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「スモールステップ」とは言うけれど


 スモールステップとはちょっぴりがんばればできそうな、手の届きそうなことを目標にするやり方のことです。

 ある高さまであがるのに階段があるとします。難なくあがれる人もあれば、その段の高さに圧倒されて登れない人もいます。でも、一段ずつの段を低くしてあげれば登りやすくなります。そういうふうに、課題を細かく分けて一つずつクリアできるように手助けするのがスモールステップの支援の考え方です。

国立障害者リハビリテーションセンター webサイト "基本的な支援原則" より抜粋
http://www.rehab.go.jp/ddis/howto/study/principle/



今回はまじめなお話しです٩( 'ω' )و   長いぞ!

数週間前のEテレ「でこぼこポン!」のテーマが「スモールステップ」でした。(その日のうちに、記事を書き始めたけれど、投稿できぬまま数週間。。。)

発達障害の支援の場ではよく使われる概念で、いきなり高い目標設定を行うのでは無く、本人が受け入れられる高さにハードルを調整しながら、少しずつ段階を踏んで「できた!」を積み上げていく方法です。

子供の発達の特徴と向き合い始めて約1年半、あきこさんは、いまだに他所の芝生が「全方位的に」青く見えてしまう気持ち、また、そんな自分の浅ましさが嫌だ、という気持ちと、日々何とか折り合いを付けている状態ですが、この「スモールステップ」の考え方は、子供の特徴のお陰で出会うことが出来たギフトだと素直に思える考え方の一つです。

番組の中では「ダンスをする」というハードルが高すぎて「どうせ出来ない。。。やりたくない!」と取り組む事自体を受け入れられない男の子に対して、以下のようなステップを段階的に提示していました。

  1. 他の子が踊るのを見てみる

  2. (1.が出来たら)準備体操をしてみる

  3. (2.が出来たら)全体の流れの中の一部だけを取り出してやってみる


この「スモールステップ」の考え方は、何も子育てに限ったことでは無く、お仕事の場でも使われている概念だと思います。私は娘の特徴と向き合う中でこの概念を知った時、過去に仕事の場において、「この方と一緒にお仕事すると、何だか自分の本来の実力 プラスα の力が発揮できてしまうな」と感じる上司や同僚の方に何人か出会ったことを思い出しました。

出会った職場も役職もバラバラなその方達は、共通して、「相手に合わせた目標設定や提示の仕方」が上手な方だったなと振り返ります。(利益を最大化するという目的のあるビジネスの場合にはどうしても少し"ストレッチ"な設定になることが多いので、特別なニーズを持つ子供のお母さん業 初心者のあきこさんはビジネスの世界で身につけた自分の中の「ストレッチ癖」にも気をつけなければなりません。)

特別なニーズを持つ子供達にとっては、育児書上の「○歳位でこういうことが出来るはずなのでこういう接し方を心掛けましょう」と書かれている事や、学習指導要領上で「○年生はここからここまでを学びます」というゴール設定自体が本人にとって高すぎる(もしくは低すぎる)ことはままあると思います。

一般的なゴールをそのまま提示すると、挑戦する前に本人の心が折れてしまいます。また、サポートする保護者側が「(こちらとすればもう既に十分おマケしたつもりだし)せめてこれくらいはやって欲しい!」と「今の状態の本人」に不相応なゴールを押し付けてしまうと、本人のやる気の消滅だけでなく、親子関係にも悪影響が出てしまいます。一方で、本人の機嫌を損ねたく無いからと、ハードルを低くしすぎると、力に応じた必要な訓練ができず、本人なりの社会適応のための力がいつまでも身に付かなかったりで、本当に、難しい。。。(。・ω・。)

療育の場で私が「ありがたや〜」と感じているのは、支援者の先生が娘の「今」の状態を確認しながら、ハードルの高さを絶妙に調整したり、面談の場で迷える保護者(私)に場面ごとのハードルの調整のヒントをくださったりするところです。

例えば、食事前などの不適切な時間に子供がアイスクリームを欲しがったとき。教科書通りにお野菜やお夕飯の一品、もしくはバナナあたりで納得もしくは妥協できるなら悩むことは無いと思いますが、それでは到底納得できず暴れそうな場合。

一般的な育児書には「お母さんはここで絶対に折れてはいけません。生きる上で必要不可欠な「欲求不満耐性」を育むために、"アイスはご飯の後で" という枠組みを淡々と明示して、安全を確保して好きなだけ暴れさせましょう。お母さんは暴れる様子には注目せず、鼻歌でも歌いながらご飯の準備を進めましょう。そしてご飯が食べられたら約束どおりアイスをあげましょう」と記載されていると思います。

我が家は娘が2歳頃からこの欲求不満耐性のトレーニングを試そうと頑張ってみた結果。。。キッチンの入り口に設置した「高い堅牢性・安全性」を謳うベビーサークルが破壊され、暴れた娘がものすごい勢いでキッチン全体を破壊しにかかり、ママは鼻歌を歌ってお料理どころか、母子2人の身体的安全を担保するには、夕飯のお支度を諦める他無いという状態でした(´;ω;`)

では、そのような状態から欲求不満耐性の課題と大きなエネルギーを同時に抱えつつ、5歳になった娘と2人の夕飯のお支度をどう乗り切るか。2歳と違って、5歳を好きなだけ暴れさせたら家が壊れる。(賃貸だよ( ´Д`))

しかしながら、この困っていた数年間に、年齢相応とはいかないまでも、脳の前頭前野部分も彼女なりに(当社比としては実に目覚しく)成長し、また、元々の強みである「言葉」の力、そして、「言葉」と「経験」を大人の力を借りながらつなげていく練習を積み重ねてきた成果を感じられています。療育の指導員の先生が対応のヒントとして下さったのは、「その日・その時の本人の状態を確認しながら、言葉で落ち着けるように交渉を重ねて、ハードルの高さを微調整していく」というものでした。

例)お夕飯前にアイスが欲しい!(調子まあまあの時編)

  1. まずは教科書通りのお野菜や果物、出来合いの1品など成長に好ましいものを提案(「そうだよね。お腹減ったんだよね。。。バナナはどう?」)→「イヤだ!絶対アイス!!( *`ω´)」

  2. 食事の一部として捉えられるものを提案(「パンはどう?、あ、嫌ならシリアルもあるよ」)→「イヤだ!アイス!!( *`ω´)」

  3. おやつ感の少ないものを提案(「おせんべいなら一枚あげられるよ」)→「イヤだ!( *`ω´)」

  4. この辺りで割と落ち着いていたら、理由を説明。(「ママはあなたに健康でいてほしい。先にアイスをたべるとごはんがたべられず、不健康。ごはんのあとならアイスあげられるよ。」)→「わかってる。。。でもきょうはどうしてもアイスがまんできないの( ; ; )ちょっとだけでもいいから( ; ; )」

  5. アイスを少しだけ食べることを提案(「そっかぁ。。じゃあ、少しだけさきに食べて、ご飯もしっかり食べるのはどう?」)→「わかった。。。でもきょうはちょっとだけおおめにしてほしいな♪(´∀`*)♪」

  6. やれやれ ʅ(◞‿◟)ʃ

もちろん、正解は無く、調子(母子共に)の良し悪しによって、どこまで、どんな風に交渉を重ねるか、合意に至れるかどうかは、その場、その場の判断しかありません。そして、体調や食事の内容、時間、活動内容、睡眠の質など、その場での事だけでなく、総合的に整えていくアプローチが大前提。

真面目にやりすぎると、とても疲れるので、交渉の成果を目的にせず、できるだけ力を抜いて、「今日の調子はどんなところかな? どれどれ、今・ここの調子を見てみよう」という気持ちで対応しています。

娘の調子が良ければ自分から「がまんしよっかな?」とドヤ顔の宣言とともに、交渉の必要自体が無くなることもあれば、本来はハードル調整が必要な場面で私が疲れて匙を投げてしまい、受け入れない方が良い要求を受け入れてしまうこともあります。

間違い無く、親側の精神的な余裕と粘り強さが要求される。。。(;´д`)

実は新卒の頃から社会人5年目位までは適性と異なる営業職で、苦しんだあきこさん。自他共に認める交渉下手。。。何の因果か、おばさんになってから、こんなにも交渉の修行を積み重ねることになるとは(。・ω・。)


ちょっと例が良くなかった気もしますが、何が言いたかったかというと、「スモールステップ」は、理論上は低いハードルから順番に超えていけるように支援をすることではありますが、現実は、綺麗な階段なんて存在せず、行きつ・戻りつしながらその時々の最適解を探していくしか無いよね、ということです。そして日々微調整を繰り返しながらも、専門家の力を借りながら半年、一年という、「引き」で見た際の目標をスモールステップで設定していく、果てしない作業。贅沢を言えば、できるだけ、「成長を楽しみに、面白がりながら」やりたい。

そして、日々の様々な場面で、この調整と交渉を重ねて行くのは、ものすごく大変。サボったり休んだりしながら、子供と一緒に成長していくしかないな、と思っています。

またね(・ω・)ノ

(余談)


今振り返ると、娘が2歳当時の自宅での頻発する激しい癇癪は、ASDの特徴だけでなく、保育園での長時間保育自体が娘にとって負荷が大きすぎたことにも要因があったと理解できます。しかしながら、あきこさんの夫は年の半分程度を途上国で過ごす「出稼ぎ人」のため、もし、娘と言葉で繋がることができる前に就労を諦めて、24時間自宅の狭いアパートで母子2人の生活をしていたら。。。虐待リスクが高すぎた。。。4歳まででも、私が就労することで保育園の力を借りられていたお陰さまさまで、仕事後のお迎えの度に、娘のことを「可愛い(*´꒳`*)!」と思いながら育てることができて本当によかった、というところが本音です。

また、2歳台でこんなにも困っていたなら、もっと早く支援と繋がればよかったのに。。。と自分自身にツッコミを入れたくもなりますが、友人や保育園の同級お母さん達に相談しても、当時は皆「イヤイヤ期」真っ盛りで、「うちもだよ〜!」と言われるばかり。皆んなも我慢してるんだから、私も我慢しなきゃ、と思っていました。そして、娘の場合には、言葉の発達が早かったため、○歳時検診も全て「異常なし」、保育園の先生に相談しても「こんなになんでもできるから大丈夫!」と励ましていただくばかりで、本格的に困りすぎるまで、適切な対応が中々できなかったのでした。






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