めることになる。

裁判長の発話内容の傾向をまとめた図表が「裁判の〜」で紹介されており、これが興味深い。裁判長は命令や支持を求める他、参加者に自由発話行為を求めたり、論点のまとめや確定、発話者を指名する傾向にあったとされている。つまり、聞き手に回っていることを表し、おそらくその意図としては複数人の間でのディスカッションを促進するためとも言える。また、複数人の間で行われるディスカッションが活発な評議ほど、個々人においての満足度が高くなる傾向があるという解説もされていた。

ここから、ファシリテーターが聞き手に回るために様々な注意を払うことによってもまた、チーム満足度の高いディスカッションを作ることができるということがわかった。


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