見出し画像

共同サウナ物語。

さわだえりさんの写真をお借りいたしました。ありがとうございます。

現在のアパートの地階には共同サウナがあります。地下と言っても半地下で、すりガラスの窓からは光がたっぷり入ってきます。このサウナは週一で、住民に開放されます。時間帯の前半が女性、後半は男性用。また、週一で一時間、アパート一戸ごとに貸し切りができます。

「大家さん、サウナを使いたいのですが使用料はいくらですか?」

「さあ?」

( ;∀;) 

というやりとりはあったものの、フィンランドでサウナのない生活は考えられません。そもそも、このアパートを選ぶ条件にサウナも入っていたのですから。アパートの下見の際には、共有設備もしっかりとチェックしました。

住む部屋にはお風呂はなくシャワーのみです。シャワー生活は、以前から普通のことになり慣れてしまってなんということもありません。というのも、夜、お風呂に入ると、逆に目がさえてしまったり、しめった髪に寝癖が付いて、朝シャワーやり直し、ということばかりだったからです。小さなシャワー室ですが、バリアフリーなのが気に入っています。

やっとサウナに入れる!と喜んでいたのに・・・なのにコロナ。夏になり、規則がゆるみ、ようやくサウナに入れた時には本当に本当にほっとしました。

共同のときには、見知らぬ住民と一緒になる可能性があります。私は眼鏡なしではよく見えないので、誰なのかわからず、親交を深めるには至っていません。

フィンランドアパートの鍵は、一本なのにさまざまなドアとの共同キー。この「どこでもキー」で、アパートのドアも、サウナのドアも開けられます。地下の廊下からサウナ室のドアをあけると、ベンチとテーブル、トイレもある簡単な着替え室があります。テーブルに小さなノートがおいてあり、利用者は棒で書き込みます。まずこの部屋に3、4人もいたら、いっぱいになりそうです。次のドアを開けたらひろーいシャワー室。ただし二人分。掃除の後は、シャワーの位置がとても高いところに設定されるのが難です。そういえば、アパートのシャワーはなかなか優秀で、さっとお湯が出て、水の勢いもよいため、ありがたさに涙が出るほどです。こんなところで、自分がほっとすることがわかると、無意識に生きる中で何が自分にとって大事なのかがわかるんだなあ、と思います。

共同サウナがあるだけでも素晴らしいのですが、なんとなく、私はひとりになり切りたいので、週一、一時間を貸し切りにしています。私にとってのサウナは、まず、心静かにひとりでのんびりするところのようです。自分のアパート+サウナで「アパートより広い面積が使える!」と思える奇妙な心の余裕も生まれます。こういう空間もすきです。

サウナは、予定の時間よりおそらく30分も前には充分に暖まっているようです。サウナ室内の温度計は「80度、湿度40%」を示しています。たいてい私が最初に使うので、まず、サウナ用のバケツに水を入れ、シャワーをあびてサウナ室へ。ここには、2段になったベンチと、「サウナのもと・熱源」こと、黒い石がつまった箱型のサウナ炉があります。熱くなっている石にばっしゃーんと水をかけると、蒸気が上がります。2度3度とかけただけで、けっこう熱い水蒸気となってしまうので、顔と、口に両手をあてて、しばらくは蒸気の直接攻撃をふせぎ、熱さをしのぎます。あづい、と口に出すそばから、口をあけると口の中が熱くなるので口もふさぎます。ばっしゃーん、ぶわー、むわー、を、何回か繰り返します。

ホテルサウナには使い捨てのペーパータオルが用意されていますが、私はサウナ用のミーの柄のタオルをおしりの下に敷いて座ります。このサウナ用タオルは「住んだら使おう」と思って購入し、すでに何年もたっていたもの。一人のときは、大きいバスタオルをベンチに広げてその上に横になります。座っていると、頭の方は熱くしかし足もとは涼しめ、と、温度差があるのですが、横になっていれば全身同じ温度です。しかし、なぜか汗が出ず、ただただ、皮膚が乾燥し熱くなっていくのみ。このままでは干からびるだけだ、と思ったら、再びシャワーを浴び、水を飲み、サウナへ戻ります。この汗の出ない傾向は何年も前からずっと続いています。3回くらいシャワーとサウナを往復すると汗が出始めます。日本の岩盤浴なら汗がけっこう出るのに、サウナは意外と乾燥しているのかもしれません。せめて60パーセントの湿気があったなら汗は出るはずなのです。

汗が出ても出なくても、30分もすると疲れてくるので、サウナから出ます。部屋へ戻った後に、じわじわと汗が出始めます。ホテルサウナでもそういうことが多く、部屋にはいってからが勝負です。特に「冷やさないように」することが。

ホテルでもサウナへ通います。ホテルサウナは、特に都市部では温度設定が低めなような気がします。外国人観光客のためかもしれません。あるいは、使い方をよく知らずに入り、ぬるいサウナのままなのかもしれません。空港近くにもホテルがたくさんあり、その中のあるサウナは、無茶苦茶広くて無茶苦茶熱く、文字通りの熱い会議ができそうです。

私にとっての最高のホテルサウナは隣にプールがあるタイプ。私は長いこと泳がず、水着ももっていないくらいでしたから、久しぶりに泳いだ時はどきどきでした。最初は水温が低く感じられるため、慎重に水に入り、冷え冷えになって、またサウナへ戻ってあつあつになって、と、その繰り返しです。ホテルに泊まる家族連れの子供が「くーまあああ!!」Kuumaa!! 熱い!とか、小さな子がサウナの下が開いているドアに近づいただけで「りーあん くーまーー」Liian kuumaa 「熱すぎ!」と言っているのをほほえましく眺めます。思春期の若い娘さんたちもあついさむいと言いつつ、プールとサウナを行き来しています。人が入ってくると、途端におしゃべりをやめるフィンランド人の若者も多いです。まさかイエスが海を切り開いて渡ったかのように、私が入ってきたから黙った、というのではないといいのですが。そして、しばらくするとおしゃべりをしたい気持ちは抑えられず、非常に小さな声で話を続けます。

本来、サウナは「静かに過ごす場所」ということを聞いたことがあります。サウナとは、生まれ出で、最期を迎える場所であったのだそうです。しかし逆に、ホテルごとフィンランド人の団体の完全貸し切り状態でサウナも大騒ぎだったこともあります。10歳前後の男子たちでは、仕方ない・・・でも夜遅くまで騒いでいたので、「寝たいんだけど何時までここでおしゃべりしてるの?」つまり、私の部屋から遠ざかってくれませんか、と、この時だけは談判しました。もう一つにぎやかなのは、サウナにフィンランド人が全く居合時です。無理やり詰め込んだような人数の大きな声のおしゃべりが響き渡り「ここはどこ?」レベルの別世界へ運ばれたことがあります。私も同じノリでロシアのおばちゃんとおしゃべりをしたことがあります。フィンランド人に声をかけるのは遠慮しているので、こんな感じでも、見知らぬ者同士の裸のつきあい、と言えますでしょうか。

住んでいるところにも共同サウナができたと聞いています。有名なのはヘルシンキやタンペレの様子。タンペレの友人の家の近くにあったのが、もしかしたら、例のサウナかもしれませんから、一度機会を作って「通いたい」と思います。

アパートを探していた時に「プールのある物件がある!見てみて!」と友人が教えてくれましたが、見学する前に借り手が決まったとのことでした。値段が特別高いわけでもなかったので、貴重ではないかと思います。「サウナの後は水のシャワーがいいよ」と言われます。また、関節リウマチの話をすると「冬に氷に穴をあけてつかるのが体にいいんだよね」と多くのフィンランド人達に、ことあるごとにささやかれます。「私は未経験だけど」とも言われます。氷の穴の隣にサウナハウスがあったらやってみたい気持ちはあります。去年からの冬は暖冬で、氷の上を歩くことすらかないませんでした。その後、コロナの影響でこの氷プールが開かれたかどうかもわかりません。次の冬にこそ挑戦してみたいものです。

今はとにかく、アパートのサウナのささやかなひとときが楽しみです。でも、いやいや、それよりサウナ付きの部屋を手に入れるのがもっとたくさん入れるんじゃない?いや、いっそ、サウナつき一戸建てとか、豪邸とか、サウナ付きセカンドハウスとか・・・・・・・・じゃあサウナの前に、予算を組まないと。と妄想する時間も、また楽しい。まあ、サウナの後のビールを飲む習慣がないので、ビール飲んだつもりで貯金しようかな?


追伸1。共同でもホテルでも、私は裸でサウナへ通います。

追伸2。なぜ入るとか、行く、といわずに「通う」のかというと、トイレやサウナとは行って戻ってくるところだからだそうです。またフィンランド語のことも書きたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?