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「まず、Bonjourだろ?」

昨日の朝、マルシェへの道すがら。
配達の車の荷台から届け物を手に取り、
車道から歩道に入ると、
軽やかな足取りで、
私の斜め前を歩き始めた青年がいた。

と、その青年は、左手のアパートから
これまた軽やかに出てきて
私たちの前を横切った
別の配達青年に、声をかけた。

「あ!コード教えて」。

パリの建物はほとんどの場合、
入り口でコード番号が必要だ。
配達伝票にコードの記載がなければ
配達先に電話をかけて
確認しないといけない。

すでに自分の車の方へを戻りかけ、
車道に出ていた2人目の配達青年は
振り返り、一瞬、間を置いてから言った。

「その前にまず、Bonjourだろ?」

お?!
配達青年その1の左斜め後ろを歩いていた私は
思わずその2人のやりとりに釘付けになった。

青年2人はおそらく北アフリカ出身で、
同じアクセントとリズムを刻む
若者特有のフランス語だった。
最初に、配達青年その1が声をかけた時
仲間かと思ったのだが、
仲間であれば近寄って行って、
肘をコンっと合わせるなり
なんらかの触れ合うコミュニケーションが
あったんじゃないかと思う。

想像に過ぎないけれど、たぶん、
配達を済ませたばかりと思しき同業者に
配達青年その1は、声をかけたようだった。

「あ、うん。そうだな。Bonjour」

青年その1はとても素直に、
こんにちは、と返した。

それを受けて、青年その2は
5桁のコード番号を答えた。

「Merci !!」

青年その1は、片手を上げながら
ありがとう!と言って、建物の前に進んだ。

おいおい君たち、そんなに大声で
入り口のコード番号を伝えちゃって……
とも思ったけれど、それよりも、
たしかに、まずはBonjourだよな
と頷きたくなる気持ちの方が強くて、
ちょっといい光景見ちゃったな〜
とマスクの内側でにやけた。


その、朝の嬉しさが尾を引いてか、
午後、また少し、出かけることにした。
最近リピートしている近所のパン屋さん
ジョヴァンニへ。
あれから、何度か行ったのだけれど、
仕事がひと段落ついた夕方、
5時過ぎに行くと、ものの見事に
ほとんどが売り切れているのだ。
あるのは、いつだって、
フランとバゲットのみ。
それで、おととい聞いた。
何時までに来ればあるの?と。
「そりゃぁ学校が終わる前だよ」。

そりゃそうだ。
学校が終わるのは16時半。
みんながおやつを買いに寄る前に、
行くべし。

それで16時に行ったら、
ちゃんとクロワッサンもパンオショコラも
ブリオッシュ・フイユテもあった。
ブリオッシュ生地を折り込んだ
ブリオッシュ・フイユテに私は目がない。
ジョヴァンニさんとこは
とても良心的な値段が付いていたから、
卵とバターの量が控えめなのだろうと
察した。

買って帰ってきて、ひとかけだけ味見
と、おやつに食べて、メインは今朝。
卵の風味が優しく薫るブリオッシュ・フイユテに
りんごをポワレした。
いちばん好きな品種のりんごはまだ出始めで
生産者さんに「酸っぱいわよ」と言われたので、
焼いて食べる用のりんごを5つ買った。
「この品種、たしかローストにいいですよね?」
と聞いたら
「ローストじゃなくてポワレね!」
と言われた。
(フランス語は、何で焼くか、で言葉が違う。
オーブンで焼くのが、rôtir=ローストする。
フライパンで焼くのが、poêler=ポワレする)
言わんとしていることは、きっと
オーブンで丸焼きすると、焼き崩れてしまう
ってことじゃないかと思う。
それも嫌いじゃないけれど、
せっかく教えてくれたから、ポワレにした。

クレーム・フレッシュを添えて。
この、ぽってり濃厚なのが、好きなんだよなぁ。
(泡だててないです)


また明日。


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