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育休中リスキリング(Reskilling)についての発信メモ

2023年1月は、これまでになく「育休」や「リスキリング」という単語をインターネットで見た月でした。国会答弁で、「育休リスキリング」という単語が取り合げられたことが発端です。軽い炎上と言われる現象ではありましたが、結果的に育休中の学びにフォーカスがあたるということの効果は大きかったと思っています。また私が育休プチMBAを立ち上げた2014年には「リスキリング」という単語は無かったし、ましてや国会答弁で「育休中の学び」が扱われる日がくるとは想像できませんでした。社会は変化してるんだなあと思わされます。いいことだ!

直後に思ったこと(2023/1/31の書き込み)

モメている岸田さんの育休中リスキリング発言ですが、大事なのは次の世代の選択肢を増やすことだと思っています。私個人はそれこそ育休中リスキリングの機会を作った側だし、その教育市場形成に多少なりとも関与したという自負はあります。ただ、育休中リスキリングができるかどうかはその人の状況と意思次第です。それこそ近年は育休を活かして大学院に行きたいという相談も受けるようになりましたが、まずは育児のサポート環境をつくることをおすすめしています。

一方で、今回の議論で大事なのは、私ができたかどうか/できなかったかどうかではなく、「やりたいと思った人ができる環境をつくる」ことだと思っています。キャリア断絶が不安でこどもを持つことを躊躇っている人にとっては、育休中リスキリングは希望の光になるはず。

実際に海外の研究では、産育休の長期化が女性のキャリアアップにマイナス影響があるということは明らかになっています。そしてそのマイナス影響が起こるメカニズムが、本人の能力低下というより、周りからの見方が変わること、具体的には長い産育休をとる人=主体性(agency)が低い人だという印象を与えることだという研究があります。そして、その人が育休中に教育プログラムに参加したという情報を会社に伝えること(主体性があることの証明になる)が、周りからの低評価を回避する手段の1つであるという実証研究があったりします。

子どもを育てることと、養育者の心身に負担をかけないことが、何より大切なのは言うまでもありません。その上で育休中にリスキリングできるか、したいかは、個人個人の状況や意思により大きく異なりますから、人に強制されるものではなく、あくまで個人の選択であるべきと考えます。ただ育休中は孤独になりがちなので、同じ立場の人と出会い、育児や復職後の両立の悩みを共有できる場があることで精神的に楽になるという側面もあります。

また学びという観点では、育休中に限らず、学びたい時に学べば良いことです。一般的に危機意識や問題意識がある時は、学ぶ意欲が高まり効率的に学べるタイミングです。その意味で「以前と同じ働き方が難しくなる」「復職後にどうキャリアを築いていこうか」という問題意識がある育休中は学びに適した時期とも言えます。

だから、そうした教育プログラムを国が支援することは、女性が生涯にわたって活躍しやすい社会づくりや労働力不足への対策になると思いますので、岸田さんの発言は的を得ていると思っていますし、支持できます。

ただ一方で、8年前に育休中の教育プログラムを立ち上げたときから、情報発信にはものすごく気を遣ってきました。捉えられ方によっては炎上する可能性があるということを前提に、メディアに出るときは必ず原稿チェックをさせてもらったり、編集のプロにチェックしてもらったり、すごーく神経を遣って発信してきたので、これまでのところで大きな批判は受けてきていないんですよね。なので岸田さんにも、そういうブレーンがいたらよかったのかもしれないと思います。

その後の反響

長くお付き合いのある記者さんからインタビューを受け、土屋鞄グループのメディア「OTEMOTO」で記事が公開されています。丁寧に書いていただいたので、言いたかったことが非常にきれいにまとめられていて感謝!

「育休中のリスキリングは保育とセットで」 先駆者に聞いた、いま必要な両立支援とは(OTEMOTO / 2023.02.01)

この一件で私のことを思い出した、と慶應SFCでの元Student Assistantが連絡をくれて記事にしてくれました。こうして卒業生と仕事が出来るのはうれしい!!

首相答弁で注目の「育休中のリスキリング」 静岡県立大准教授が経験から語るポイント(中日新聞しずおかWeb 2023年3月9日 )

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